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7月17日が「国際絵文字デー」である理由は、あの人にあった (1/2)

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2017年07月20日 10時00分

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Appleのサイトには今年のmacOSやiOSで搭載予定の“emoji”が紹介されていますが、これはもはや「字」なのでしょうか

 7月17日は「国際絵文字デー」でした。

 日本で1999年にiモードに搭載された絵文字は、「もはやイラストじゃないか」という批判を浴びつつも、iPhoneに、そしてUnicodeに収録され、今では世界中の人々が日々のコミュニケーションに利用する「言語フリーの象形文字」になりました。

 ちなみに米国では、ソニーピクチャーズ配給で「The Emoji Movie」なるものが7月28日に公開されます。そこは7月17日に公開すれば良かったのに、と思うのですが、絵文字が擬人化して、スマートフォンの中の世界を描き出す、というストーリーです。

 スマホでメッセージングをしている人、つまり現代人のほとんどは、そのコンテクストを理解することができる、間口の広い作品と言えるかもしれません。

 それにしても、なぜ7月17日が絵文字デーなのか?紐解いてみましょう。

きっかけは「ジョブズ」

 国際絵文字デーが7月17日である理由を紐解くと、次のような理由が挙がってきます。それはiPhone/iPadに収録されているカレンダーを意味する絵文字が、「JUL 17」を示しているからということです(http://worldemojiday.com)。

 じゃあ、そもそもなんでAppleは、7月17日をカレンダー絵文字の日付にしたのか、という話ですが、これはiPhoneが登場する5年前、2002年にさかのぼらなければなりません。

 Appleはニューヨークで開催されたMacworld Expoの基調講演で、Mac向けのカレンダーアプリ「iCal」をリリースしました。もちろんそれを披露したのはスティーブ・ジョブズ氏です。その日付こそ、2002年7月17日だったわけです(http://www.macworld.com/article/1006143/ical.html)。

 その後、Appleのカレンダーアイコンには7月17日が採用され、iOSの絵文字にもそのままこの日付が使われるようになったといういきさつなのです。

 ちなみに、カレンダー絵文字は、スマートフォンやSNSによって、いくつかのバリエーションがあります。その名の通り、「絵文字の百科事典」といえるEmojipediaでは、各種デバイスやサービスに収録されているカレンダー絵文字を比較することができます(https://emojipedia.org/calendar/)。

 AppleとGoogle、Mozillaは7月17日を採用していますが、Microsoftは何月だかわからないカレンダーの月曜日、Samsungは5月のカレンダー、LGは3月27日、Facebookは何月だかわからない3日、Twitterは3月21日と意外とバラバラ。HTCは単なる方眼で、カレンダーかどうかちょっとよくわかりません。

アドビのフォント開発者がこだわった「子」の絵文字

 Adobeのフォント開発者には、UnicodeコンソーシアムのEmoji文化委員会に所属するポール・D・ハント氏がいます(@pauldhunt)。同氏が新しい絵文字を策定していく中で、こだわったのが「子」を表す絵文字(CHILD:U+1F9D2)でした。

Unicodeのサイトから。左からGoogle、Twitter、EmojiOne、Facebookでの実際の表示です

 この絵文字では、なるべく性別にとらわれないデザインを採用するように、同氏が提案したそうです。その理由は、子供がジェンダーの概念にとらわれずに自分たちを表現することができる絵文字にしたかったからだ、と説明します。

 絵文字はこれまで、多様性を確保するため、肌の色や髪の毛、目の色などを選べるようにしてきました。しかしそうしたリアルな表現をすると、どうしても男性と女性を意識せざるを得なくなる表現へと進んでしまいます。

 そこで、性別にとらわれない表情や髪の毛をデザインに盛りこみ、同氏の思いを実現するデザインへと仕上げていったそうです。

 絵文字が日本で登場した当初は、文字として表現されており、モノクロのドットでも何を指し示すかが表現できる、そんなシンプルなものでした。しかしこれがイラストのような文字となり、スマートフォンやSNSに収録され、あらゆる点での多様性が実現されていきました。

 ハント氏の子供の絵文字に対する思いは、より明確な意味性を求めるのではなく、中庸の表現を実現したい。絵文字が子供の未来への思いとともにデザインされている点に、非常に感銘を受けました。

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