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【2013夏スマホ特集 国産スマホメーカーに訊く!-第1回-】

国産ハイスペックスマホの代名詞「ARROWS」シリーズの開発秘話とは!? 富士通インタビュー[前編]

文●mobileASCII編集部

2013年06月07日 19時30分

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 国産スマートフォンを製造しているメーカーに、2013年夏モデルの訴求ポイントを聞くと同時に、これまでのスマートフォン開発の歴史を振り返ってもらうインタビュー特集。

  第1回目は、国産ハイスペック・スマホの代名詞、ARROWSシリーズを展開している富士通の商品企画・プロモーション担当者に話を伺ってきた。


「ARROWS NX」に採用するCPUを
「Tegra3」から「Snapdragon」に変更した
富士通の未来戦略とは?


富士通インタビュー・前編

 


富士通株式会社
ユビキタスビジネス戦略本部長代理
商品企画・プロモーション担当


松村 孝宏

 

編集部 : 夏モデルである「ARROWS NX」のお話を聞く前に、これまでの「ARROWS」の歴史について振り返っていきたいと思います。
 まず、今回の「ARROWS NX」では、CPUがNVIDIA社の「Tegra3」から、Qualcomm社の「Snapdragon」に変更になり、編集部では驚いたのですが、CPUを採用する際の方針などからお聞かせください。

松村孝宏氏 : 富士通では、採用するCPUを決定するときには、その時点で最も最良なものを選ぶというのが基本方針となっています。我々が最初に出した「F-12C」のCPUはQualcomm社の「Snapdragon」でしたし、最初のLTE対応スマートフォン「ARROWS X LTE F-05」では、CPUにTexas Instruments社の「OMAP」を使っていました。「ARROWS X LTE F-05」の時は、ドコモのLTEに対応したスマートフォンを開発するというプロジェクトの中で、LTEに対応したモデムと組み合わせられる最適なチップセットは何なのか? ということで、「OMAP4430」(1.2GHz・デュアルコア)を採用することに決めたという経緯があります。

富士通インタビュー・前編 富士通インタビュー・前編

▲富士通として初のAndroidスマートフォン「F-12C」(左写真)/国産スマートフォンの中で最初にLTEに対応したモデルとなった「ARROWS X LTE F-05」(右写真)

編集部 : そのときに組み合わせたLTEモデムは、ドコモと富士通、NEC、パナソニック、サムスンが共同開発した、「SAKURA」チップでした。

松村氏 : はい。その通りです。よくご存じで。「ARROWS X LTE F-05」の開発時点で、日本のLTE周波数に対応したモデムは、「SAKURA」チップしか存在しなかったんです。

編集部 : そして、次に発売した2代目ARROWS Xである「F-10D」は、2012年夏モデルでは唯一クアッドコアCPUを採用していて、相当注目されましたよね。

松村氏 : 「ARROWS X F-10D」を開発するにあたってお客様の生の声を集めてみると、圧倒的にハイパフォーマンスなスマートフォンを求める人が多かったんです。社内のマーケティング担当者からも「2012年は、クアッドコアCPU搭載のスマートフォンが主流になるはず!」いう情報が増えてきたんです。それで「じゃあ、どうするのか?」となったとき、クアッドコアCPUを出していたのがNVIDIA社だけだったんですね。それが2代目ARROWS Xである「F-10D」に「Tegra3」を採用した理由です。実際、4つのCPUコアに加え、省電力のコンパニオンコアと12個のグラフィックコアを搭載した「Tegra3」のパフォーマンスは飛び抜けていました。

