アドビのAIが地味な仕事をなくしていく

文●石川温

2019年11月08日 09時00分

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 PhotoshopやIllustratorなどを販売するアドビ。同社では、11月4日から1万5000人以上が参加するクリエイター向けイベント「Adobe MAX」をアメリカ・ロサンゼルスで開催している。

 2日目となる11月5日の夕方には、Adobe MAXで最も盛り上がると言われる「SNEAKS」というイベントが開かれた。これはアドビ社内で開発中の技術を披露するというもの。バリバリに開発途中のため、プレゼン中に失敗してしまうこともしばしば。観客もそれを温かく見守る雰囲気がある。「こんなことができるのか」と拍手喝采となり、将来的に製品化される可能性がある。そんな最先端の技術を目撃しようと、会場は熱気に包まれるのであった。

 今年の傾向としては「すぐにでも製品化されそう」という堅実な技術が多かったように思う。アドビでは、「Adobe Sensei」というAIのプラットフォームがあるのだが、随所にSenseiの力が発揮されており、「Sensei、大忙し」といった感じであった。

●Adobe Sensei便利機能

 たとえば「PROJECT AlI IN」は家族写真を撮る時に便利な技術だ。

 家族で写真を撮ろうと思うと、一人がカメラマンとなるため、どうしても全員一緒の写真を撮るのが難しい。Project AlI INでは、あらかじめ一人の写真を撮影しておくとSenseiの力で被写体を切り抜き、きれいに家族写真として合成。その場で家族全員が一緒に写った写真を完成させてしまう。

 「PROJECT SWEET TALK」は画像や紙に書いたキャラクターのイラストに対して、Senseiが目や口、輪郭を検出し、音声に合わせて口や目を動かす技術だ。これまでも同様のことはできたが、膨大な時間を費やす作業が必要だった。PROJECT SWEET TALKは、瞬時にアニメーションができてしまう点が驚きだ。

 アニメーション関連なら「PROJECT GO FIGURE」も面白い。

 動画のなかで人物が動いている様子を、Senseiが検出。動きをあらかじめ用意していたキャラクターに適用すると、簡単にキャラクターを人物と同じように動きだすというものだ。

モーションキャプチャーのような機能

 ほかにも、Illustrator関連で、イラストの中に光源を置くことで、光や影の表現が簡単にできてしまう技術、Photoshopで風景写真で朝焼けや夕焼けなど太陽の位置を自在にコントロールできる技術なども紹介された。

 さらに音声関連でも、インタビュー中の「あー」とか「うー」といった余計な音声を綺麗に取り除いたり、音声収録中のノイズを除去してくれる技術もあった。

音声収録中のノイズを除去する機能

●「ムダな時間をなくそう」

 アドビが現在、一所懸命に取り組んでいるのは「クリエイターの働き方改革」だ。Adobe Senseiの開発を手がける、Adobe Sensei および Searchエンジニアリング担当ヴァイスプレジデントのスコット・プレヴォー氏は「クリエイターの仕事の74%はノンクリエイティブだ」と語る。

 たとえば、プロカメラマンの仕事を見ても、撮影するのはほんの一瞬だが、あとは事務所に帰って、撮影した画像の色味を調整したり、写真を整理したりといった地味な仕事が大半だ。

 デザイナーも、クリエティブにデザインしている時間はごくわずか。調べ物やレイアウトの細かい位置の調整に時間を費やしているものだ。

 アドビは、今回のイベントでクリエイターに対して「ムダな時間をなくそう」というメッセージを送っていた。そこで役に立つのが、Adobe Senseiが活躍するAdobeのクラウド製品群というわけだ。

クリエイターの仕事は時間との戦い

●面倒くさい作業はSenseiにおまかせ

 地味で面倒くさく、時間のかかる作業は、これからはAdobe Senseiにすべてまかせてしまう。ノンクリエイティブな時間をできるだけなくし、もっとクリエイティブな作業に時間を費やすのが理想的なのは誰の目にも明らかだ。

 今回、SNEAKSで発表された技術の多くがAdobe Senseiによって、作業を効率化してくれるものばかりだ。

 来年あるいは数年後、アドビ製品を使えば、もっと地味な作業から解放される日がくることだろう。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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