沖縄と九州を東シナ海経由で結ぶ新たな海底ケーブル (1/2)

文●中山智 編集● ASCII編集部

2019年03月02日 09時00分

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 2月18日、沖縄セルラーは那覇にて「沖縄〜九州間 新海底ケーブルの建設」に関する記者説明会を開催。KDDIの協力のもと、既設の太平洋ルート2本に加えて、東シナ海を通る新たなルートの建設を発表した。

海底の光ケーブルが通信インフラを支える

 今回敷設されるのは、鹿児島県日置市から沖縄県名護市まで、東シナ海の海底を通る約760kmのルート。回線容量は80Tbpsで運用開始時期は2020年4月を予定している。

東側の2ルートにプラスして、東側に新しいルートを敷設する

新ルートの概要

通信容量の拡大にも災害の備えにも必要な
沖縄と本土間の新たな海底ケーブル

 発表会には、沖縄セルラーの常務取締役技術本部長 山森誠司氏が登壇。まず沖縄セルラーの県内での取り組みについて「会社の考え方として地元に全力。常日頃から沖縄のためにやっていきたい」と解説。大きな島にしか高校がない沖縄の教育事情に合わせて、進学で離島を離れる生徒に奨学金やケータイを提供する「離島ケータイ奨学金」、ハウス栽培でイチゴを生産する「美ら島ベリー」といった活動が紹介された。

発表会に登壇した沖縄セルラー 常務取締役技術本部長 山森誠司氏

沖縄セルラーの県内での取り組み

 なかでも沖縄セルラーが注力しているのが安全対策。台風時の復旧作業が迅速にできるようにするなどの目的で、防災訓練や海上保安庁との合同訓練を実施している。3本目となる今回の海底ケーブル敷設もそんな安全対策の一環と言える。

防災訓練など安全対策を重要視している

 既設の海底ケーブルは、宮崎県宮崎市から沖縄県八重瀬町をつなぐルートで、こちらは2本敷設されている。現在の問題点として、地震や台風などの自然災害、特に南海トラフ地震発生時に備えた本土向け通信の対策が急務。また5G時代になると、トラフィックも増大するため、通信量に見合ったネットワーク構築も必要となっている。

免震構造のデーターセンタービルも建設中で、沖縄県内でもループ化したネットワーク構成となっている

 山森氏は「東日本大震災も発生4日後には現地に入って状況を見ており、悲惨さを肌で感じている。これが万が一沖縄で起こったらと。通信インフラは重要で、これが絶たれてしまうと、物資の供給や救助活動に障害が出てしまう」と、災害などの緊急時においても通信インフラを維持することの重要性を説明。「沖縄が完全孤立することがないように重要な生活インフラである通信を守っていきたい」と語った。

 続いて今回の敷設工事の協力とバックアップを担当するKDDIから、理事ネットワーク技術本部長の斎藤重成氏が登壇。斎藤氏は「現在海外とのインターネット接続は海底ケーブルと衛星通信の2つが主流だが、海底ケーブル経由が99%以上。容量的には圧倒的」と重要なインフラであることを解説。KDDIの海底ケーブルの取り組みは55年にもおよび、国際電話回線を開通させ、池田首相とジョンソン大統領の電話会談を実現させている。

KDDI 理事ネットワーク技術本部長 斎藤重成氏

KDDIの海底ケーブルの歴史は55年におよぶ

 現在の海底ケーブル全体を見ると、ルートとしては北米、ロシア、アジアの3つに分かれているという。安全性を考慮して、ルートダイバシティを目指しており、国内も8地域、11局の海底線中継所を運営している。今回の工事で鹿児島と沖縄に新たに2つの海底線中継所が誕生することになる。

現在の国際海底ケーブルの主なルート

国内海底ケーブルのルート

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