ソニー1人負け スマホ業界の明暗 決算でくっきり

文●石川温

2018年08月06日 09時00分

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 この1週間、スマホメーカーの勢いが「決算」という数字でハッキリと見えてきた。まさにヒットスマホの有無がメーカーの明暗を分けることとなった。

1兆ドル企業となったアップル

 スマホ業界で勝ち組と言えば、時価総額1兆ドルを超えたアップルだろう。

 iPhoneの販売台数は、前年同期比で微増の4130万台であった。例年、この4〜6月の決算は、9月の新製品発売前のタイミングであり、販売が落ち込む時期とされている。そんななか、わずかながらの増加を記録できたのは大したものだろう。

 また、特に注目すべきは販売したiPhoneの平均単価だ。昨年同期は606ドルであったが、今年は724ドルとなり、19.5%も高い結果となった。

 立役者はもちろんiPhone Xの存在だ。

 昨年まではiPhone 7 Plusが最も高く、次にiPhone 7、iPhone SEという3ラインナップが中心であった。

 しかし昨秋から今年にかけてはiPhone Xを頂点として、iPhone 8 Plus、iPhone 8という布陣となった。つまり結果として、iPhoneのラインナップは全体に高価格化していることがわかる。販売台数は横ばいだが平均単価が上昇しているということは、まさにアップルの戦略がピタリとハマったことになるだろう。

 ただ一方、IDCの調査によれば、4〜6月のスマホ出荷台数シェアにおいて、これまで2位だったアップルは12.1%で3位に後退している。20.9%のサムスン電子に続き、15.8%で2位にランクインしたのは中国・ファーウェイだ。

怒濤の成長見せたファーウェイ

 ファーウェイ端末事業トップであるリチャード・ユー氏は、今年2月にバルセロナで開催されたMobile World Congress2018会場で、日本メディアの取材に応じ「あと1~2年で台数シェアでアップルを抜いて2位になれるのではないか。1位になるには4~5年かかりそうだ」と語っていた。

 ファーウェイは4〜6月の四半期のみではあるが、2年かからず2位に浮上したことになる。

 ファーウェイの強みはエントリーモデルからハイエンドまで幅広いラインナップをそろえている点にあるだろう。4月にはグローバルでHUAWEI P20 Proを発売。日本ではNTTドコモが独占的に扱うというのもサプライズだった。

 また、昨年までファーウェイは日本市場においてMVNO向けなどのSIMフリーがメインであったが、今年はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといったキャリアに対してもスマホを納入するようになった。日本でも今後、かなりのシェアを上げることになるだろう。

 ただ、ファーウェイはいまだにアメリカ市場に本格参入できていないという弱点も存在する。アメリカ市場に進出できていないにも関わらず世界2位のシェアを獲ってしまうというのは立派であるが、今後サムスン電子を抜いてトップになるには、アメリカ市場の本格展開を避けては通れない。

 しかし政治的圧力もあり、中国メーカーのアメリカ進出はかなり困難な状況だ。はたしてリチャード・ユー氏が「4〜5年はかかるだろう」と語っていたシェア1位獲得に実際は何年かかるか、注目と言えそうだ。

 一方、ファーウェイの勢いに押されっぱなしなのがサムスン電子だ。

ファーウェイに押されるサムスン

 モバイル事業の営業利益は昨年同期比で34%も落ち込んでいる。サムスン電子ではフラグシップモデルであるGalaxy S9が販売目標に届かず、販促費もかさんだことが要因と説明しているという。

  実際、製品においては、Galaxy S9はGalaxy S8のマイナーアップデート的な位置づけでインパクトに欠けたという点が敗因だろう。

 そんな中、8月9日にはGalaxy Note9の発表を控えており、8月中にもグローバルで発売されると噂されている。サムスン電子としてはなんとか9月に発表される新型iPhoneの前に発売にこぎつけ、シェア拡大につなげたいはずだ。

 Galaxy Note9が市場でどう評価されるのかが、サムスン電子の今後を占うことになりそうだ。

 悲喜こもごものグローバルメーカーたちであるが、もはや「一人負け」の雰囲気が漂っているのがソニーだ。

「1人負け」の雰囲気漂うソニー

 同社のモバイル部門の売上だが、昨年同期は1812億円だったのが、今期は1325億円と487億円の大幅な減収を記録。営業利益も昨年同期は36億円と黒字だったものの、今期はマイナス108億円の赤字となってしまった。

 販売台数を見ても、昨年同期は340万台から今期は200万台にまで落ち込んでいる。

 フラグシップモデルである「Xperia XZ2」が思ったほど売れていないのだろう。

 最近、ソニーは全社的には売上が好調だ。理由は、ゲームやイメージングセンサーなどが成長している点にある。

 テレビやデジカメなどは「プレミアム路線」を貫くことで、競合他社とは価格競争をせずに高価格帯を維持することで売上を伸ばすという戦略が見事に的中しているのだった。

 しかしスマホにおいては、Xperiaもプレミアム路線なのだが、ここにはアップルやサムスン、ファーウェイなどのライバルが多く、まともに戦えていない状況にある。特に狭額縁やデュアルカメラなどでXperiaは遅れをとってしまい、今年ようやく他社に追いついたという状況でしかない。

 国内市場においては、これまでXperiaはAndroidスマホでトップシェアであったが、昨年シャープにトップを奪われてしまった。

 シャープはキャリア向けにバラバラだったAQUOSのブランドを「AQUOS R」に統一。さらにSIMフリー市場向けにコストパフォーマンスに優れたモデルを投入することで、販売台数を大幅に増やすことに成功した。

 一方、ソニーは「プレミアム路線」を貫くことで、SIMフリー市場への参入を拒み続けている(nuroモバイル向けには納入しているが、あれもXperia XZ Premiumというプレミアム路線商品だ)。

 結果として、ジリ貧状態が続いてしまっている。

復活の鍵は「安価なスマホ」か

 ソニーがモバイルで復活するためには、市場のニーズにあった商品を出せるかがカギだろう。やはり安価で手軽に手に入れられるソニーのスマホが求められているのではないか。

 Xperiaをプレミアム路線として維持したいのであれば、Xperiaとは別のサブブランドを作り、SIMフリー市場やNTTドコモのdocomo withシリーズ、Y!mobile、UQ mobileに納入するという戦略もありえるのではないだろうか。

 いずれにしても、ソニーが復活するには、何かしらの秘策が必要なようだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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