「携帯違約金1000円」の大きな穴

文●石川温

2019年06月24日 09時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 6月18日、総務省の有識者会議でほぼ決定となった携帯電話契約における「解除料1000円」。5月末までは、総務省から「4000〜5000円でどうか」という打診が各キャリアにあったようだが、菅官房長官の「鶴の一声」で強制的に1000円にさせられたようだ。

 総務省としては4000〜5000円で妥協点を探っていたにも関わらず、降って湧いた「1000円」という金額をこじつけるためにインターネットアンケートを実施。

 その結果から無理くり「1000円が妥当」という結果をひねり出したようだ。

 これによって2年間の拘束期間中であっても、解除料1000円を支払えば、解約して、他のキャリアや格安スマホに移行することが可能だ(実際はMNP手数料なども必要)。

 菅官房長官としては、10月に第4のキャリアとして新規参入する楽天を応援するという狙いがあるのだろう。大手3キャリアのユーザーが移行しやすい環境を整備すれば、楽天としては10月からスタートダッシュを決められる。楽天が安価な料金プランを出してくれば、それによって大手3社も対抗プランを出してくることが予想される。そうなれば、菅官房長官が国民に約束していた「携帯電話料金、4割値下げ」も現実味を帯びてくるというわけだ。

 しかし、今回の総務省が提案した案には大きな「穴」が存在する。

●楽天がすぐ有利になるわけではない

 実は、法改正の施行日に、すべてのユーザーの2年縛りがなくなり、解除料が1000円になるというわけではないのだ。ユーザーは現在契約している2年契約が終わってから、ようやく解除料1000円のプランに移行するようになる。

 つまり、10月になったらからといって、すぐにユーザーが解除料1000円を支払って、楽天に移行できるというわけではないのだ。

 楽天関係者は「我々は施行日から解除料が改定されるよう期待していた。しかし、それが叶わないとなると、いままでとあまり変わらないのではないか」と不満を口にした。

 総務省案では「施行日以後の更新(自動更新含む)、条件変更についても、施行日前の条件によることを許容」とある。キャリアは解除料1000円のプランを提供する一方、従来と同じ2年縛りのプランを提供することも不可能ではないのだ。

 ただ、いつでもやめられるプランと、拘束期間のあるプランでは月に170円しか値段の差をつけられないため、2年縛りが明けたあとは、多くの人がいつでもやめられるプランに切り替える可能性がある。しかし、一方で「そんなことも面倒臭い。そのままでいい」という人も一定数いることだろう。

●市場を大混乱させる必要があるのか

 総務省が1000円という数字をひねり出したアンケートでは「乗り換えたい」という思う人が9.9%なのに対して、「乗り換えたいと思わない」と答えた人が52.6%もいた。つまり、過半数の人が乗り換えには興味がなく、今契約しているキャリアで満足しているという事実もある。

 果たして、過半数の人が「乗り換えに興味がない」としているなかで、解除料を1000円にし、6月に新料金プランが始まったばかりにも関わらず、10月にさらに新しい料金プランを作らせて、市場を大混乱させる必要があるのか。

 本当にこれで「わかりやすい料金プラン」が実現するのか。総務省には10月以降「自分たちのやったことが正しかったか」というアンケートをとってもらい、ぜひとも法改正の是非を問う検証作業をしてもらいたいものだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

mobileASCII.jp TOPページへ