Android 特集・連載

【連載:スルッとわかる! 高速通信規格「LTE」-第3回-】

800MHz帯を使って75Mbps! “LTE品質No.1”を目指すauのLTE戦略とは?
《LTEインタビュー:au編》

文●石野純也

2012年11月23日 13時00分

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 iPhone 5と同時に、「au 4G LTE」をスタートさせたKDDI。これに続くAndroidの秋冬モデルでは、iPhoneの2GHz帯よりさらにエリアの広い800MHz帯1.5GHz帯を使い、サービスを一気に立ち上げた。年度末までには、実人口カバー率で96%を達成する見込みだ。ほかにも、基地局と端末に省電力技術を導入したり、エリアの補完を行う「ピコセル」を設置したりと、KDDIはLTEの推進に積極的だ。

 こうした同社のネットワーク戦略を、KDDI 技術企画本部 モバイル技術企画部 通信品質グループリーダー 木下雅臣氏に聞いた。


auのLTEサービス「au 4G LTE」について
通信品質グループリーダーに聞いてみた!


――現在、iPhoneが2GHz、Androidが800MHzと1.5GHzでLTEをサービスインしています。それぞれの違いを、改めて教えてください。

 auのLTEにかける思いは結構熱く、垂直立ち上げで
 全国の方々にスピードを享受してもらいたいです

KDDI株式会社
技術企画本部
モバイル技術企画部
通信品質グループリーダー
課長

木下雅臣

 

 

木下氏:基本的に、800MHzは、CDMA(KDDIの3G)でエリアが構築されていたというのがメリットです。広く使っていただけるのが、800MHz帯の利点ですね。1.5GHz帯はこれからエリアを整備していきます。800MHz帯と同じ基地局を利用しますが、容量補完という意味合いが強く、トラフィックの高い都市部が中心になります。

 一方で、2GHzもCDMAでエリアは構築してきましたが、800MHz帯に比べるとまだ狭いというのが現状です。メインバンド(基盤となる周波数帯)は800MHz帯ですが、2GHz帯も国際的には主流になるので、同じように広げていくつもりです。こちらも、将来的には800MHz帯に近い形に持っていきたいとは考えています。

――iPhoneとAndroidで、意識的に周波数をすみ分けているのでしょうか。

木下氏:いえ。それは違います。端末ごとに周波数が違うと、1つの周波数帯の込み具合が端末の販売台数に左右されてしまいます。逆に1つの端末がいろいろな周波数に対応していれば、ネットワーク側でコントロールすることができます。トラフィックが高い時は トラフイックの少ない周波数帯に、キャリア側で制御が可能になり 、効率的な運用ができるわけです。 決められた周波数しか使えないというのは、あまり好ましい状況で はありません。

――800MHz帯、1.5GHz帯のLTEは、すべて10MHz幅、75Mbpsですね。

木下氏:はい。800MHz帯には37.5Mbpsのエリアはありません。なぜそれができたかというと、新800MHz帯をいただいているからで、そこは周波数的にまだ空きがあります。というより、LTEをサービスするためにずっと空けていたという方が正確ですね。

垂直立ち上げでLTEエリアを一気に拡大! auのLTE戦略を聞いてきました

auに割り当てられている周波数帯は、700MHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯の4バンド。

――年度末の実人口カバー率が96%というのも、驚きました。

木下氏:実人口カバー率が96%になれば、割と今の3Gと同じぐらいの感覚でつながるようになると思います。LTEにかける思いは結構熱く、垂直立ち上げで全国の方々にスピードを享受してもらいたいですからね。エリアも頑張って作ってきました。

――ただ、実人口カバー率という表記だと、他社とエリアを比較できないのが難点です。

木下氏:従来の人口カバー率は、役場があるところに基地局を作れば、そこはすべてエリアとして扱っていました。ただ、それが本当にいいことなのか。私たちはお客さんが、本当に住んでいるところをサービスエリアにしなければなりません。実人口カバー率は国勢調査のデータを基に、日本を500メートルのメッシュに区切って人口を算出してます。どちらの指標も一長一短ですが、最後はお客様が日頃使うエリアを比較して判断して頂く事になります。

――2GHz帯のLTE単独では、マップの形でエリアを見ることができません。

木下氏:市町村単位でエリア化された場所は公開しています。人間の生活導線は、よほどのことがなければあまり変わらない。すごく遠くに行くよりも、住んでいるところと勤務地、そこをつなぐ場所で携帯をお使い頂く事が多いと思いますので、今のサイトで確認する事が可能と思います。


auのLTEは電池の持ちが良いって本当ですか?


