松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」

米国で広がっているモバイルバッテリーのシェア経済 (1/2)

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

2017年02月24日 12時00分

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自動車が移動の中心となるアメリカでは、日本のようにモバイルバッテリーはあまり普及していなかったのですが、ポケモンGOがその状況を変えました。そんななか普及が広がっているのがモバイルバッテリーのシェアサービスです

 米国に戻りました。まだまだ寒かった日本に比べると、バークレーは春真っ盛り。梅や桜系の花が咲き、気分も華やいできます。

 日本では桜の木は花見ができそうな公園の広場などにも植えられており、敷物とお弁当を持っていって花見を楽しむことができます。ただバークレー周辺では、桜系の花は街路樹になっていることが多く、どうしても木の下にござを敷いてという雰囲気ではありません。

 もちろん、花見の文化がない国のことですので、そうした楽しみ方ができるように考えられていないだけなのですが、毎年もどかしく感じているところです。

 筆者の住んでいるアパートの眼下に拡がる、真っ白なプラムの花を見ながらという楽しみ方が、一番しっくりくるかもしれません。このプラムの木、つまり梅で枝に直接花がつくため、桜とはちょっと違うのですが、夏場になるとおいしい実をつけてくれます。

 さて、今回はタイトルオチみたいな話です。

モバイルバッテリーのシェアのアイディア

 本連載ではたびたび登場する、筆者のバークレーでの仕事場、コワーキングスペースのWeWork。最近では、近所にあるUCバークレーの学生が起業するときの拠点として使う動きも見られます。

 建物にはアプリ開発者、人材系、デザイナー、弁護士、会計士などが入居しているため、もし起業しようと思っても足りないリソースを現地調達できます。実際に場所の提供だけでなく、メンバーネットワークを参照できるアプリが用意されています。ハード、ソフト両面でビジネスをサポートする体制が確立されているのです。

 またWeWorkは、仕事や働き方に関して、感度の高い人たちが集まっているというブランディングをしています。過ごしやすい環境、高速インターネット、過不足ないオフィス設備はもちろんのこと、アイディアや遊び心をくすぐるスペースなども用意されています。新しいテクノロジーやアイディアのショーケース、という位置づけが意識されています。

 こうした新しいアイディアの1つに、モバイルバッテリーのシェアがあります。

 「Doblet」はオンデマンド・バッテリーというタグラインがつけられたサービスです。WeWorkの受付にも用意してあり、自由に持ち出して充電することができます。

筆者が利用するコワーキングスペースにもこのようなモバイルバッテリーが置かれるようになりました。冒頭の写真からもわかるようにバッテリーは複数あるので、その時点で充電されているものを選べるわけです

 Dobletで充電する場合は、専用のアプリをインストールしてアカウント登録をしなければなりません。ただバッテリーとiPhoneを接続しても充電が始まらない仕組みになっています。単なるモバイルバッテリーより、若干面倒さはありますね。

 アプリやウェブサイトで調べてみると、サンフランシスコ周辺のカフェやバーなどでDobletが置かれているスペースを発見することができます。アプリを入れておけば、こうした場所で自由に充電することができるというわけです。

実際に充電を開始するにはスマホアプリから操作が必要です。サンフランシスコ周辺にはすでにかなりの場所に置かれているようです

モバイルバッテリーの最適化、的なアイディアも

 実はモバイルバッテリーは、米国ではさほどメジャーなアイテムではありません。クルマ移動が中心の米国においては、自宅とオフィスはクルマで行き帰りするので、充電可能なタイミングがたくさんあります。そのため必然性がなかったわけです。

 しかし、2016年にはその傾向にも変化が生じました。その要因がポケモンGOです。GPSとカメラを多用しながら遊ぶモバイルゲームは、それまでのゲームと比べてバッテリー消費が格段に増えます。そこで米国でもにわかにモバイルバッテリーへの注目が集まっています。

 しかし、10000mAh以上の製品が2000円程度で手に入る日本とは違い、米国ではまだまだ非常に割高といえます。もっと競争が激しくなると、バッテリーの価格も下がってくるのではないかと思うのですが。

 日本のようなにはモバイルバッテリーが個人の所有物として伸びていない現状において、Dobletのようなシェア型のモバイルバッテリーサービスは可能性があります。我々日本人が日々感じている、モバイルバッテリーに対する大きな不満を解消してくれるからです。

モバイルバッテリーにありがちな
長時間の充電時間を気にする必要がない

 Dobletの、モバイルバッテリーにおける問題解決は、自分で充電しなくてよい点です。

 10000mAh以上のバッテリーでは急速充電機能がなければ、夜が遅い場合、一晩かけても満タンになっていないことがあります。夜が遅いということは活動時間が長く、それだけバッテリーが必要だということになるのですが……人間の睡眠時間の方が短くて済むという不思議な体験になります。それも機械の方が人よりも効率的に動くという概念が強すぎるからでしょうか。

 対処法は、10000mAh以上のバッテリーを複数持つこと。1つ使い切っても、2つ目の満タンのバッテリーを持ち出して、もう1つは充電しておけばよいのです。

 とはいえ、スマホのバッテリーをモバイルバッテリーで管理している上、モバイルバッテリーの残量管理までしなければならないというのはどうにも面倒ですよね。バッテリー管理がしたいわけではなく、出先でスマホが使いたいというのが本当の目的なので。しかし、Dobletを利用し始めると、自前のモバイルバッテリーを管理しなくてよい、というメリットが快適です。

 Dobletはホルダーに複数個装着されていますが、ホルダーには充電機能がついているため、充電されている状態で使い始め、またホルダーに戻せば充電が開始されます。アプリからは、接続したモバイルバッテリーの残量もわかるため、少ないものを手にしてしまた場合は、隣のバッテリーを使えば良いわけです。

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