エリクソン本社に行ったら、携帯もスマホもタブレットも昔から作っていたことがわかった (1/2)

文●末岡洋子

2014年11月15日 12時00分

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 Ericssonは今でこそ(基地局側の)通信機器を主事業とするが、138年(創業は1876年、西南戦争の前年!)のその沿革は通信の歴史そのものだ。10月末にスウェーデン・ストックホルム郊外にあるEricssonの本社を訪問し、当時の革新技術の数々を見せてもらった。

「Mobiltelefonisystem A」と呼ばれる1956年登場の最初の携帯電話、重量は40kg!

ベルによる電話の発明と同時期に創業

 Ericssonの社名の元である創業者のLars Magnus Ericsson氏はテレグラフの修理で事業をスタート、その後みずから電話を作成するようになった。創業した1876年は米国でAlexander Graham Bell氏が電話を発明し、特許取得したのと同じ年だ。Bellはスウェーデンで特許申請していなかったため、事業が可能だったという。

Ericssonの本社に併設されたEricsson Studio。顧客やパートナー向けに最新技術を展示する場となっている

電話の発明は特許を申請したBellが先になるかもしれないが、レシーバーとスピーカーを一体化した電話という点ではEricssonが初めてという

こちらも初期のEricssonの電話機。1882年には壁に取り付ける電話機も発表した

1923年に開発された500回線スイッチ

このスイッチはスウェーデン郵便電信電話公社に納入した。タテに重ねて利用され、1930年頃には35万以上の回線を支えた。1970年代には480万回線分の公衆電話を支えていたという

世界的に大ヒットしたという1954年の”Cobra”こと「Ericofon」。ダイアルは受話器を持ち上げた下にある。通話機能だけでなく、インテリアとしての電話機が求められるようになったといえる。Ericssonの電話機は世界的に販売されていた

当時の宣伝。ダイアルと受話器を一体化したのは画期的だったようだ。ただし、この形状を最初に試みたのはSiemens。Siemensの失敗を受けてEricssonが着手したという

北欧諸国が中心にモバイル網を開発
GSMによって花が開く

 “持ち運び可能”という点で最初の携帯電話と言える端末は、冒頭の写真で紹介したように1956年に登場した。だが、重さ40kgで、スーツケースほどのサイズがあった。固定電話の普及期でもあり、携帯電話は認知されていないため需要がないうえ、重さ、価格、機能などの制限もあり普及にはほど遠かった。携帯電話が小型化に向けて改良を重ねるようになるのは1980年代後半まで待たなければならなかった。

1989年に登場した「HotLine Combi」

 だが、研究開発自体は世界レベルで進んでおり、Ericssonは1970年代にスウェーデン、フィンランドなど北欧諸国が中心となって開発を進めていたモバイル網「Nordic Mobile Telephone」(NMT)向けのターミナルとしてHotLineを開発した。北米では1973年、Motorolaが世界初の携帯電話を発表している。

 NMTはその後のGSMに大きな影響を与え、Ericsson、Nokiaら北欧ベンダーが仕様開発をリードするようになった。共通の仕様を持つことでどこでも使えるようにし、価格を下げることができる。1990年代、EricssonやNokiaはその仕様開発に早期から取り組むことで特許を得てネットワークと端末で国際展開を図り、急成長した。このビジネスモデルは、いまのEricssonの土台となっている。

 NMT開発を共同で行っていたサウジアラビアで1981年に最初のモバイルネットワークが実装され、EricssonのHotLineが納入された。

右は1992年に登場したHotlineブランドの携帯電話「NH 72」。NMT 900システム向けに開発されたが、その後GSM向けの最初の携帯電話となる(「GH 172」)。その後携帯電話は飛躍的に小型化、軽量化されていく

初のモバイルデータ用ターミナル。約1.2kbpsの通信が可能で、タクシーなどで利用された


(次ページでは、「最初にスマートフォンと呼ばれた携帯が登場」)

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