アップル新iPhone発表後「iPhone 8」の価値が高まる理由

文●松村太郎 @taromatsumura

2018年07月17日 09時00分

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iPhone 8(上)と、iPhone 8 Plus(下)。今年9月以降も、重要な意味を持つモデルであり続けるかもしれません。

 調査会社CounterPoint Researchによると、2018年6月に世界のスマートフォン市場で最も多くの販売台数を獲得したのはiPhone 8だったそうです。

 獲得した販売シェアは2.4%。特に欧州において、ワールドカップのテレビ放送に合わせて、iPhoneでの写真撮影にテーマを置いたコマーシャル「How to shoot on iPhone」を投下し、顧客の注目を集めたと分析しています。

 コマーシャルは米国でも放映されており、YouTubeでも見ることができます。iPhone Xを使ってサッカーを撮影する「How to shoot Soccer on iPhone X」は、スピード感もあり、魅力的な仕上がりです。

 ちなみに英国の広告監視委員会は、アップルがiPhone Xのポートレートモードのライティング機能を「スタジオクオリティ」と宣伝したことを調査しましたが、アップルの表現は誤解を招かないという結論を出しています

 iPhoneのカメラはレンズやセンサーなどの性能面では必ずしもAndroidスマートフォンを上回るものではありません。むしろ保守的な部類といえます。しかし、そんなカメラ機能をウリとしたキャンペーンが効果を発揮するほど、表現がうまく、iPhoneブランドが依然として訴求できるものであることを物語っています。

2017年9月に、カリフォルニア州バークレーの海岸にいた2人の子どもを、iPhone 8 Plusで撮影(無加工)。カメラの画質は非常に満足いくレベルを維持しているといえます。
ホワイトハウスの前で撮影したiPhone 8 Plusのポートレートモード。ライティング機能でスタジオ撮影っぽくもできますが、そうすると「ホワイトハウス前」で撮った意味がなくなります。

■iPhone Xは3位になったが……

 さて、前述のCounterPointによれば、iPhone Xは第3位に入りました。2017年11月の発売以来ずっとトップを維持してきましたが、iPhone 8と同率の2.4%を獲得したサムスンのGalaxy S9+に届かず2.3%となりました。ちなみに大画面モデルのiPhone 8 Plusは2.1%の販売シェアで5位となっています。

 iPhone Xの販売については、同社のiPhone戦略の是非をめぐる焦点として、長らく注目されてきました。「販売価格が極端に高くなったiPhone Xの売れ行きが落ちているのではないか」といううわさからアップル株が売られるなど、ある種の指標となっていたのです。

 しかし今回CounterPointが発表したデータは「iPhone Xが既存のiPhoneラインアップの中でトップではない」ということを示すものですが、アップルの株価は別段大きな反応を見せていません。もう指標としての興味が薄れていることのあらわれと言えるでしょう。

 一方、モデルサイクルの後期になって強さを見せているiPhone 8については異なる評価も生まれています。「9月に発売される新型iPhone登場以降も、引き続き重要なモデルであり続けるのではないか」という評価です。

■次のiPhoneのラインアップを、改めて

 アップルは毎年9月に新型iPhoneを発売します。同時に昨年発表したモデル、一昨年発表したモデルをラインアップに残し、価格を毎年100ドルずつ下げて販売を継続します。

2017年9月のスペシャルイベントで、iPhoneラインアップを紹介するAppleのシニアバイスプレジデント、フィル・シラー氏。

 ちなみに例外としてiPhone SEが存在します。2016年3月の登場以降、途中で容量を増やしましたが、A9プロセッサを搭載したまま、引き続き349ドルで販売が続けられています。すでにモデル登場から2年経過しており、プロセッサぐらい入れ替えても良さそうに思うのですが。

 現在の見立てがそのままとなれば、

・iPhone Xの後継モデルとなる5.8インチ有機ELディスプレーを備えた次世代のベーシックモデル
・その大画面版となる6.5インチモデル
・6.1インチ液晶ディスプレーの大画面低価格モデル

 という3機種が登場することになりそうです。

 そして、iPhone 8、iPhone 8 Plusは現在の699ドル・799ドルから100ドルずつ値下げされ、599ドル・699ドルからということになります。しかしiPhone 8については、これまでとは事情が異なります。

■iPhone 8は新モデルとカニバらない

 iPhone X後継モデルは、5インチ以上の大画面と顔認証に対応するTrueDepthカメラを搭載したモデル群として用意されます。そのため、iPhone 8はホームボタンを搭載するクラシックなiPhoneとしての意味合いが、ラインアップの中で生じてくるのです。

 これまでアップルが1年前のモデルを値下げして販売してきました。iPhone 6以降は大きくデザインが変わっていないことから、ただプロセッサやカメラが1年前のモデルというだけの製品でした。しかしiPhone X世代のスマートフォンとiPhone 8はデザインも大きく異なります。

 つまりiPhone 8シリーズは、ホームボタンが備わる最後のiPhoneとして新しいiPhone X世代と明確な差別化が生まれることになり、単なる型落ちモデルではなくなるのです。

 これまでiPhone SEが人気だったように、より小さく価格が安く、いままでと同じ使い勝手で楽しめるモデルには一定の人気がありました。特に新興国やAndroidからiPhoneにスイッチするユーザーの間では、iPhone SEとともに、iPhone 6シリーズやiPhone 7シリーズが根強い人気であることもそれを裏づけています。

 iPhone 8の併売と値下げは、たとえばiPhone 6やiPhone 6sのユーザーに広い選択肢を与えることになります。今までと同じ使い勝手で利用できる最後のモデルとなりうるiPhone 8シリーズか、大画面化したiPhone X世代のモデルか。そのモデル選択についての情報も飛び交うようになるでしょう。

 iPhone 8は、iPhone Xと同じA11 Bionicプロセッサと1200万画素カメラを備えています。機械学習や拡張現実を生かすアプリにも、同じように対応できる製品です。未来のことは分かりませんが、iPhone 8は、今後のiPhoneの歴史の中で、意外と長く愛されるモデルになるかもしれませんね。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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