アップル今年は「iPhone以外」に注目

文●松村太郎 @taromatsumura

2019年09月04日 09時00分

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 アップルは報道関係者向けに招待状を送り、米国太平洋夏時間9月10日午前10時からイベントを開催することを告知しました。招待状には「By innovation only」というフレーズが添えられ、上から緑、青、黄、赤、紫の5色に塗り分けられたリンゴマークが描かれていました。

 この5色が、というわけではないのですが、この透き通った液体のようなカラーリングは、どこか初代iMacやiBook、あるいはMac OS X初期のアクアのインターフェースの雰囲気を思い起こさせます。そんなノスタルジーを感じるアップルユーザーはほんのわずかで、14億人にも達するユーザーベースの大半が、iPhone以降で開拓してきた新しい世代のアップルユーザーということになるでしょう。

 昨年、2018年のイベントの招待状は黒い背景に、Apple Parkの円盤を表すアイコンがシックなゴールドカラーで描かれ、「Gather round.」というフレーズが添えられていました。このゴールドのカラーは、2017年モデルのiPhone Xに用意されなかったゴールドカラーが追加され、その色味と共通していました。

 そのため、この5色のカラーリングは、iPhoneの新モデルのバリエーションに共通しているのかも、と勘ぐりたくなってきました。

 カラーバリエーションが充実していたのは2018年モデルではiPhone XRでした。日本語の色名でいくと、黒、白、赤、(PRODUCT)RED、黄、青、珊瑚の6色。珊瑚色のコーラルは、オレンジともピンクとも見えるような絶妙な色でした。

 このラインアップと前述の招待状に描かれた5色のカラーリングを比べると、緑と紫が新しい色、もしくは既存の色の入れ替えになるのではないか、と予測することもできます。もちろんやるとするなら、ベーシックな白と黒を残して、ということになると思いますが。

●最大の商機は2020年か

 新型iPhoneは、大抵の場合、かなり早くからモックや中国方面のケースメーカーの先行発売などで外見上の姿はほぼ正確に把握できるようになっています。これによると、サイズやモデル構成はそのままに、上位モデルに3台の背面カメラが配置されるとみられ、カメラの出っ張りは正方形になりそうだ、ということがわかってきました。

 またプロセッサも刷新されるとのことで、パフォーマンスはもちろんですが、結果としてバッテリー持続時間などにもプラスの影響が出ることになると考えられます。ただし2019年モデルのiPhoneのハードウェア的な進化は限定的、という見方も根強く存在しているのが事実です。

 すでに韓国や米国では次世代通信の5Gがスタートし、日本でも今年始まりますが、iPhoneは2019年モデルではまだサポートしない、と見られています。アップルに限らず通信業界全体としても、4Gのときにそうだったように、iPhoneが5Gに対応するタイミングが、当面で最大の商機であることは間違い無いでしょう。

 それが今年ではないとすれば、新モデル商戦にそこまで熱を入れず、来年に備えるという見方が、業界にも消費者にも広がってしまうことになるでしょう。筆者はアップルが「そうさせないため」に何をするか、に注目しているのです。

●2019年の注目は「AR」

 2017年のWWDCでアップルは拡張現実アプリを実現するためのライブラリであるARKitを発表しました。2015年発売でA9を搭載するiPhone 6s以降をサポートし、「世界最大の拡張現実プラットホーム」になったことを宣言しました。

 その後、2018年にはフィールドの保存と複数人での共有、2019年には人を切り抜いて背景や手前にあるものを考慮し合成するオクルージョンや、ジェスチャーに対応し、iPhone/iPadアプリ開発環境で無料で構築できるARの技術と表現力を高めてきました。

 アップルはゲームや学習以外のあらゆるアプリにARを活用する前提を敷いています。むしろすぐに思い浮かぶ表現以外からARのキラーアプリが生み出されるという期待も透けてきます。

 例えば、TileのようなBluetoothを用いたなくし物トラッカーは、これまで音を鳴らしてその場所を教えてくれていました。しかしARを用いれば、カメラをかざすとタグがある場所に旗なり風船なりを合成して、探すべき場所をよりわかりやすく表現することができるかもしれません。

●マップアプリにARナビ?

 またすでにGoogle Mapsはすでに実装していますが、ARを用いて道案内をするナビゲーションも便利そうです。地図で経路が示されても、最初の1歩目をどちらに向かって踏み出せばいいかが分かりにくい、という問題は解消されていません。

 iOS 13のマップアプリでは、Googleストリートビューよりも歩いている感覚を覚えさせる表現「Look Around」機能を実装しており、これとARナビゲーションを組み合わせることで、実際のカメラの映像にお店の名前や経路を重ねることもできるようになるでしょう。

 もしiPhoneの進化が小幅なものになるとすれば、こうしたプラットホームやソフトウェア、アプリでこれまでできなかったことを実現する点に取り組み、驚きを与えてくれるかもしれません。

 来週、現地からイベントのレポートをお届けします。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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