米トイザらスの閉店は社会に意外と大きなインパクトを与える

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2018年03月21日 12時00分

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 日本にも進出している大型玩具店チェーン「トイザらス」。米国では「Toys’R’Us」と表記され、「R」は裏文字となっています。ブランドを和訳するときに、「ら」をひらがなにするというのは良いアイディアでした。

 さて、そんな米国のToys’R’Usが、再建を断念し、全店閉鎖のプロセスに入るとのニュースが入ってきました。子供がいる親はもちろん、お店でおもちゃを買ったことがある多くのアメリカ人にとってショッキングな出来事として受け止められています。

 ちなみに、日本とアジアのトイザらスは経営状況もよく、米国と関係なく営業を続けるそうです。日本市場に関しては、これまで以上に出店を強化するとも発表しています。

米国内のトイザらスの店舗に行ってみたところ、閉店セール中でした。子供にとっては楽しい思い出がたくさんあった場所、ということで記念写真を撮っている人を多数見かけました

Toys’R’Usだけではない、米国小売店の現状

 Toys’R’Usの負債総額は50億ドル。2018年に入ってから、再建計画の一環として、800あった米国内の店舗の約100店舗を閉鎖することを決めていました。

 清算手続きに入ることで、全店舗の閉鎖と3万人を超える従業員が職を失う可能性が指摘されています。もちろん郊外を中心とした店舗スペースが空くことになり、不動産市場にも大きな影響を与えると考えられます。経済面での大きな影響は免れられないということです。

 加えて、心理的な面でのショックも大きいようです。初めての子供が生まれてから度々通っていた親や、物心がついて訪れた大好きな場所という記憶とともに育った子供たち、あるいは友人の子供の誕生日の折に訪れるなど、非常に思い出深い場所であり続けていたからです。

 しかし、こうした思い出深い店舗も、近年は非常に厳しい現実があります。欲しい商品がすべて揃っているわけではなく、オンラインでのオーダーの方が確実で安いことが多いからです。それはつまり、Amazonの勢力拡大と、これに対抗する形で店頭での品ぞろえを強化したWalmartやTargetといった総合スーパーやデパートが、Toys’R’Usの存在意義を薄めてしまったと考えられます。

 この傾向は必ずしもおもちゃ市場に限りません。大型店舗を構える専門店に共通する問題となっています。例えば、電気製品を扱うBestBuy、家具や日用品を扱うBed and Bath Beyondなどを訪れると、棚に商品はあるのですが、特にBestBuyはスカスカなところも目立ちます。そして、在庫を持たずに、あらかじめオンラインでオーダーしておけば、店頭で受け取れるというスタイルの活用を強調しています。

 すでに米国では、店頭が「楽しいショッピングの現場」ではなくなってしまったのです。

 もちろん個人商店やローカルビジネスはその限りではありません。オンラインにないものが価値を帯びることだってたくさんあるでしょう。しかしより大量な消費が動く市場では、その価値が薄れてしまったと見ることができます。体験としてのショッピングが今後どのように変化するのか、また別の機会に触れてみたいと思います。

そもそも子供にとってはおもちゃよりiPad

 子供であれば、キャラクターのおもちゃが楽しかったり、うれしかったりする時期はありますし、日本では新幹線がロボットに変形する「シンカリオン」など、アニメとのメディアミックスが非常に成功している例が今もあります。魅力的な商品ですよね。

 しかし、米国の玩具メーカーである、マテルやハズブロなどにとっても、おもちゃ屋の店頭がなくなることが打撃となり、株価が下落しています。その話と関係しているのが、子供が何を欲しがるかという問題です。

 ショッピング体験としてのToys’R’Usを終焉へと追いやったのがAmazonならば、おもちゃのニーズという面から、Toys’R’Usに終止符を打たせる原因を作ったのはAppleでしょう。米国での親たちが、いずれ飽きてしまう高価なおもちゃを買い与えるより、iPadとBeatsのヘッドフォンを揃えてYouTubeやゲームを楽しむほうを選択していることは、街中や空港で5歳以上の子供たちを見ているとわかります。

 そのiPad自体は、長らく販売台数の不振を続けてきましたが、昨年の廉価版の投入で盛り返しており、来週に現地から詳しくお伝えする予定の27日開催の教育イベントでも、廉価版iPadが刷新されると見られています。

 一度限りのおもちゃよりも汎用的なツールへとこどもたちのニーズが向かっている現状は、おもちゃにとって不遇の時代と言えます。そうしたデバイスとともに遊ぶおもちゃも出始めており、たとえば世界的に人気の木のレールの電車のおもちゃ「Brio」ではスマートフォンやタブレットで運転できる電車が販売されています。

米国のおもちゃ文化の変化に対応する次の企業は

 米国で小さな子供がいる友人の家に行くと、膨大な数のおもちゃに圧倒されます。5歳にもなると、1週間かけても全部のおもちゃで遊びきれないだろうというほどのおもちゃがあり、とにかく散らかしながら遊ぶという光景が広がり、ついつい「どうやって片付けるんだろう」と頭が痛くなるほどです。

 こうした遊び方がデジタルへと移行し、映像やARといった散らからない遊びが普及すればするほど、Toys’R’Usで販売されていたようなおもちゃの市場は狭まっていくことになります。

 一方でシリコンバレーでは、テクノロジー企業に勤める親であればあるほど、デジタルを排除した子供の教育への興味が高まっているのも面白い動きです。だからと言って彼らがおもちゃを買い占めるわけではなく、自然に触れさせたり、料理をさせたり、自分で遊びや楽しさを見出すような教育を施したいと考えているようです。

 Toys’R’Usを厳しい状況に追いやったのはAmazonやAppleかもしれませんが、これらの企業が必ずしも次の子供の遊びを担うわけでもなさそうなのです。デジタルにとらわれず考えていくことで、あるいは新しいビジネスが生まれるのかもしれません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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