富士通インタビュー・前編

NVIDIA社の「Tegra3」を採用し、国産スマートフォン初のクアッドコアCPU搭載機として発売された「ARROWS X F-10D」

編集部 : しかしながら、「F-10D」は、そのハイパフォーマンスぶりと引き替えに、バッテリー消費が早いという指摘が多くあったようですが。

松村氏 : パソコンやサーバーの世界では、マルチコアプロセッサーというのは当たり前な世界なんですが、それをモバイル機器に搭載してどこまで適応できるかということは、我々としてもチャレンジという部分もありました。確かに「F-10D」はバッテリー消費が激しい」という、お客様からのお叱りはいっぱい受けました。ですので、通常のプロダクト開発チームとは別に、「Tegra3」や「OMAP」搭載機のサポートチームを組織しました。具体的には不具合を改善するためのアップデートプログラムの開発ですね。まだまだお客様が満足するレベルに達していないことは承知していますが、少しでも使いやすくするためのサポートは続けていきます。

編集部 : そのようにユーザーからの不満が多かったというお話を伺うと、「ARROWS NX」がQualcomm社の「Snapdragon」に変更した理由は、「Tegra3」に見切りをつけたから、ということなのかと邪推してしまうのですが…?

松村氏 : いいえ。そういうことではありません。2013年のARROWSが、どんなメッセージを発信していくのかを考えたときに、どのプラットフォーム(チップセット)を採用するのかという検討は白紙から行っています。せっかくデータを積み上げた「Tegra3」を採用し続けて行こうと頑なな態度を取ることも、逆に「Tegra3」を最初から候補には入れないで行こうとか、そういったことはありませんでした。ベンチマークなどのデータを取ってみて、そのとき性能的に最良なプラットフォームを採用するといった流れです。

富士通インタビュー・前編

編集部 : そのプロセスを経て、夏モデルの「ARROWS NX」に採用されたのが、Qualcomm社の「Snapdragon 600」というわけなんですね。では、「Snapdragon 600」はどんなところが優れていたのでしょう?

松村氏 : それは、なんといっても“バランス”ですね。新しい「Snapdragon」は、性能と省電力性能、一緒に組み合わせるLTEモデムチップのバランスが、かなり良好だったのが決め手となりました。なので、「ARROWS NX」はCPUとLTEモデムチップがセットとなった「Qualcomm Fusion 3」というパッケージで行こうということになったんです。

富士通インタビュー・前編

▲スマートフォンの心臓部となるCPU。左が「ARROWS X F-10D」、「ARROWS X F-02E」に採用されていたNVIDIA社の「Tegra3」。右が2013年夏モデル「ARROWS NX F-06E」が採用することとなったQualcomm社の「Snapdragon」

編集部 : 2013春モデルのARROWS X F-02Eでは、「Tegra3」に「SAKURA」チップの実質上の後継となる「COSMOS」というLTE/3Gモデムチップが組み合わされていました。この「COSMOS」チップの製造は、富士通、NTTドコモ、NEC、富士通セミコンダクターの4社が出資して設立された「アクセスネットワークテクノロジー株式会社」が製造していますが、今回多額の出資をした会社のLTE/3Gモデムチップを採用しなかったというのはなぜなんでしょう?

松村氏 : 言い方は難しいんですけど、「私は『COSMOS』チップが載っているスマートフォンが欲しいんだ!」というお客様はいらっしゃいませんし、「Qualcommのモデム部分が好きなんだ!」というお客様もいらっしゃいません。お客様が選ばれるのは“スマートフォン一式”であって、その中でバランスが最良なものを組み合わせるのが第一義だと思っています。ですから、出資している会社の製品だからと特別扱いはしません。残念ながら現状の「COSMOS」チップの性能は、Qualcomm社のモデムを大きく凌駕するというほどではないと判断しました。それが「Qualcomm Fusion 3」というパッケージを採用した理由なんです。

編集部 : なるほど。そこでは、かなりドライな判断が下されたわけですね。

松村氏 : 「COSMOS」チップの開発はかなり大きな規模で行っていますので、今後大きな性能の向上があれば、当然搭載を検討するようになると思います。

富士通インタビュー・前編 富士通インタビュー・前編

「COSMOS」は、富士通、NTTドコモ、NEC、富士通セミコンダクターによる合弁会社「アクセスネットワークテクノロジー株式会社」が開発した通信チップ。LTEや3G電波のキャッチにも優れ、低消費電力が特徴だが、この夏モデル「ARROWS NX F-06E」への採用は見送られた

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