楽天キャリア参入 つながりやすさが課題

文●石川温

2018年11月12日 09時00分

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 ソフトバンクは11月9日、携帯電話の基地局にネットワークカメラを設置し、映像を配信する法人向けサービス「スマート情報カメラ」を2019年春から開始すると発表した。

 記者会見で、ソフトバンク今井康之副社長は「ソフトバンクには全国に20万局以上の基地局がある。基地局にはネットワークと電源が来ている。放送業界や地方自治体などに活用してもらえるのではないか」と新サービスの抱負を語った。

 これまで基地局は単なる電波を飛ばす施設としての役割しかなかったが、ネットワークカメラを組み合わせることで新たなビジネスが生まれようとしているわけだ。地震や津波、台風など全国で起きている災害の状況がリアルタイムで把握できるようになれば、これまで天災によって起きた悲劇を繰り返さずに済むようになるかもしれない。

  大手3キャリアはいずれも全国で20万前後の基地局を稼働させている。

 住宅街のみならず、オフィスや地下街、工業地帯、観光地、山間部、離島など、今では圏外の場所を見つけるのが難しいほど、全国にネットワークが張り巡らされている。日本でこれほどまでに電波を浸透させようと思うと、20万近い基地局が必要になるわけだ。

 ソフトバンクがスマート情報カメラを発表した前日の11月8日、楽天は決算会見を開いていた。

●いまは基地局の要地交渉中

 楽天は2019年10月、第4のキャリアとして携帯電話事業に参入する。

 携帯電話事業のトップである楽天モバイルネットワーク山田善久社長は「2019年10月のサービス開始に向け、順調に準備を進めている」と胸を張った。

 楽天は当初6000億円の設備投資で携帯電話事業に参入すると計画していたが、決算会見ではあらためて6000億円を下回る額で実現できるとアピールした。

 山田善久社長は「二子玉川のオフィスをワンフロア使い、数百名がビルの上など基地局の用地交渉を行っている。全社を挙げて取り組んでいる」と語った。 2019年10月のサービス開始に向け、急ピッチで作業を進めているようだ。

 この会見の1週間前、KDDIと楽天はローミング提携を発表している。

 サービス開始当初、東京23区、名古屋市、大阪市は楽天が自社でネットワークを構築するが、それ以外のエリアはKDDIのネットワークに接続するというものだ。

●楽天KDDI提携は好相性

 そもそも楽天のローミングパートナーはNTTドコモが本命視されていたが、NTTドコモの吉澤和弘社長は最初から難色を示していた。そんな中、KDDIが楽天の物流とQRコード決済プラットフォームを含めた提携に持ち込んだ格好だ。

 業界関係者の間では「たしかに技術的にもKDDIと楽天の相性は3キャリアの中で一番いいかもしれない。KDDIは4Gがメインであり、音声もVoLTEだ。楽天は3Gネットワークを構築せず、当面は4G一本でいく。NTTドコモもソフトバンクも音声は3Gに頼るところもある。4Gがメインという点ではKDDIと楽天はベストマッチだ」と評価されている。

 ローミング契約により、楽天は当面、東京23区、名古屋、大阪に集中してネットワーク工事をすればよくなった。KDDIとのローミング契約は総務省に計画書として提出した2026年3月末までとなっている。楽天はあと7年半かけて全国的に基地局を整備すればいいのだ。

 ただ1つ気になるのが、楽天が計画している基地局数だ。

●基地局は他キャリアより圧倒的に少ない

 決算会見でも紹介されたが、楽天は総務省に提出した書類で、2020年3月までに3422局、2026年3月までに2万7397局という計画をかかげている。

 一般的に聞けば「全国に2万7397局もつくるなんてすごい」と思うが、ソフトバンクが20万局以上を敷設して全国でネットワークサービスを提供しているという事実と比較すると、いかに楽天の数が少ないかというのがよくわかる。

  ただソフトバンクの場合は900MHzというプラチナバンドもあれば、1.7GHzや3.5GHzとなった周波数もある。楽天は1.7GHzのみであるため、一概に比較できるものではない。

 ちなみに2.6GHz帯を使うUQコミュニケーションズは2017年2月現在、WiMAX2+の基地局を全国3万局でサービスを提供している。

 業界関係者は「都内にあるビルの屋上はすでに基地局でいっぱいで、新たに場所を探すのは既存キャリアでも難しい。楽天がどのように基地局の要地を確保していくのか、お手並み拝見といったところ」と語る。

 少ない設備投資額と基地局数で、いかに大手3キャリアに戦いを挑むのか。東京23区、名古屋市、大阪市という大都市でどれだけつながるネットワークを構築できるかが、楽天にとっての最初の課題と言えそうだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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