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高い利便性の割に理解されないワイヤレス充電 企業のノベルティーにオススメ!? (1/2)

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2018年09月05日 12時00分

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 ある企業のイベントに参加した際、ワイヤレスチャージャーをもらった。あらためて使ってみたのだが、これが意外にも便利というか、良い。決して新しい技術ではないが、ワイヤレス充電技術の現状について紹介したい。

筆者が手に入れたQi対応のワイヤレスチャージャー。企業のロゴが入っている以外は、性能的には一般的なもの。この上に対応スマホを置くだけで充電が可能だ

スマートフォンがもっと自由に

 今回手に入れたチャージャーは、よくあるコースター型の形状だ。本体を電源に接続して、スマートフォンをポンとその上に置くと充電がスタート……わざわざ説明する必要もない。だが、有線で接続するときと比べて、スマートフォンがとても自由になったと感じる。

 狭い家だが部屋の中を移動する時にスマホだけ手軽に持っていき、再びチャージャーの上におけば充電してくれるという感覚がいい。デスク、キッチン、ベッドの横などスマートフォンを使ういくつかの場所に置いておけば、使う人が多いほどメリットがありそうだ。コースターのようなチャージャーの上に乗せられた我がスマホも心なしかうれしそうに見える。

 仕様はワイヤレス充電の標準である「Qi」に対応した5W出力タイプ。私の端末の場合、1時間15分ぐらいで30%充電できる。置く場所も常識的な置き方ならなんら問題なく充電できるし、電力供給も安定している。もちろん市場には充電速度がもっと高速なものも出ているし、形状的にも立てかけるタイプなどが出ており、ベーシックなものと言える。

Qi規格はすでに登場から10年
iPhoneの威力か、分裂していた規格はQiに集約へ

 スマートフォンなどで主力のQi仕様が立ち上がったのは2008年、母体はWireless Power Consortium(WPC)という業界団体だ。

 早期にQi規格を採用してワイヤレス充電が可能なスマートフォンを出したのは、当時Microsoft傘下だったNokiaだ。Windows Phone 8を搭載した「Nokia Lumia 920」などでQiベースのワイヤレス充電機能を搭載。枕というか座布団のようなFatboyのチャージャーが懐かしい。日本でもドコモが「おくだけ充電」の名称で普及を図り、当初はパナソニック、富士通、シャープなどが対応端末をリリースした。

 Androidの雄である、Samsungは2013年の「Galaxy S4」でQiワイヤレス充電機能をオプションでサポート(Qiに対応したカバーとチャージャーをキットとして別売。日本向け機種ではFeliCa対応のために非対応)した。2015年に登場した「Galaxy S6」ではデフォルトで搭載となった。最近では、主要Androidメーカーのフラッグシップ機では標準機能となりつつある。

 Appleも2017年の「iPhone 8」「iPhone X」でワイヤレス充電を標準搭載。Qi仕様のチャージャーでも充電が可能だ。Apple Watchも一緒に置いてワイヤレス充電ができるチャージャー「Air Power」のリリースが待たれている。

 ワイヤレス充電が普及する上で課題となるのはどこまで行っても、専用のチャージャーが必要なこと。Nokiaは当初、コーヒーチェーンなどと提携して広めていくとしていたが、あれから5年以上が経過しても、公共の場でワイヤレス充電ができるという場所はまだまだ少ない。

 Starbucksは2014年にPowermatと提携し、一部の店舗でワイヤレスチャージサービスを提供している。なお、Powermatが参画する「AirFuel」はQiと対立する規格という位置付けだったが、iPhoneがQiに対応した後に、WPC陣営に参加し、互換性を確保することになった。なお、AirFuelはAlliance for Wireless Power(A4WP)とPower Matters Alliance(PMA)が合体しており、最初は乱立していた規格が最終的にQiに統合されていった流れとなったと言える。

分立していた規格が統合されたことで、店舗や公共のスペースにチャージャーが置かれるケースも増えるはず。ただ速度面はまだ課題があるとも言えるだろう

 PowermatのワイヤレスチャージャーはStarbucks、英ヒースロー空港など世界各地にあり、QiのWPCのサイトでも、北京など中国の一部の空港、McDonaldsなどのファストフードやコーヒーチェーンなどにワイヤレス充電ステーションがあるとしている。

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