鉄板キーボードアプリ「flick」に“感情を読む”機能搭載!?【開発者インタビュー】

文●二瓶 朗 編集●ASCII.jp

2017年04月05日 11時00分

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累計1200万DL! 大人気キーボードアプリ「flick」を開発するIO Inc.のCEO兼エンジニア 石本光明氏と、同じくエンジニアの池上有希乃氏にインタビュー。最新機能ではなんとユーザーの「感情を読んで」最適な顔文字を候補に出すのだとか。いったいどんな仕掛けなのか、さっそく聞いてみた!

趣味(!?)の顔文字収集がきっかけだった
「みんなの顔文字キーボード」開発秘話

 AI変換機能が大きな評判を呼んでいる「flick(Android版iOS版」。前身の「みんなの顔文字キーボード」「みんなの顔文字辞典」で1000万を超えてダウンロードされたことからも、その機能の充実度は折り紙付きと判断してかまわないだろう。今回はそんな「flick」の開発を担当した、IO Inc.のCEO兼エンジニア・石本光明氏と、同じくエンジニアの池上有希乃氏に開発秘話をインタビューしてみた。なにやら「感情を読む」新機能も搭載するとか……。
編註:インタビュー後の3月24日に実装済み。

ベンチャー企業のCTOだったが、スカウトされてミクシィへ

── まず「flick」の前身である「みんなの顔文字キーボード」を開発するきっかけを教えてください。

IO Inc. CEO・エンジニアの石本光明氏

石本 かつてとあるベンチャー企業でCTOを務めていました。そこを辞めるか辞めないか、というタイミングでミクシィからスカウトされる形でエンジニアとして入社しました。2011年頃のことです。

── では、ミクシィで文字入力に関連した開発に着手した?

石本 いえ、それがですね……ミクシィでは新規事業を手がけていたのですが結局、陽の目を見ませんでした。その一方で、仕事とは関係なく個人でスマホ向けのアプリやミニツールを作っていたんです。そして、以前から趣味で顔文字やAAを収集してデータベースなんかも作ったりしていまして。その資産を活かすような形で、「みんなの顔文字辞典」を開発していました。

収集していた顔文字データベースを元にリリースした「みんなの顔文字辞典」。この時点ではあくまでも辞書なので、「目的の顔文字を見つけてコピー→メールなりSNSに戻ってペースト」という手順を踏む必要があった

── アプリのリリースをきっかけに独立したのでしょうか。

石本 「みんなの顔文字辞典」は無料ソフトで、広告が表示される形式だったのですが、その広告収入がそこそこ増えまして……。手応えを感じたこともあり、2012年にミクシィを辞めて本格的に取り組んでみることにしたんです。そのタイミングで開発を始めたのが「みんなの顔文字キーボード(現・flick)」です。

── なるほど。Android版から開発に着手された理由は?

石本 当時、iOSではサードパーティ製のキーボードアプリは使えませんでした。Android Open Source ProjectにはOpenWnnというオープンソースのキーボードがあり、それを応用する形で、顔文字も入力できる日本語キーボードを開発しようと。ところが、2013年4月頃に「Google日本語入力」のオープンソース版である「Mozc」のAndroid版のソースコードが公開されたため、結局OpenWnnがベースのものはリリースされることなく、Mozcがベースのものをリリースしました。

 顔文字のデータに関しては「みんなの顔文字辞典」のリソースがありましたから、1人で開発に着手して「みんなの顔文字キーボード」がリリースできたのは2013年5月ですね。

 ちなみにiOS版は、2014年にiOS 8がリリースされiOSでもサードパーティ製のキーボードが使えるようになったタイミングで開発し、2014年10月にリリースしました。ただMozcにはiOS版がないため、Android用のJavaで書かれたプログラムをiOSで動作するように、SwiftとObjective-Cですべて書き直してます。


「某男性アイドルも使っている」と評判になりブレイク

── 「みんなの顔文字」シリーズは2016年の時点で累計1200万ダウンロードを突破していますが、2013年のリリース直後から順調にヒットしていたのでしょうか?

