5G競争でも重要な役割を果たす、5G未対応のアップルiPhone XS

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2018年09月26日 10時00分

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iPhone XSはiPhone XRと異なり、ギガビットLTEをサポートしています

 日本や米国では9月21日に、iPhone XSが発売されました。より高額なiPhone XS Maxは米国で1099ドル~、日本でも税抜12万4800円~という金額がつけられました。

2年縛り、4年縛りをより規制するなら
米国製品への妨害と受け取られる可能性もありえる?

 Tim Cook CEOは、キャリアの分割プランやアップグレードプランを使えば、1日1ドルで1000ドルのiPhoneを利用できると米国の朝のニュース番組で説明しました。しかし日本では、そうした分割・割引価格の前提となる“2年縛り”“4年縛り”に対して行政から厳しい批判が飛んでいます。

 ユーザーが受けられるサービスや結果は、米国も日本も大きく変わらないんですけれどもね。米国の場合、料金プラン、端末の割賦やリースが別立てで提供されている点がより明確に表現されているからでしょうか。

 結果として、日本のユーザーがiPhone XS Maxにさらに手が届きにくくなるとすれば、日本の行政による米国製品の妨害と取られるかもしれない、というのは考えすぎでしょうか。米国の貿易問題の是正は本気のようですので。

iPhone XSの使用で感じた2つのポイント

 iPhone XS、iPhone XS Maxを先行して試し、レビューもASCII.jpでお届けしました。iPhone XS Maxに限らず、名前に関してはちょっとまだ個人的には混乱中です。

 発表会の場で、「iPhone XS」の「S」の表記は大文字ということでAppleに確認しましたが、レビュー機には堂々と「iPhone Xs」と書かれており、AppleのウェブサイトにあるiPhoneの製品ページでも「iPhone Xs」との表記が見られます。どちらなんでしょうか……。

 そんなスペックシートの中で、やはり目が行くのがワイヤレス機能の部分です。iPhoneもスマートフォン、携帯電話なので。そこで2点気になったのが、「NFC機能」と「LTEのバンド71」でした。

 まずNFCについては、2017年モデルにおいて、世界中で販売されるモデルがNFC type A/B/F(Felica)をサポートし、米国で購入したiPhoneを使って、日本でSuicaなどを利用可能となっています。さらに、日本でiPhone上のSuicaを用いる上で非常に重要な「予備電源」についても、世界中で販売されるiPhoneに搭載されました。

 米国のiPhoneの製品ページでも「Express Cards with power reserve」という機能を確認することができます。この機能は、iPhone本体のバッテリーがなくなっても、予備電源で数時間はSuicaを使い続けられる仕組みで、スマートフォン上でSuicaを利用する上では最も重要な機能と言えます。

 Express Cardsとは、Apple PayでSuicaを利用する際、生体認証をしなくても利用できるようにする仕組みで、改札を1秒以内に通過する日本の事情に合わせた仕様です。その仕組みを活用した「学生証」機能を米国で立ち上げますが、学生証もSuica同様に電池が切れてからしばらくは利用できるそうです。

米国版のiPhone XSでは、米国で始まる
電波が飛びやすい600MHz帯のバンド71に対応

 iPhone XSのiPhone XRに対するメリットは、有機ELディスプレイで解像度がより高いこと、6.5インチという大画面、もしくはもう少しコンパクトな5.8インチが選べること、望遠カメラがあること、そして4x4 MIMOをサポートしギガビットLTEに対応する事です。

 そのため、iPhone XSにはフレームの上下に新たなアンテナラインが追加され、底面のスピーカーとマイクの穴は非対称となってしまいました。これもギガのためです。

4x4MIMOをサポートするため、iPhone XSシリーズではフレームのアンテナラインが増えている

 しかしスペック表で新しい項目として、バンド71への対応があります。これはT-Mobileがオークションで競り落とした600MHzの新しいLTE向け帯域のことです(https://www.t-mobile.com/news/600-mhz-update-puerto-rico)。

 T-Mobileのウェブサイトでも、iPhone XSシリーズが600MHz帯域をサポートしていることが確認できます(https://www.t-mobile.com/coverage/coverage-phones-700)。

 同社では700MHz帯域とともに、これを「Extended Range LTE」と呼んでいます。日本では700MHz帯域のLTEバンド28が用いられていますが、バンド71はさらに低い周波数帯域になります。

 T-MobileはSprintを抜いて米3位の携帯電話ネットワークに成長し、メインブランドは月額料金制(Post-pay)のユーザーを集めながら、それまで強かったプリペイドを「○○ by T-Mobile」というブランドのMVNOで展開し、勢力を拡大しています。

 しかし依然としてVerizon、AT&Tではエリアや加入者数、投資能力の面で遅れを取っており、より遠くまで届く600MHz帯域の活用は、T-Mobileにとって非常に重要な武器になるのです。

600MHzの基地局は5Gに対応できる?

 T-Mobileが今投資している600MHzのエリアは、現在の4G LTEのサービス充実だけでなく、5Gの展開にも活用されるそうです。T-Mobileによると、モバイル環境での5Gを2019年からスタートするそうです。

 これまで5Gはより高い周波数を活用して、これまでの10倍以上の高速通信を実現しようというアイディアでした。しかし超高速通信が可能なエリアは限られ、これまでのLTE通信とは異なる使い勝手が想定されています。

 T-Mobileもこの高周波数帯の5Gに取り組んでいます。その一方で、新たに獲得した600MHz帯域でも5G通信を展開することで、限られた場所以外でも、これまでのLTEより高速な通信を米国の各所のより広いエリアで実現しようとしています。

 またT-Mobileは第4位のSprintとの合併を目指しています。iPhoneの大前提となる米国の通信業界の変化は、Appleが今後、iPhoneにおいてどんな通信機能とサービスを盛りこんでいくのかを測る上でも重要な視点となっているのです。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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