アマゾンが日本の学生を囲い込むワケ

文●山口健太

2018年06月08日 10時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 アマゾンが5月30日、同社の会員プログラム「Amazonプライム」の学生向けバージョン「Prime Student」で新たな施策を発表しました。近畿大学と組み、図書館に専用ルームを設置。学生アンバサダーがプライムの魅力をほかの学生に説いていくもの。国内初の取り組みということで、大阪まで取材に行ってきました。

■有料会員は1億人以上

 日本で2007年に始まったAmazonプライムは、当初「お急ぎ便」の送料が無料になるプログラムとして知られました。その後、同じ料金で動画や音楽などのコンテンツが加わり、会員向けセールが始まるなど、お得さが急速に増しています。

Amazonプライムを説明するアマゾンジャパン バイスプレジデント プライム統括事業本部長 紣川謙氏

 今まで謎に包まれていた会員数について、米アマゾンは世界1億人以上という数字を4月に公表しました。規模的に近いのは米動画配信サービス「Netflix」の有料会員数、世界で1億2500万人という数字です。

 日本国内の会員数は非公開であるものの、プライムが展開する16ヵ国の人口と同社のシェアから推測すると、数百万人程度いてもおかしくありません。日本に5000万世帯の家庭があることを考えると、まだまだ伸びる余地はありそうです。

会員数を示す縦軸の単位はないが、国内に数百万人は存在しそうだ

■会員獲得で学生に報酬

 学生向けの「Prime Student」は、会費が月額200円または年間1900円と一般向けの約半額ながら、サービス内容は同等のプログラム。本を買うと10%のポイントがもらえる独自の特典も加わります。

学生向けプライム「Prime Student」

 Prime Studentに積極的に取り組んでいるのが近畿大学です。学生が自分の言葉で他の学生を勧誘する「アンバサダープログラム」を展開しており、今回はアマゾン製デバイスを並べた専用ルームを設けることで、活動をさらに強化しました。

Amazon製デバイスでコンテンツ視聴をゆっくり試せる

 学生アンバサダーは、会員を獲得することで報酬が得られるもの。普通の大学ならこうしたビジネス要素とは距離を置きそうなところですが、近畿大学が掲げる「実学教育」では、学問研究からもお金を稼ぐことを否定していません。その精神に則って成功した「近大マグロ」以降、メディア露出も増えています。

学生アンバサダーがAmazonプライムの魅力を説明する

 学生向け展開にあたって課題だったのはクレジットカード保有率の低さです。アマゾンは対策として2017年11月、プライム会費のドコモとauのキャリア決済に対応。大学側は学生証にVisaプリペイド機能を搭載し、クレジットカードを持っていない学生も不自由しないよう、環境作りを進めているそうです。

■会員制サービス攻勢激化へ

 Amazonプライムで気になるのは、囲い込みが終われば会費を値上げするのではないかという点です。日本では一般向けに年額3900円で提供しており、世界各国のプライムの中では比較的安い部類に入っています。米国ではもともと年額99ドルと高く、2018年4月には年間119ドルへと値上がりしました。

 値上げの不安はある一方、インターネットで動画や音楽、電子書籍などを楽しむ上で、サービスを個別に契約するよりセット契約にするほうがお得というケースが増えています。直近ではKDDIがNetflixとのセット料金を発表しました。今後もスマホにコンテンツ配信などのサービスをバンドルする動きは進んでいくでしょう。

 近い将来、さまざまな企業からコンテンツやサービスをセットにした「Amazonプライム的なプログラム」がいくつも登場し、その中から自分に合ったものを選ぶことになるのではないかと筆者は予想しています。今回のアマゾンを含め、各社の囲い込み攻勢はますます激しくなるでしょう。

mobileASCII.jp TOPページへ