石本 そうですね。「みんなの顔文字辞典」が100万ダウンロードを超えたぐらいだったので、コピペしてアプリを変えて……と面倒な操作を経なくても、シームレスに顔文字を入力できる日本語キーボードにニーズがあるのは確信していました。

 そうそう、あるときテレビの某情報番組で紹介されたんです。男性アイドルが「みんなの顔文字キーボード」を使っている、というような紹介の仕方でした。私自身はその番組を観ていなかったんです。特に紹介するという連絡もなかったので知りませんでした(笑) でもある日、急にダウンロード数が増え、なんだこりゃ? と思って調べてみたらそういうことだったという。

 「男性アイドル」という切り口が男女差のない人気に拍車をかけてくれたのかもしれませんが、その後はクチコミでユーザーが増え、みなさんに使っていただいているという感じです。

「みんなの顔文字キーボード」では、直接顔文字を入力できるようになり、一気に利便性が向上。また、キーボード背景のカスタマイズ機能も人気の一因に

── その頃に会社を立ち上げていますね?

石本 現在の会社、IO Inc.を立ち上げたのが2013年10月です。基本的に1人で開発していました。それでも2015年3月には、「みんなの顔文字辞典」「みんなの顔文字キーボード」の累計ダウンロード数が1000万ダウンロードを超えたというリリースを公開できました。

── 相当なハイペースですよね。では、『この勢いに乗って次の段階へ……!』となったとき、なぜ「flick」への命名変更とAI変換の実装を選択されたのでしょうか?

石本 「みんなの顔文字キーボード」は、顔文字やAAを入力できるという機能からみると、日本語キーボードとしてはある意味「キワモノ」だったと思うんです。そこで『あくまで日本語キーボードとして、広く一般に受け入れられるように、機能を充実していこう、日本語変換をさらに快適にしていこう』と考えました。

 自然言語処理を駆使して変換辞書も刷新し、さらにAI変換機能も追加していこうと思ったのですが、そこまで手が回らず。

── そこで白羽の矢が立てられたのが、池上さんということですね?

石本 そういうことなんです(笑)

自然言語処理のエキスパートが加わることで
「みんなの顔文字キーボード」改め「flick」は再誕した

── 池上さんとはどんな風に知り合ったのですか?

石本 もともと池上は、人工知能や自然言語処理の専門家で、GitHubやTwitterなどで情報発信をしていたんです。入力モードを切り替えずに日本語入力が可能な「モードレス日本語入力」というソフトを公開しているのを知り、『これは!』と思ってスカウトした次第です。2016年7月のことですね。

── 池上さんは、IO Inc.に入社する前は何をされていたんですか?

IO Inc. エンジニアの池上有希乃氏。大学院では人工知能と自然言語処理を研究

池上 ネット広告配信事業を手がける会社でソフトウェア開発をしていました。自然言語処理を使ってWebページに最適な広告を表示する仕組みなどを手がけました。

── 元々、自然言語処理を専門にしていたのでしょうか?

池上 大学院で日本語入力の研究をしていて、そのとき自然言語処理を学びました。もともと大学時代はネットワークを学んでいたんですが、研究室に入ってから勉強し直した感じですね。

── なぜ自然言語処理や日本語入力に興味をもたれたのですか?

池上 『Google検索ってスゴいなー』と思ったのがそもそものきっかけです。検索処理に自然言語処理を使っていると知り、どういうものかと調べているうちにのめり込んで行きました。

 そして、日本では文章を書くときにほぼ必ず日本語入力ソフトを使うので、『日本語入力が高速になれば、多くの人に貢献できるのでは?』と考えて日本語入力への興味が広がっていきました。

── 入社して「自然言語処理部分を任せる」と言われて戸惑いませんでしたか?

池上 「『みんなの顔文字キーボード』に内蔵している辞書を改善したい」ということで、入社前から業務内容をかなり詳しく聞いていましたし、日本語キーボードの開発にも興味があったので、そこはすんなり(笑)

── かくして池上さんの入社をもって「みんなの顔文字キーボード」から「flick」への進化作業が始まるわけですが、それでも一筋縄ではいかなかったのでは?

池上 AI変換を安定して稼働させるのにちょっと苦労が(苦笑)

石本 AI変換についてはある意味チャレンジングな企画だったので(苦笑)。ユーザーのAI変換の入力頻度とサーバー負荷の関係など、実際のところ「やってみないとわからない」という部分が多かったものですから……。

AI変換の例。文章を途中まで入力すると、そのあとに続くであろう言いまわしが入力候補に表示される

名前変更の恩恵は意外なところに!?

── さて、「flick」に改名して辞書の改善も果たしました。現状の「flick」は石本さんが開発スタート時に想定していたような日本語ソフトキーボードに仕上がっていますか?

