ファーウェイ排除 日本にも深刻な影響のおそれ

文●石川温

2018年12月13日 16時00分

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 テレビや新聞がこぞって中国メーカーであるファーウェイを取り上げている。イランとの金融取引を禁じた米国の制裁を回避するための仕組みづくりに関わった疑いがあるとして、同社の副会長兼CFOがカナダ当局に逮捕されたのだ。

 アメリカは、国家安全保障に問題があるとしてファーウェイ製通信機器の利用を規制している。「基地局やスマホにおいて、データが勝手に抜かれ中国に送られているのではないか」という疑惑を抱いているようだ。ただ、実際に、ファーウェイがそのようなことをしていたという事実は存在しない。

 ここ数年、日本でもファーウェイのブランドが認知されるようになってきた。SIMフリースマホにおいて、カメラ性能が高く、コストパフォーマンスに優れているということもあり、日本市場におけるSIMフリースマホシェアは1位を誇る。去年から今年にかけて、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクがラインナップのひとつとして採用するなど、キャリアが認める品質を確保できるまでになっている。

●日本の携帯設備は見直しを迫られる

 ファーウェイは、スマホなどの端末事業と、キャリアに基地局などを納入するネットワーク事業の2つが主力となる。

 特にネットワーク事業では、フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソンを抜き、世界トップシェアを誇る。毎年2月にスペイン・バルセロナで開催されている世界最大の通信関連イベント「Mobile World Congress」では、巨大なブースを出展し、世界中のキャリア関係者をもてなしているのが印象的だ。

 日本では、ソフトバンクだけがファーウェイのネットワーク機器を採用している。現在、サービスが提供されている4Gの基地局などがファーウェイ製だが、2019年にプレサービスが始まろうとしている5Gでも、ファーウェイと実証実験を実施しており、導入は確実視されていた。

 しかし、今回のような騒動となったことで、日本政府が米国政府に同調し、ファーウェイ製通信機器の導入に待ったをかけるような発言をしはじめた。発言を受けてソフトバンクは「日本政府の方針を注視している。当社は政府の方針に準拠する方向だが、今後については様々な検討をしていく」とコメント。導入を見送ると決まったわけではないとしながらも、政府の意向に従うのは間違いないさそうだ。

 これから設置を始める5Gのネットワークだけでなく、すでに稼働している4Gのネットワークまで、ファーウェイ製から他社製に入れ替えるとなると、莫大な費用がかかってしまう。一方で日本政府から「4割値下げしろ」とも言われているだけに、値下げをしつつ、新規に5Gに設備投資するだけでなく、4Gの設備を入れ替えるという投資を両立するのは困難だろう。

 ソフトバンクとしては、なんとか4G設備の見直しだけは避けたいはずだ。

●スマホの開発にも暗雲がたちこめる

 もうひとつの主力であるスマホ事業は、世界的なシェアで見れば、第2位だったアップルを抜き、世界1位のサムスン電子に続く、第2位のポジションに君臨している。背面に3つのカメラを載せたHUAWEI P20 Pro、HUAWEI Mate20 Proが世界的なヒットとなり、サムスン電子の背中が見えはじめたと言えるだろう。

ファーウェイ・ジャパン発表会で

 今年2月、インタビューに応じた端末事業のトップであるリチャード・ユー氏は「1位になるには4~5年かかりそうだ」と語ったが、本音としては4~5年もかけずにトップを獲るつもりだろう。

リチャード・ユー氏。ファーウェイ端末事業のトップ

 ファーウェイスマホの強みは、会社自体が通信を専門とする企業である点だという。リチャード・ユー氏は「基地局などの無線ネットワークを手がけているだけでなく、チップセットやモデムチップといった通信用半導体も自社で開発している。これでスマホ本体の開発で優位な立場に立てる」と話す。

 2018年4月、米国商務省傘下の産業安全保障局は、もう1つの中国メーカーであるZTEと企業との取引を規制する制裁を課した。制裁により、ZTEと米国企業は電話やメールなどの連絡すら取れなくなってしまった。

 以来、ZTEはグーグルとの取引ができなくなり、Android OSのアップデートなども停滞。世界中のユーザーに混乱を招いた。

 もし今後、今回の逮捕劇をきっかけにファーウェイがグーグルとの取引を規制されれば、世界第2位という巨大なシェアを持つだけに、ZTE時以上に大きな混乱になることは必至だ。

●ソニーやパナソニックなどにも影響が出る

 日本においては、たとえばNTTドコモのタブレット「d-tab」なども、実はファーウェイ製だ。NTTドコモやKDDI、UQモバイル、ソフトバンクが展開しているモバイルWi-Fiルーターも、ファーウェイ製が多い。「自分はファーウェイのスマホを使っていないから関係ない」という人でも、ファーウェイ製品を持っている可能性は充分にあるのだ。

 ファーウェイが世界的にスマホやタブレット、モバイルWi-Fiルーターを売れなくなってしまうと、日本企業にも大打撃を与える可能性が出てくる。

 ファーウェイの日本・韓国リージョンプレジデント、呉波氏によれば、「ファーウェイが日本で調達した端末部品は、2018年、はじめて60億ドル(約6780億円)に達する見込みだ。これは日本から中国へのすべての産業における総輸出額の4%にあたる」という。

 リチャード・ユー氏は「カメラのセンサーとバッテリーはソニー、ディスプレーはジャパンディスプレイから調達している。無線部分も日本製で、パナソニックや村田製作所、京セラにお世話になっている」と語る。

 ファーウェイの問題は、アメリカと中国との間の貿易戦争のように見えるが、実は日本にも深刻な経済的影響が出てくる恐れがあるのだ。

●事態はしばらく平行線か

 今年1月、アメリカのキャリアがファーウェイのスマホを導入しようとしたが、直前になってドタキャンされた。これも一部報道によると、米国政府が情報漏洩リスクを危惧して待ったをかけたといわれている。

 そもそも、ファーウェイ製の通信機器は本当に危険なのか。なぜ、アメリカはここまでファーウェイのことを敵視するのか。

 リチャード・ユー氏は「アメリカの競合企業が恐れをなし、政治力を使って我々の参入を阻止しているのだろう。既に171の国と地域で事業を展開しているが、アメリカだけで問題視されている。実際に問題があるなら、明確に指摘してほしい。そうでないと反論のしようがない」と憤る。

 同氏は「我々は本社こそ中国にあるが、グローバル企業だ。年間売上の60%以上が中国以外からもたらされている。開発拠点やマネジメントも世界各国に分散している。中国の政治団体や政府と近いということはない。各国でビジネスを展開しているが、その国の文化、法律にのっとって活動している」とも力説する。

 騒動をおさめるには、アメリカが何としてもファーウェイが情報漏洩をしているという事実を証明する必要があるだろう。一方、ファーウェイは事実無根だとアピールしつづけなくてはならず、しばらく平行線をたどることになりそうだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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