Netflixスマホ戦略 驚きの舞台裏

文●山口健太

2018年10月02日 09時00分

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 米Netflix本社で現地時間9月24日に開かれたモバイル技術の説明会「Mobile Labs Day 2018」に参加してきました。Netflix本社はもちろんサンノゼを訪れるのも初めてということもあり、なかなか興味深い体験になりました。シリコンバレーまで行って視察だけで終わるわけにもいかないので、面白いポイントを紹介していきます。

■日本では特に多いスマホでの動画視聴

 1997年にDVDレンタル業から出発したNetflixは、2007年に動画配信に参入。しばらくは米国を中心に展開していたものの、2015年に日本に上陸、2016年に「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の配信が始まった頃に筆者も個人的に契約しました。

 料金プランは定額で見放題となっており、Spotifyのような広告つきの無料プランは提供していません。この点をプロダクト担当副社長のTodd Yellin氏に聞いてみたところ、「ユーザーのデータを広告には使っていない。(広告付きの無料プランは)やらないことで成功してきた」と答えてくれました。

Netflix プロダクト担当バイスプレジデントのTodd Yellin氏

 無料体験はあるものの、基本的にNetflixは有料プランのみで、世界190ヵ国に1億3000万人の会員を抱えるまでに成長しています。全体の半数以上を米国以外の会員が占めており、海外展開にも成功しています。特に強いのがオリジナル作品で、8月に実施した値上げ後もユーザーが離れる気配はありません。

 最近の動向で興味深いのが、スマホでの視聴が増えた点です。特に日本は他国と比べてスマホの比率が高いとのこと。全世界ではテレビでの視聴が64%、スマホでの視聴が13%ですが、日本ではテレビが44%、スマホが28%となっています。

 映像作品はリビングの大型テレビで見た方が迫力がありそうに思えますが、スマホの利点は自分だけで楽しめることです。コンテンツによっても異なり、映画は家族で、アニメは1人で見るといった傾向もあり、多様な楽しみ方を支える上で、スマホ対応の重要性が高まっているようです。

 モバイルの小さな画面では「タイトル画像」がより重要とのこと。Netflixではタイトル画像を作成するエキスパートを雇っており、同じ作品でも複数のタイトル画像を用意して、クリック率を比較しているという舞台裏を明かしました。

同じ作品でもタイトル画像によってクリック率が異なる

■独自の配信ネットワークやテスト環境も自前で整備

 Netflix本社のさまざまな施設も報道関係者向けに公開されました。共通しているのはインフラや開発環境をとにかく自前で持っているという点です。

 インフラ面では、テレビの地上波放送と違い、インターネット回線で動画データを転送する必要があります。そこでNetflixは独自の配信ネットワーク(CDN)である「Open Connect」を構築。全世界に動画のコピーを置き、ユーザーのプロバイダー(ISP)と直結してトラフィックを最小化しているとのことでした。

 また、動画自体のサイズもどんどん小さくなっています。エンコード技術はタイトルごと、さらに作品内でも動きのあるシーンとないシーンで最適化しており、次世代コーデック「AV1」(AOMedia Video 1)との組み合わせによって、200kbps程度の低速な通信速度でも一定品質のHD動画を再生できるとのこと。

 これくらいまで小さくなれば、国内のMVNOが安価に提供する使い放題プランでも動画を楽しめるようになり、スマホでの視聴がさらに容易になりそうです。

AV1コーデックによるHD動画のデモ。帯域幅はわずか207kbps

 モバイル端末のテストラボも公開してくれました。冷却ファンを備えたラックにスマートフォンやタブレットを満載し、自動テストを実行。発生したエラーはオフィスのモニターに表示され、すぐに確認できる体制になっていました。

モバイル端末のテストラボ。他にもタブレットやApple TVなどが大量に稼働していた

 ほかにもマジックミラーを備えたユーザー調査用の部屋もあり、機能の改善に役立てているとのこと。広大なキャンパスに多数の開発施設を自前で持ち、サービスの改善に日夜取り組むという、グローバルIT企業の強みを垣間見ることができました。

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