――発表会では、電池の持ちがよくなる技術を導入したことも強調されていました。この仕組みを教えてください。

木下氏:電池の持ちがよくなる理由は、主に2つあります。ひとつが、アイドル時(待機時)の持ちをよくしたことです。LTEの端末は、3Gで待ち受けていると常にLTEの電波をサーチしにいくのが一般的な挙動です。これに対してauは、3Gのネットワーク側に、このエリアはLTEがある・ないという情報を流しています。具体的に言うと、3Gの制御チャネルでその情報を受けることができます。LTEがある時だけ、サーチをしに行くようにしてして、スキャンの時間を短縮しているわけです。

 もうひとつが、LTEをすぐに止める仕組みです。通常だと、通信が終わってもLTEの電波が数秒出ています。これを、より短い時間で止めるようにしました。LTEは元々遅延が少ないので、電波を止めた状態から改めてつないでも、すぐに接続できます。省電力化は、主にこの2つで実現しています。

――LTEの電力消費量自体は、どうでしょうか。

木下氏:3Gと大幅には変わらないという認識です。送受信するデータ量が変わらなければ、一緒です。ただ、一般的に言って、電波が弱いとどうしても電力を使ってしまうので、そのようなイメージを持たれているかもしれません。基地局が近くにあり、ノイズが少なければ、消費電力も少なくなります。

――LTEから3Gへのハンドオーバーを短くする、「Optimized Handover」という技術も導入されましたね。

木下氏:はい。LTEから3Gに移るとき、本来ならネットワークが完全に変わるので、3Gの制御チャネルを見てセッションを張る作業が必要になります。ただ、これをやっていると、切り替えが4~5秒は遅くなってしまいます。一方の「Optimized Handover」は、LTE側でコアを通し3Gのセッションを張った状態で、そのまま周波数だけを移行する方式です。先に3Gのセッションを張っているので、すぐにデータ通信を行うことができるというわけです。

Optimized Handoverの仕組み

垂直立ち上げでLTEエリアを一気に拡大! auのLTE戦略を聞いてきました

「Optimized Handover」では、LTEエリアにいるうちに3Gへの接続要求を行っておくことで、シームレスな接続を実現する。これにより1秒以内での素早い接続切り替えが可能になる。

――LTEと3Gをすぐに切り替えるという意味では、米国・Verizonが両方で同時に待ち受けを行う仕組みを導入しています。これについてはいかがでしょうか。

木下氏:接続が早く「CSフォールバック」や「Optimized Handover」も不要なので、ネットワークに難しい技術は必要ありません。一方で、同時待ち受けは、やはり電池の持ちが悪くなってしまいます。対応機種が少ないのもそれが要因と考えます。電池持ちについては、お客様も敏感になっているところだと思います。なので、ここを改善したいというのは、当初から考えていたことです。

――「ピコセル」と呼ばれる小型基地局も導入していますが、こちらの詳細を教えてください。

木下氏:エリアを構築していくと、どうしてもデットスポットが出てきます。そこを、小型のピコセルを置いてカバーしていきます。 また、将来的には、トラフィックが集中するところにも使用していく計画があります。ピコセルは、100メートルぐらいをカバーできる基地局で、大きさも50×25センチぐらいなので、電柱にも設置できねのがメリットですね。

――Wi-Fiの代わりに、このピコセルだけでエリアはつくれるのでしょうか?

木下氏:難しいのはカバー範囲が100メートルで、Wi-Fiよりはエリアは広いですが、これだけだとサービスは不可能です。ハンドオバーの設定も難しいですし、出力が弱いので、何百人がつながるようなものでもありません。ただ、屋内や一時的に電波の弱いところの対策には使えます。

「CSフォールバック」の仕組み

高速通信規格LTEの基礎知識

上位のネットワークから下位のネットワークに回線を切り替えて通信を途切れることなく継続する技術を「フォールバック」と呼ぶ。LTEはデータ通信専用の回線なので、LTEで待ち受けをしていても、音声着信時には3G回線に切り替えるという動作(ハンドオーバー)をして、「フォールバック」する必要がある。「CS(Circuit Switched)フォールバック」は、LTEから3Gへの切り替えを素早く行なうための技術のことで、LTEにおける標準仕様となっている

――来年度には112.5Mbpsのサービスも始めますが、これはどの周波数帯になるのでしょうか。

木下氏:112.5Mbpsは2GHz帯ですね。

――ちなみに、VoLTEについてはいかがでしょうか。

木下氏:VoLTEの標準化も進んでいますし、当社としても検討している段階です。お客様にメリットがないと導入は難しいですから、今の音声品質をきちんと網羅できているのかを、きちんと見ていきます。


※編集部注釈 「VoLTE」(Voice over LTE)は、LTE上での音声通話を実現する技術。「VoLTE」が導入されると、LTEデータ通信中に着信があっても3G回線にフォールバックする必要がなく、そのままLTE回線で受話できるようになる。


 今回はauのLTE戦略と展望について、担当課長にお話しを伺った。

 次回は、アンドロイド端末向けにAXGPを用いた4Gサービスを開始した、ソフトバンクのインタビューをお届けしたい。


au LTEまとめ

周波数帯域 帯域幅 下り最大速度
2GHz帯
(iPhone 5向け)
10MHz幅 75Mbps
1.5GHz帯
(Android スマートフォン向け)
15MHz幅 112.5Mbps
800MHz帯
(Android スマートフォン向け)
10MHz幅 75Mbps
700MHz帯 10MHz幅 2015年1月開始予定








 

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