石本 そうですね、「flick」にバージョンアップを果たして、私の思ったようなものは実現しつつあると思っています。ただ、世の中の語彙ってどんどん変化していますから、日本語キーボードの「ゴール」というのはないんじゃないかと思っています。ここ数年、Twitterでユーザーが使っている日本語表現をみるだけでも、かなり変化しているような気がします。

Twitterユーザーの日本語表現の変化を語る石本氏に対し、「そう言われてみれば『草生える』とか『バブみ』ってここ数年ですよね」などと口走り、石本氏に苦笑される編集者を横目に取材は進むのであった(編註:ほんとすみません……)

── みんなの顔文字キーボードから「flick」へと名称が変わることで、これまで「顔文字」のほうに魅力を感じてインストールしていたユーザーが離れたということはありませんか?

石本 それはないと思っています。逆に今までアプリ名に「顔文字」と付いていたことで「自分は顔文字使わないから……」とインストールを避けていた方もいると思うんです。「flick」という名称になって「ああ、顔文字“も”打てる真っ当な日本語キーボードだ」という認識になって、ユーザーの入り口は広がったと思っています。

ユーザーと触れる機会が多いアプリだからこそ、「flick」は空気のような存在感を目指すのだという

キーボードが「感情を読む」機能を搭載!? これはいったい……

── 今後、「flick」に追加していこうと考えている機能はありますか?

石本 ユーザーが入力した文章を分析してその「感情」を把握する機能を搭載しようと思っています。
編註:3月24日に実装済み。

── そ、それはどういう……?

池上 文脈を分析して感情に関わる言葉を抽出し、それを処理して「感情に応じた顔文字を候補に出す」という機能ですね。AI変換がより高機能になると考えていただければよいと思います。

── その機能の実装はいつ頃になりますか?

石本 早ければ今月中、4月になる前にもバージョンアップで搭載されるかもしれません。

── そんなに早く!
編註:取材は2017年3月中旬に実施。

「flick」に初搭載! これが「感情分析顔文字表示」機能だッ

 インタビュー中でも話題に上っていた「感情分析」機能がいよいよ実装された。「flick」で文章を入力していくと、その文脈を分析したAI変換が「感情」を感じ取り、それにふさわしい顔文字を入力候補として提示してくれるという機能だ。3月24日のアプリ更新に伴い利用できるようになっていたので、さっそく、感情分析による顔文字の候補表示を試してみた。

たとえば「総務の中村さん、かわいいよね」と入力するとこんな顔文字が候補に
「ランチのカレーが超美味しかった」と入力すると……
「○○さん激怒ですよ」と入力すればこの通り、怒り顔が候補に表示される。これは便利!

 カレーや激怒の例でもわかるように、なかなか凝った顔文字が候補として表示されている。もちろん文脈に含まれている「感情」にふさわしい顔文字だ。「flick」のAI変換は、通常の文字入力をかなり効率的にしてくれるだけでなく、顔文字を探す手間すら省いてくれるぐらいにまで進化したことがよくわかる。今後のさらなるチューンアップにも期待が持てそうだ。

将来的には「ユーザーに合わせた」した変換を実装したい

── 今後のロードマップ的なものがあれば教えてください。

石本 ここ数ヵ月は、ユーザーから寄せられた意見と向き合って細かい要望を吸収して改善していこうと思っています。辞書周りでも、不要な語を排除する代わりに、より必要な単語はどれかを追及していこうと思っています。抽象的ではありますが、辞書を「いい感じに」していこうと(笑) 辞書データが“開発者個人の意見”に寄りすぎないように、機械的な処理が必要となると思いますが。

まずは「flick」の完成度を上げていく方向に進むとのこと。今後のバージョンアップにも期待が高まる

 また、「できたらいいな」レベルの考えですが、ユーザーの属性を元にした変換を提供して効率を上げるような仕組みを考えていきたいなと。例えば、ユーザーがIT関連の仕事をしているなら、IT用語を重点的に変換候補として提供するとか。

── 最後に、「flick」ユーザーの皆さんへ一言いただけますか?

石本 日本語ソフトキーボードの開発者として、今後も「空気のような存在」で、ユーザーの気に障らない機能を追及していきたいと思っています。AIについてもまだまだ研究する余地はあると思うので、それを「flick」に取り入れていければ。

池上 私が開発を担当したAI変換をもっともっと使っていただければと思います。そして、不備がありましたら改善を進めますので、お手数でもフィードバックいただけますと幸いです。

石本 そう、ユーザーの皆さんでないと発見できない変換上の問題も多々あると思います。皆さんからご意見をいただきながら、「flick」の完成度を上げていきたいと思っています。今後とも「flick」をよろしくお願いいたします!

── ありがとうございました!

(提供:IO Inc.)

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