LINEモバイルはむしろ革新から遠ざかっていないか?

文●石川温

2018年07月09日 17時00分

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 LINEモバイルは2日、複数のキャンペーンを紹介する記者会見を開催した。

 今年3月にソフトバンクと資本・業務提携を締結したばかりのLINEモバイルがどのような新しい戦略を打って出てくるのか注目された。

 取材したところ、ソフトバンク傘下になったことでのLINEモバイルにおける「メリット」と「デメリット」がハッキリと見えてきた内容となっていた。

■疑問が残る「最速チャレンジ」

 LINEモバイルは「さらなる革新を起こすための3つの宣言」として「マルチキャリア」「格安スマホ最速チャレンジ」「スマホそのまま」という項目を上げた。

 まず「マルチキャリア」だが、ソフトバンク傘下に入ったことで、当然ながらソフトバンク回線の販売が始まった。料金プランはNTTドコモ回線と全く一緒。

 LINEモバイルが格安スマホ市場に新規参入した際、NTTコミュニケーションズが主に開発に携わったという「カウントフリー機能」は「データフリー機能」と名称を変えて、ソフトバンク回線でも提供される予定だ。

 しかし現状では「今秋提供予定」として先送りになっている。

 ソフトバンク傘下であるはずなのに、LINEモバイルの一番のウリであったはずの「カウントフリー機能」がソフトバンク回線では、すぐに提供できないとは、なんだか本末転倒だ。

 代わりにLINEモバイルでは、ソフトバンク回線においてはデータ容量を2倍にしてお茶を濁そうとしている。

 ソフトバンクの回線では、高速な通信速度を提供できるという自信があるのか、LINEモバイルでは通信速度を定点観測し、公式サイトで公開するという取り組みを実施する。

 さらに「格安スマホ最速チャレンジ」として、月に1度でも測定結果が1Mbpsを切った場合には、ユーザー全員に1GBのデータ容量をプレゼントするという。

 ただ、LINEモバイルとしては「格安スマホの中で最速」をアピールしたいのだろうが、「最速」と言い切ってしまうと、消費者庁に「業界最速に根拠がない」と措置命令が出され、その後、あっさり、業界から消え去ったフリーテルの二の舞いになりかねない。LINEモバイルとしては「チャレンジ」という言葉をつけることで、消費者庁からのお叱りを避けたいのだろう。

 しかし「最速チャレンジ」をアピールする一方で「1Mbpsを切ったら1GBをプレゼント」というのは、整合性がついていないような気がしてならない。「最速であること=1Mbpsを切らない」というのはイコールではないわけで、この辺がなんだか首を傾げたくなってしまうところだ。

■暗にUQモバイルを最速と認めていないか

 とはいえ、ソフトバンク回線で安定した通信速度を提供できるというのは間違いなさそうだ。NTTドコモ回線の場合、帯域でネットワークを借りているため、どうしても昼休み中などは速度が遅くなってしまいがちだ。

 2社の回線の契約がどうなっているかは謎ではあるが、「昼休みは遅くなる」という格安スマホにありがちな不満は避けられるのではないか。

 ここで、ひとつ突っ込んでおきたいのが、「格安スマホ最速チャレンジ」という宣言にある「本キャンペーンにおける格安スマホはUQモバイルを除くスマートフォン通信サービスを提供するMVNOをさしています」という注釈だ。

 つまり、KDDI傘下のUQモバイルだけでなく、MVNOではなくサブブランドという位置づけであるワイモバイルも対象外というわけだ。

 ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルが除外されるのは百歩譲って許すとしよう。しかし、LINEモバイルと同じ「キャリア系MVNO」であるUQモバイルを対象外とするのはいかがなものか。

 「チャレンジ」といいながら、強敵を排除した上で戦うことに何の意味があるのか。これでは、はじめから「UQモバイルのほうが最速」とLINEモバイル自身が認めてしまっていることにはならないのか。

 LINEはソフトバンクの傘下、UQモバイルはKDDIの傘下なのだから、LINEモバイルは本来であればUQモバイルと真っ向勝負すべきだ。

■ソフトバンクに牙を抜かれたのでは

 最後の宣言「スマホそのまま」では、ユーザー接点を増やすべく、全国の即日開通可能店を今夏中に69店舗から100店舗以上に拡大するという。

 LINEモバイルとしては、格安スマホにデビューするにあたって、わざわざ新機種を買わなくても、今使っているスマホをそのまま使ってLINEモバイルにデビューしてほしいというわけだ。

 ただ、「今使っているスマホをそのままでソフトバンク回線で使う」となると、最も、LINEモバイルがターゲットにすべき顧客層は「ソフトバンクでiPhoneを使っている客」ということになる。

 ソフトバンクでiPhoneを使っているユーザーが、端末そのままで通信料金を安くしようと思ったら、ソフトバンク回線を提供するMVNOを選ぶのが得策だ。

 本来、LINEモバイルは、ソフトバンク回線の提供を始めたのだから、ソフトバンクのiPhoneユーザーを狙い撃ちしたプロモーションを展開できるのが理想だが、資本提携の関係にあるソフトバンクを前にしては、どうすることもできない。「ソフトバンクのiPhoneをそのままでLINEモバイル」と言えればいいのだが、結果として「スマホそのまま」という脱力感のあるキャッチコピーしか宣言できなくなってしまっている。

 ソフトバンクと資本提携したことで安定した高速な回線を手にしたものの、キャリア傘下ということで牙を抜かれたように見える。結局、LINEモバイルが掲げていた「革新」からは遠ざかってしまったのではないだろうか。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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