au新料金プランの疑問 担当者に聞く

文●石川温

2019年05月15日 09時00分

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 KDDIが新料金プランを発表した。

 発表会では随所に「4割値下げ」をアピール。菅官房長官の「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある」発言に応えた格好だ。

 今回KDDIが発表した料金プランを見ると、4月に発表されたNTTドコモの新料金プランを意識しつつ、通信容量制限のない「auデータMAXプラン」で、動画・SNS放題を売りにするソフトバンク「ウルトラギガモンスター+」にも対抗しているように見える。

 はたして、どんな考えでKDDIは新料金プランと端末ラインナップを作ったのか。担当者に話を聞いた。

■キャラクターを立たせる必要があった

 昨年8月の菅官房長官発言から、携帯電話業界には「値下げ圧力」が働いているようだ。政府の意向に応えるようにNTTドコモが4月に新料金プラン「ギガホ」「ギガホライト」を発表。5月13日にはKDDIが3種類の料金プランを発表した。

 新料金プラン担当のKDDIコンシューマ事業本部コンシューマ事業企画本部・長谷川渡次世代ビジネス企画部長は、

 「料金については常にニーズに対応するための改善を続けている。今回は特に『世帯における通信料金負担の軽減』という文脈がある。そのため、家族割プラスを導入し、1GBで1980円がずっと続くようにした。しかし、それだけやっただけでは面白みがない。やはり、auとしては、エンタメでスマホを使ってもらうところを追求するというキャラクターを立たせる必要がある」

 「そこで、5G時代を見据えた料金プランとしてauデータMAXを用意した。さらに7GBでSNSのゼロレーティングを導入するなど、検討を重ね、ようやくこのプランにたどり着いた」と話す。

 KDDIが新しい料金プランをプランを準備するには、相当な期間を要している。当然、その間にはNTTドコモの新料金プラン発表があったはずだ。KDDIとしてはライバルの新料金プランをどのように見ていたのか。

■ドコモの新料金プランはどう見た?

 長谷川氏は「(ドコモのプランは)冷静に受け止めた。発表を受けて、従量制の階段をどうしようかという話になった。auのプランは1GB、2GB、3GB、5GB、20GBなので、そこに対して競争力のあるものをしていくか検討した。(ドコモは)データMAXまで踏み込んでいない。我々の20GB、25GBの商品力が強いと判断しているので、そことは違うものを打ち出さないといけないという方向性が定まった」と語る。

 一方で、NTTドコモの新料金は、家族としての括りを3人以上、さらにギガホライトに関しては7GB上限が設定されている。同じく、KDDIの新料金プランも家族は3人以上でそれぞれ1000円引き、7GBの定額制でSNS放題がつくプランがあるなど、どことなくNTTドコモを意識した数字の設定をしているように見える。

 「3人という数字は、一般的な世帯の数の調査データもあるし、スマートバリューで提供している実績からも無理なく組んでもらえる人数だという判断。7GBは、過去に提供したプランである『LTEフラット』がユーザーに評価されており、4割値下げを実感して移行しやすいプランにしようと7GBに設定した」

 実際、かなり昔のプランであるLTEフラットのままで契約し続けているユーザーが相当数いるという。そうしたユーザーが新料金プランに切り替えることで、かなりお得を実感できるというわけだ。

■使い放題でネットワークは遅くならないか?

 ヘビーユーザーからすると、今回、発表された「auデータMAXプラン」はデータ容量制限がなく、使い放題となる魅力的なプランだ。料金設定は8980円と高額だが、それでも容量制限を気にすることなく使えるのはストレスフリーで快適そうだ。

 しかし、気になるのが、「使い放題を提供して、キャリアのネットワークは大丈夫なのか」という点だ。使い放題を提供したのはいいが、混雑してネットワークが遅くなったりしないか、他人事ながら心配になってくる。

