末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢

ZTE製スマホの半導体の6割が米国企業製――輸出禁止から1ヵ月弱でビジネスに大ダメージ (1/2)

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2018年05月23日 12時00分

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 ZTEが存続の危機に陥っている。イランや北朝鮮などに対する制裁に違反し、米企業の技術に基づく製品をこれらの国で販売していたと米国は主張し、米国企業に対して同社向けの製品輸出を禁じたことが大きな原因だ。ZTEはビジネス活動ができないと訴えている。

2画面スマホの「M」もZTE製。米国でも低価格モデルを中心にZTE製スマホは一定のシェアを持っていた

このままでは7年間、米国企業からの部品供給が受けられない

 ZTE、Huawei(ファーウェイ)の中国企業2社は、通信機器と端末の両方を提供している。ともに、政治的な関係から米国は難しい市場となっている。

 ネットワーク機器については、2012年のオバマ大統領時代に、米下院で2社の通信機器は中国政府の盗聴などに使われている可能性があるという調査が出され、政府機関の調達リストから外された。キャリアに対しても購入を控えるよう勧告が出された。

 端末についても、今年初め、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)などが2社の製品を使わないことを推奨するとした。HuaweiはCESで大々的に発表予定だったAT&Tとの提携を、直前に解消されるという事態になった。

 だが今回のZTEはもう一問題ある。米中関係だけではなく、米国がイラン、北朝鮮、スーダンなどの国に対して取っている制裁が関係しているのだ。

 米国はこれらの国に対して経済制裁を実施しているが、ZTEがこれに違反して、米国企業の技術が入った製品を輸出していたというのだ。しかも、数年前からの問題という。

罰金を無視したZTE、米中貿易協議の争点に

 2016年3月、米商務省はZTEに対し、イランと北朝鮮など5ヵ国に輸出が禁じられている製品を販売したとした。内部文書も公開しており、ZTEは1年後にこれを認めた。虚偽の陳述なども加わって罰金は11億9000万ドル、幹部への懲戒も求めたが、ZTEはこれに従わなかったとして、4月16日に商務省の産業安全保障局(BIS)はZTE否認命令を出した。当初の合意に含まれていた、7年間の米国企業によるZTEへの製品輸出禁止が発動した形だ。

 「商務省は、ZTEが2016年の和解交渉でBISに対して虚偽の陳述を行ったと断定した。そして2017年の執行猶予期間中、関連していた幹部への懲戒について、ZTEは実行中または実行済みと語った。BISが幹部の懲戒についての情報と文書を求めたところ、ZTEは米国政府に対して虚偽の陳述をした」と商務省は記している。ZTEは違法行為に関連している幹部にボーナスを満額で支払っていたことなどを隠していたとのことだ(https://www.commerce.gov/news/press-releases/2018/04/secretary-ross-announces-activation-zte-denial-order-response-repeated)。

 そして、4月16日のBISの否認命令から1ヵ月もしないうちに、ZTEは主要な事業活動ができなくなったと発表した(http://res.www.zte.com.cn/mediares/zte/Investor/20180509/C1.pdf)。

 トランプ大統領はTwitterで「習近平氏と私は巨大な中国の携帯電話会社、ZTEが事業活動を再開できるように協業しているところだ」「たくさんの雇用が中国で失われた」とツイートしたかと思えば、「これまでの協議は中国が一方的に有利だった。双方にメリットがある合意は中国には難しい」「ZTEで何も動きはない。大規模な貿易交渉に関連しているというだけ。我々は中国を相手に年間数千億ドルを失っている」といった旨の発言をしており、態度が一貫しない。

 米国と中国は5月17日、18日と貿易協議を持ったが、ZTEに対する制裁緩和はなかったようだ。この間、米国防総省は軍基地内でのZTEとHuaweiの携帯電話の販売を停止したことも報じられている。

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