山根博士の海外モバイル通信

2017年は両画面スマホが続々登場!? 変態スマホが豊作の年になる

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年07月21日 10時00分

 表面だけではなく裏面にもディスプレーを搭載する「両面スマートフォン」。ロシア(発売時)の「YotaPhone」シリーズが有名ですが、追従するメーカーはあまり多くありませんでした。

 しかし、2017年はもしかすると複数メーカーから製品が登場する「両画面豊作の年」になるかもしれません。

いままではEインク側の制御は別OSだった

 両画面スマートフォンは、基本的に表側が液晶または有機EL、裏側がEインク(電子ペーパー)となっています。Eインクは直射日光下での視野性に優れ、書き換え時しか電力を必要としないので、消費電力が少ないという長所があります。

 デメリットとしてはバックライトを搭載できず、数色表示のカラーEインクパネルも商用化されているものの、スマートフォンのディスプレーとして利用できるものはモノクロパネルのみ。液晶の完全な代替にはなりえません。

 そのため、両面スマートフォンでは普段は液晶側で操作し、電子ブックを読んだり航空券のEチケットを表示しておくときは裏側のEインクを使う、なんて使い分けに向いています。

 しかし、過去のほとんどの両画面スマートフォンはEインク側で専用OSを動かしており、電子ブックリーダー程度しか実用性のあるアプリは利用できませんでした。

 そのため、両画面スマートフォンの普及は進まなかったと考えられます。YotaPhoneも初代製品とYotaPhone 2の初期ファームウェアでは、Eインク側でできることは限られていたのです。

YotaPhone 2も最初のファームウェアはEインク側で専用アプリしか利用できなかった

これからはモノクロ画面でもAndroidアプリが動く!
COMPUTEXではEインク採用2in1 PCも登場した

 しかし、現在の両画面スマートフォンは、Eインク側でもAndroidがそのまま動きます。液晶/有機EL側と画面サイズ・解像度は異なるものの、表面の表示内容を裏面側にそのまま切り替えて表示することもできるようになりました。

 つまり、「モノクロ画面Android」として、普段使っているアプリをそのまま利用できるわけで、これなら使ってみようと思うユーザーも増えるかもしれません。

 2017年6月時点での両画面スマートフォンの最新モデルは、中国ハイセンスの「A2」。表のディスプレーが5.5型フルHD解像度(1080×1920ドット)の有機EL、裏ディスプレーが5.2型540×960ドットのEインクを搭載。

 それぞれの画面を自由に切り替えて使えます。なお、裏側もディスプレーのため、指紋認証センサーはXperiaのように本体側面に備えています。

ハイセンスの「A2」。2017年登場の最新両画面スマートフォン

 過去を振り返っても、メジャーメーカーからは両画面スマートフォンは登場しておらず、iPhone用などにEインクディスプレーを搭載したカバーがサードパーティーから登場したりしていました。

 そのEインクカバーも出していた中国のOnyx Internationalが現在両画面スマートフォンを開発中とのこと。同社はEインクタブレットの中堅メーカーで、COMPUTEX 2017ではポータブックのような2in1のEインクタブレットを出展していました。

 Onyx Internationalは2013年に2G(GSM)搭載のEインクスマートフォン「Onyx E43」を発売しています。おそらく世界初のEインクスマートフォンです。2015年のCOMPUTEXではLTE対応製品を開発中とアナウンスしていました。

 しかし、2016年のCOMPUTEXではスマートフォンについては忘れ去られており、開発は中断したものと思われていました。

 そこで、2017年の今年もCOMPUTEXの同社ブースでダメもとで話を聞いたところ、担当者から「両画面の製品を開発中」というコメントをもらえました。うまくいけばこの秋あたりに登場予定とのこと。9月のIFA 2017あたりで発表されるかもしれません。

OnyxのEインクスマートフォン「E43」は2Gのみ対応。2017年にはLTE搭載の両画面モデルが登場予定

両画面スマホの本家・YotaPhoneも第3世代も登場間近
京セラやサムスンの参戦にも期待したい!

 そして、本家のYotaPhoneも今年秋に「YotaPhone 3」としてリニューアルすると発表されました。ディスプレーは表が5.5型有機EL、裏が5.2型Eインクとなる予定。YotaPhone 2が5型+4.7型だったので、ひと回り大きくなります。CPUはSnapdragon 650あたりの搭載がウワサされています。

 YotaPhoneを開発していたYota Devicesは2015年に株式の過半数を売却し、現在は中国のBaoli Yota Technologies傘下となっています。

 製品コストも下げられており、64GBモデルは350ドル前後(4万円程度)とのこと。YotaPhone 2は登場時3万2990ルーブル、当時のレートで7万円近くしましたから、半額近くまで値段が下がっています。両画面スマートフォンを手軽に入手することができそうですね。

YotaPhoneも3世代目が登場。過去2機種より大幅パワーアップ予定だ

 さて、両画面スマートフォンは何も板状の製品ばかりではありません。日本で発売されたNECの「屏風」こと「MEDIAS W N-05E」や、アメリカで発売された京セラの「Echo」など、2つの画面を開いたり閉じたりできる製品がありました。

 片側のディスプレーをEインクにして、横向きに時にはEインクの画面にソフトキーボードを表示する、なんて使い方ができたらおもしろいのですが、そんな変態端末を商品化するメーカーはなかなか出てこないでしょうね。

京セラのEcho。これの片面がEインクなんて変態端末は出てこないものだろうか

 両画面スマートフォンは、開発や製造にコストがかかってしまいそうですから、後からカバーをはめて両画面化するのがいいのかもしれません。

 とはいえ、ONYXが出していたEインクカバーは、独自OS仕様だったこともあり売れ行きはイマイチだったようです。ここはもう、キーボードカバーなど変態アクセサリーを出しているサムスンあたりに純正の「Eインクカバー」をつくってほしいものですね。

サムスンにはキーボードだけじゃなくEインクカバーもつくってほしい

山根康宏さんのオフィシャルサイト

「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!

 長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!

 「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!

→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」を読む

ASCII倶楽部は、ASCIIが提供する会員サービスです。有料会員に登録すると、 会員限定の連載記事、特集企画が読めるようになるほか、過去の映像企画のアーカイブ閲覧、編集部員の生の声を掲載する会員限定メルマガの受信もできるようになります。さらに、電子雑誌「週刊アスキー」がバックナンバーを含めてブラウザー上で読み放題になるサービスも展開中です。

→ASCII倶楽部の詳細はこちらから!

mobileASCII.jp TOPページへ

mobile ASCII

Access Rankingアクセスランキング