Android iPhone ケータイ 特集・連載

【夏野 剛のモバイル業界への提言-第9回-】

INFOBAR A02がもし5年前に発売されていたら?(2013年4月掲載)

文●小林 誠

2013年04月12日 20時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

グーグルやアップルに主導権を
奪われた日本のキャリア&メーカー

INFOBAR A02がもし5年前に発売されていたら?(2013年4月掲載)

 INFOBAR A02が発売された。フィーチャーフォンとスマートフォンを融合した、とてもすばらしいスマートフォンに仕上がっている。なぜ私が今回INFOBAR、それもINFOBAR A01やC01ではなく、A02を取り上げるのか。それはINFOBAR A02こそ5年前に日本のキャリアやメーカーが投入すべきAndroidスマートフォンだったからだ。

 今回はINFOBAR A02から見えてくる5年前に逸したチャンスの話をしよう。この連載の読者ならグーグルが日本のフィーチャーフォンのマーケットを徹底的に調べたうえで、スマートフォンを投入したことはご存知だと思うが、改めてお話したい。

 かつてグーグルは、技術はあっても、モバイルの分野でどんなサービスがウケて、またユーザーがインターネットに接続してどんな行動をとるのか、把握できていなかった。そこでモバイル先進国の日本市場を調査し、仮説を立ててスマートフォンを投入した。

 それが2008年のこと。5年前だ。日本にAndroidスマートフォンが初めて投入されたのは2009年。しかし、キャリアのサービスが揃うのはまたさらに後になる。2009年の時点ではドコモのdマーケットやauのスマートパスといった仕組みもできていない。この遅れの原因は、フィーチャーフォンに対峙するものとして、スマートフォンを捉えていたからだ。

 私が考えていたのはフィーチャーフォンとスマートフォンの融合。フィーチャーフォンにスマートフォンのOSを取り入れて、タッチパネルの技術を使う、フィーチャーフォンのいいところを全部Androidベースで開発するというもの。日本のユーザーニーズにあったUIと機能をスマートフォンに付加すれば、新しい価値のあるスマートフォン市場ができたはず。INFOBARのようなスマートフォンはもっと早くに投入できたし、やれる実力もあった。

 しかし、フィーチャーフォンとの融合という意識が希薄だったこともあり、最初に登場したAndroidスマートフォンは、タッチパネルの操作といった進化した部分もあったが、機能的には退化したものとなった。結果、スマートフォンのUI分野では、日本のキャリアやメーカーが主導権を握れなくなってしまった。

INFOBAR A02がもし5年前に発売されていたら?

▲約4.7インチHDディスプレイを搭載したINFOBAR A02。UIだけでなく、クアッドコア、2,100mAhの大容量バッテリーや高速充電など、使い勝手も向上。

 もしINFOBAR A02のような機種を早い段階で提供できていたら、まったく違うスマートフォン市場が形成されていただろう。新しいテクノロジーを入れながら、フィーチャーフォン時代のコンテンツのエコシステムや使いやすいメール機能を取り入れた、進化した市場になっていたはずだ。

「端末とサービスを一体化」すれば、新しい価値を付けられる、と日本のフィーチャーフォンは証明した。そのアドバンテージが日本にはあった。ところが、それをスマートフォン時代に行ったのはグーグルやアップルであり、日本のキャリアではなかった。先駆者は世界の“普通の”キャリアに成り下がってしまったのだ。

 遅過ぎたが4年かけてフィーチャーフォンのいいところを少しずつ取り込み、ようやくINFOBAR A02が登場した。しかしこうしたUIを搭載したスマートフォンは5年前に作れたはず。日本のエンジニアや市場をわかっていたメーカーやキャリアなら、最初からできることがたくさんあったはずだ。それを象徴しているのが、このINFOBARなのだと思う。

INFOBAR A02のUI
自分好みのレイアウトに変更できるUI

 文中で触れたINFOBAR A02が実現したUIを紹介しよう。「iida UI」と呼ばれるINFOBARのUIはホーム画面とアプリメニュー(トレイ)の画面がひとつに融合し、ウィジェットやアプリのアイコンがタイル状に並んでいるのが特徴だ。これだけなら従来のINFOBARシリーズでも採用されていたが、A02では「iida UI 2.0」が採用され、とてもユニークなアニメーションと、心地よいサウンドが施されている。プロダクトデザイナー・深澤直人氏、インターフェースデザイナー・中村勇吾氏、サウンドデザインにミュージシャンの小山田圭吾氏が携わり、実現した。

 

▲一見するとタイルが敷き詰められたホーム画面。アプリとウィジェットが配置されており、縦スクロールになっている【写真左】。ホーム画面の右側にはウィジェットホームがあり、フリックで表示が可能。こちらにはiida以外のウィジェットを表示させることができる【写真右】。

 

INFOBAR A02の画面に触れると、このようにぬるーん、あるいはビヨーンといった擬音をつけたくなる、不思議なアニメーションでスクロールする【写真左】。アイコンを長押しすれば、移動も自由自在。その際もアイコンが伸びたり、縮んだり、さらにアイコン同士がぶつかると、カチンとかチリンなどさまざまな透明感のある音で楽しませてくれる【写真右】。

 

▲INFOBAR A02の左側面にあるファンクションキーを押すと、「List View」と呼ばれる、ホーム画面とは別のメニューが表示される。ここからアプリや機能を選択してもいい【写真左】。List Viewにはタイルが表示されていないが、アニメーションや音は工夫されていて、iida UIらしさをここでも感じられる【写真右】。

 

夏野 剛(なつのたけし)
元NTTドコモ執行役員で「iモードの父」。慶應義塾大学大学院の政策・メディア研究科客員教授をはじめ、ドワンゴの取締役などさまざまな分野で活躍中。夏野氏のメルマガサービス「週刊『夏野総研』」(月額525円)がスタートした。ニュースキュレーション、既存ビジネスの解説や読者からの質疑応答コーナーなど、内容は充実。詳しくは、以下のサイトをチェック!
http://ch.nicovideo.jp/blog/natsuno

 

mobileASCII.jp TOPページへ