Android ケータイ 特集・連載

【夏野 剛のモバイル業界への提言-第1回-】

夏モデル発売から見えてきたスマートフォンの課題(2011年8月掲載)

文●小林 誠

2011年08月15日 08時00分

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Androidの普及に伴い
浮かび上がる課題とは?

 前回は日本ならではのケータイの機能の重要性を説明したが、今回発表された夏モデルのラインナップはまさにその通りになった。キャリアもスマートフォンをどんどん売っているし、その普及が今後も進むのは確実だが、その一方で課題も浮かび上がってきている。

 まず、電池が持たない機種が多い。現状はケータイとの2台持ちや、バッテリー容量の大きいタブレットと組み合わせて解決するしかない。

 第二の課題が、良質なコンテンツの探しにくさ。特にAndroidのアプリは、配信されているアプリの品質や安全性が判別できない。健全なコンテンツをダウンロードできて、開発する側にもお金が還流するエコシステムを作ることが急務。各キャリアには、ぜひこうしたエコシステムの整備に力を注いでほしい。キャリアにはそのノウハウがあるし、これからのスマートフォン時代に果たせる役割は大きいと思う。

Androidとケータイの
思想の違いを伝えるべき


 そして、第三の課題がセキュリティ。セキュリティと聞くと、ウィルス対策を思い浮かべるかもしれないが、実はウィルスよりも注意したいのが、勝手に通信が行われて個人情報が流出すること。といってもユーザーが許諾しているから行われているのだが、AndroidのスマートフォンではGPSの位置情報や、電話帳の情報を使うアプリがかなりの数にのぼる。こうした情報を悪用する目的でアプリを配信する輩が、これから出てくる可能性は大いにある。これまでiモードに携わってきた経験からいうと、利用者が2000万人を超えたあたりが危ない。iモード端末に迷惑メールがどんどん送られてくるようになったのも、それくらいの人数まで普及した頃だった。

 ここで問題になるのは、スマートフォンをこれまでの電話機感覚で使っている人がたくさんいるということ。だが、Androidは電話機というより、その利用が「自己責任」な風潮が強いパソコンの発想に近い。iモードでは審査基準を厳しくすることで、個人情報へのアクセスを制限していた。これは電話機の発想で、端末はコンピュータの知識が無い人が使うという前提に立っている。一方、Androidはそれとはまったく逆の思想に立っている。いったん情報の提供を許諾すると、情報の保護をしているかどうかも、きちんとした責任者がいるのかもわからない開発元に、個人情報がどんどん送られることになりかねない。

 iモードではユーザー保護の観点から、位置情報といった個人情報提供の可否設定は、しつこいほど許諾のメッセージを表示していた。Androidのアプリにはそれが無いから、一見便利かもしれない。開発する側も新サービスを作りやすい面はあるだろう。しかし悪意を持った人がどんどん悪い方向に使う可能性もある。ただ、自由度を取るか、安心・安全を取るか、これは二律背反なのでどちらが良い、悪いとはいえない。とはいってもキャリアは、ケータイと同じように端末を売りっ放しにするのではなく、こうした違いをきちんと利用者に伝えていくべきだ。

 最後に、第四の課題として「電波帯域の確保」がある。スマートフォンは従来よりも大量のパケット通信を行うが、そのぶん帯域が足りなくなるのだからバックボーンへの投資はしっかりやらないといけない。今後、テザリングやSkypeといったアプリケーションが広まっていくと、その傾向は一層加速する。だからこそ、先を見越した基地局の大増設が不可欠。スマートフォンを普及させ、ユーザーに不便を感じさせないためには、キャリアはその覚悟が必要となる。ネットワークにコストをかけずにスマートフォンをばんばん売るのは無責任だからね。

夏野 剛

夏野 剛(なつのたけし)
元NTTドコモ執行役員で「iモードの父」。慶應義塾大学大学院の政策・メディア研究科特別招聘教授をはじめ、ドワンゴの取締役などさまざまな分野で活躍中。

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