 そんな不安を長谷川氏にぶつけたところ「大丈夫じゃないとサービス提供できない。そのあたりはきちんと分析している」と胸を張った。

 KDDIでは、いくつかの過去の実績を元に「使い放題を提供しても大丈夫」と判断しているようだ。

 まず、ひとつが、いま提供している30GBの料金プランだ。このユーザーの利用動向を分析し「使い放題を提供しても大丈夫」と判断。また、使い放題のモバイルWiFiルーターを提供しているが、こちらのユーザー利用状況も分析している。

 さらに「過去、北海道で起きた災害時に、通信の容量制限をかけなかったことがある。そういったデータを踏まえて、これくらいならいけるのではと参考にした部分がある」(長谷川氏)という。

 昨年9月、北海道胆振東部地震が起きた際、KDDIでは北海道に住所があるユーザーに対してデータ通信速度制限解除を実施した。これにより、データ容量の制限がなくなった時に、ユーザーがどれだけスマホを使うのか、サンプルが取れたというのだ。

■突然のテザリング無償化はなぜ?

 もうひとつ、新料金プランで気になったのが「テザリング」の取り扱いだ。

 これまで、KDDIでは一時期キャンペーンで無料だったテザリングを有料オプション化していた。「スマホでもテザリングでも、購入したデータ容量を使いのだから、オプションとして有償化するのは理解に苦しむ」と、ユーザーから反発の声があがっていた。

 今回、新料金プランではテザリングはプランのなかに包含する形となり、無料で使えるようになっている。このKDDIの心変わりは何なのか。

 「これまでは料金プランの設計上、テザリングを料金プランの外に出し、オプション化することで、ベースの料金プラン部分を安く、お求めやすくしたつもりだった。しかし、そういった声が上がっているという事態を真摯に受け止め、今回の新料金プランではプランの中にテザリング料金を入れつつ、全体的に高く見えないように工夫した」(長谷川氏)とのことだ。

■「Pixel 3a」や「Galaxy Fold」は出さないのか?

 KDDIでは今回、新料金プランの発表とともに、夏モデルとして9機種のスマホとケータイを投入するとアナウンスした。

 KDDIではすでに分離プランが導入されているが、端末の割引がなくなったことで「今回もミドルクラスを充実させたラインナップになっている」(KDDI 商品・CS統括本部 山田靖久副統括本部長)という。

 実際のところ、Galaxy A30やHUAWEI P30 Lite Premiumなどのミドルクラスが揃っている。

 一方で気になるのが、先週、グーグルから発表された、Pixel 3aがラインナップには並んでいないという点だ。KDDIでは昨年、Pixel 3が発表された時もNTTドコモとソフトバンクが扱う中、採用を見送っている。KDDIはPixelシリーズを頑なに扱わない気なのだろうか。

 「夏商戦に関しては、今回のラインナップでお客様のニーズを満たせると思っている。確かにPixelのようにグーグルの体験を重視するユーザーもauのなかにはいるのは事実。ただ、Pixel 3aは、KDDIのネットワーク接続試験をクリアしている。そういうお客さんにはSIMフリーのPixel 3aという選択肢がある」(山田氏)とのことだ。

 もうひとつ、見逃せないのが、Galaxyシリーズだ。

 ハイエンドのGalaxy S10+、Galaxy S10、ミドルクラスのGalaxy A30などが揃うが、折りたたみのGlaxy Foldが見当たらない。海外では、メディアに貸し出したGalaxy Foldが壊れまくり、受け付けていた予約が自動キャンセルされた、なんていう話もある。KDDIでGalaxy Foldは扱わないのだろうか。

 「現時点で決まっているものはすべて発表会で披露した。今後、市場の動きによって、新しく出せるものがあれば、別途発表したい。サムスン電子は報道を見る限り、グローバルナンバーワンメーカーとして、一生懸命対応しているのではないか」(山田氏)

 容量無制限で使い放題のauデータMAXプランを思う存分楽しむには、折りたたみで大画面であるGalaxy Foldのようなスマホこそが生きてくる。サムスン電子にはぜひとも頑張ってGalaxy FoldをKDDIで出してもらいたいものだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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