山根博士の海外モバイル通信

芸能人を使うワンパターンがはびこる中国のスマホ広告

文●山根康宏 編集●ASCII編集部

2018年07月01日 10時00分

北京の三里屯の夜景。スマホ広告が映える

 スマートフォンの広告と言えばメーカーによりさまざまなものが見受けられます。しかし、中国ではいまや広告がパターン化してしまっています。右も左も似たような広告ばかりがならび、一見するだけではどのメーカーの広告なのかわかりにくくなっているのです。数年前からOPPOとVivoが始めた、芸能人がスマートフォンを片手にこちらを見る広告をどのメーカーも右へ倣えと模倣しているのです。

OPPOのスライドスマートフォン、FIND Xの中国の広告

 カメラ部分全体を電動でスライドさせるギミックで世間を驚かせたOPPOの「FIND X」。OPPOはサッカーのFC Barcelonaのスポンサーになったこともあって、FIND Xの広告にはあのネイマールを採用しています。また、以前は街中に広告などほとんどなかったシャオミも、今は男性アイドルが自撮りを促す広告が目立ちます。シャオミもとうとう市場の流れに飲み込まれてしまった感じです。

あのシャオミも、もはや他社と変わらぬ広告展開中

 実は、今年1月に「ファーウェイやOPPO、そしてアップル───スマホ各社の広告を深センに見る」と題して、深センのスマートフォンメーカー各社の広告を比較した記事を書きました。その時はメーカーごとに広告展開の方向性に差が見られましたが、それから半年たった今、どのメーカーも同じテイストの広告を打つようになってしまったのです。

 LeicaカメラのHUAWEI P20シリーズが好調なファーウェイも、下のラインのnovaになると芸能人頼みになるようです。ファーウェイショップの店頭にはこんな広告が。後ろに見える端末だけの広告よりも、手前のPOPのほうについつい目が行ってしまいます。

ファーウェイショップの店頭にて

 これらの芸能人=アンバサダーを使った広告は、その芸能人のイメージがそのまま端末イメージを表すことになります。一歩間違うと違った印象を与えてしまいますが、とにかく誰かしらを使って端末をアピールする、という風潮が今の中国スマートフォン市場のようです。

ファーウェイのサブブランド「Honor」の最新モデル「Honor Play」の広告

 Honorは端末のモックを見ても、ずらりと芸能人の顔が並びます。もはやアンバサダー無しでは端末の広告展開は成り立たないのでしょう。芸能人のファンはこのモックアップを入手しようと躍起になっているのかもしれません。なにせ本物のスマートフォンには芸能人は出てきませんから。

モックにもずらりとアンバサダーが並ぶ

 中国国内のシェアが下落してからなかなか浮上できないサムスン電子も、ついにアンバサダー広告を出しました。大人の女性のイメージで「Galaxy S9」を上品かつ高級な製品として売り込みをかけているのでしょう。サムスン電子の広告はグローバルでほぼ同じものが展開されていますが、中国だけは独自の広告を出しているのです。

Galaxy S9のイメージアップを図るサムスン電子の広告

 街中の家電量販店やキャリアのお店に入っても、類似の広告を見かけることがあります。こちらは2Gの簡単ケータイなのですが、広告のパターンは他社と同じですね。

2Gの低価格端末にも同じような広告が展開されている

 さて、アンバサダー広告をOPPOと共に数年前から展開しているVivoは、冒頭の写真のように端末だけの広告も出してきました。新世代のスマートフォン「NEX」のアピールは今までとは異なるイメージが必要ということなのでしょう。しかし、いくつかあるパターンの広告の一部には宇宙飛行士が写っています。さすがにこれはアンバサダーとはいわないでしょうが、何らかの人物を使った広告も出さないと心配なのかもしれません。

宇宙飛行士を使ったVivo NEXの広告

 ここまで似たような広告が並んでしまうのは、もはやスマートフォンは芸能人が広告塔にならなければなかなか売りにくいのかもしれません。価格ごとに機能や性能に差はあるものの、ミッドレンジクラスの製品でも十分実用性のある製品が増えています。スマートフォンは機能で選ぶのではなくイメージで選ぶものになりつつあるのかもしれません。

 各メーカーの担当者は次の新製品にどの芸能人を使うべきなのか、毎回頭を痛めているのでしょう。外野の人間としては次に誰が使われるのかを推測するだけでも面白いのですけどね。

マイナーメーカーも似たような広告なら認知されそう

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