MWCの話題の中心はファーウェイ、楽天の可能性も注目が集まる

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2019年03月14日 17時00分

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MWCで話題をさらったHuawei、楽天が仕掛ける仮想化のトレンド

 今年もスペイン・バルセロナでMWCが開催された。年末からヒートアップしている米中の貿易戦争の渦中にあり、大きな争点となっているファーウェイの話題抜きには語れないMWCとなった。来場者は10万人超、経済効果は4億7300万ユーロ(約600億円)という4日間のお祭りの感想をまとめたい。

コンシューマー向け製品もそうだが、ネットワーク機器の世界ではファーウェイの存在感はやはり大きい

今年のMWCは5G、折りたたみ式がキーワード

 今年はいくつかの面で話題が豊富なイベントだった。表の主役であるスマートフォンでは、久しぶりに新しいトレンドがあった。5Gと折りたたみ型だ。

 端末ベンダーがひしめくホール3では、ファーウェイとサムスンのブースが向かい合っており(昨年と同じ)、ともにガラスケースに入れた折りたたみ型のスマートフォンを披露した。サムスンがMWCの前週に米サンフランシスコでGalaxy Foldを発表、その4日後にファーウェイがMWC前日のバルセロナでHUAWEI Mate Xを発表したという形だ。

 目立っていたのは頂点を争う2社だけではない。今年は欧州進出に力を入れているシャオミがブースを拡大し、スマートフォンだけでなく電動スクーターから空気清浄機といった生活関連製品などのシャオミワールドをアピールしたのも印象的だった。同社もMWC前日に発表会を開催して、5Gスマートフォン「Mi MIX 3 5G」を発表している。折りたたみ型については「サムスンやファーウェイより早く」(同社広報)、1月にコンセプト動画を公開している。

 NokiaブランドのHMD Globalは「PureView」ブランドを復活させた「Nokia 9 PureView」を発表、いきなりの5眼だ。HMDはスペック競争には参加しない戦略で、先頭グループに入って5Gや折りたたみ型を投入するつもりはないという様子。

その外観でまず驚かされる「Nokia 9 PureView」

ファーウェイは30社、エリクソンは14社と5G契約

 端末を支えるネットワークは、MWCにおける影の主役だ。Nokiaは会期前日、エリクソンは初日朝、ファーウェイは初日午後にネットワーク事業のプレス向けイベントを開いた。製品発表という点では、5G機器は昨年の方がラッシュ。今年は4Gとの共存のための技術だったり、5Gの実装やオペレーションなどがメインだったように思う。

 目下の注目は言うまでもなくファーウェイだ。ライバルの窮地に対し、エリクソンのBörje Ekholm CEOは直接言及せず、「不確実性が生まれている」ことは認めた。合わせて、自社は5Gの準備ができているとアピール。NokiaのRajeev Suri CEOは、セキュリティ重視の姿勢を見せた模様だ。

 当のファーウェイは輪番会長の郭平(Guo Ping)氏が基調講演に登場。真っ向から米国政府の姿勢に反論した。詳しくは別記事を参照いただくとして、自社の懸念の払拭を図るだけでなく、米国政府の監視プログラム「PRISM」を持ち出し、「セキュリティのためにファーウェイを選んで」とアピールした。

 会場は暖かく迎えていたが、PRISMの時は苦笑いが起こった。なお、ファーウェイは3人が交代で輪番会長を務めるが、MWCの基調講演枠はほぼ毎年確保しており、基調講演への登場自体は珍しいことではない。

 3社のブースはどこも盛況。エリクソンはVerizon、Sprintなど米国の通信事業者と進める5G実装での技術を展示し、ファーウェイは韓国LG+の5G実装を展示。Ericssonは「5Gの商用契約が14社に」と語っており、ファーウェイは「30社」とのことだ。この中には、3(Three)、Elisa、TIM、O2など欧州の通信事業者のロゴもあった。

楽天が革命を狙う仮想化技術による無線ネットワーク
もし成功した場合は業界のビジネスに大きな変化が起きる

 今年はもう一つの注目の動きがあった。楽天だ。

 楽天が今秋に通信事業者(MNO)として参入することは周知の通りだ。楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は2年連続でMWCの基調講演のステージを踏んだ(MWCは4日間の会期中、連日複数の基調講演枠があり、2年連続での登場は特段珍しくはない)。楽天は地元のサッカーチームであるF.C.バルセロナのスポンサー活動もあり、社名の知名度はそこそこのようだが、三木谷氏のスピーチは今年も楽天がどういう会社なのかからスタートした。

三木谷氏が率いる楽天の新しいネットワーク構成には業界関係者も興味津々

 三木谷氏の基調講演のキモは、同社が構築中というモバイルネットワークについて。それによると、仮想化をフル活用した全く新しいアーキテクチャで、これまでのようなハードとソフトを一体化した高価なネットワーク機器は使わないという。

 実際に展示スペースにはCOTSサーバー、自分たちで組み立てたというインドアのセルなどが置いてあり、現時点で楽天のネットワークにはNokiaは入っているが、エリクソン、ファーウェイは入っていない。仕掛け役はCTOを務めるTareq Amin氏。インドのJioで数ヵ月でLTEネットワークを構築したという経歴を持つ。

 6000億円でネットワークを作るという三木谷氏の決断があって白羽の矢がたったという経緯のようだ。Amin氏は楽天なら自分がやりたかった完全仮想化のネットワーク構築という夢を実現できると意気込む。周囲にもこれがやりたかったという人が集まってきていることを感じた。

 他の国の事業者も楽天の動きに高い関心を寄せているようだ。三木谷氏は得意顔で「世界の最大手級の通信事業者のトップと会食をした」と語っていたが、このコストで、この技術で、本当にネットワークを構築できるのか、と楽天のブースには技術者が多く来ていた。もし楽天がそのことを実証し、他の事業者も仮想化に舵を切り始めると、今の通信ネットワーク機器のビジネスが大きく変わる。なお、楽天が仮想化パートナーで選んだのはAltiostar。数年前まで無名に等しかった米国のベンチャー企業だ。

 ちなみに今年もMWC公式のストラップはファーウェイ。来場者の多くは、レジスト時にもらう赤いストラップを来場者は首から下げていた。中国企業抜きには語れない業界になって久しいが、ネットワーク分野はひょっとするとまた次の大きな転換点に差し掛かりつつあるのかもしれない。

 キーワードは予想通りの”5G”だが、単なる世代交代やこれまでのベンダー争いではないところで地殻変動が起こりつつあるのかもしれない――そんな印象が強いMWCだった。

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