エレクトロニクスの殿堂がここ50年の50の家電を選出 日本勢は13製品

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2019年12月03日 10時00分

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IEEEが50年間の人々の生活にインパクトを与えた
50の家電製品を発表

 IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers:米国電気電子学会)は、「Back to Consumer Electronics Hall of Fame」というページを公開し、ここ50年間で我々の生活にインパクトを与えたコンシューマーエレクトロニクス製品50を選出しました(https://spectrum.ieee.org/static/consumer-electronics-hall-of-fame)。

iPhoneやチプカシのように日本でも高い評価を受けている製品の一方で、米国で爆発的に普及したHDDレコーダーのTiVoやサムスン製BDプレイヤーなど、米国でないとインパクトが伝わりにくい製品も見られます

 日本勢は13製品が選ばれていますが、本当に多岐に渡ります。1983年、初めて「ファジー」を組み込んだマイコンを使った象印の炊飯ジャー。文句なしなのは1979年のソニーウォークマン。1994年のエプソンのカラーインクジェットプリンタ(←持ってた……)も選ばれています。

 ソニーは今回の発表の中で最多の4製品が選出されており、ウォークマンの他にはトリニトロンテレビ、PSP、そしてビデオカメラのDRC-VX1000が選ばれていました。個人的には、このVX1000は憧れの懐かしいカメラでした。デジタル(MiniDV)で録画でき、比較的軽く、カメラワークについてきてくれる、そんなカメラです。

 筆者は、せいぜい大学の課題で使った程度ではありましたが、それでも思い出深い製品でした。大学に貸し出し用で数台用意してありましたが、人気があってなかなか使うことができなかったのです。

 もちろん現在のスマートフォンの方が4Kも取れて画質も良さそうなものですし、スマホで撮影した4K動画を有り余るプロセッサ性能を生かしてスマホの中で編集し、音楽までつけてYouTubeにアップ、なんてお手軽です。しかし2000年頃であっても、まだまだ当時は大変でした。

 まずMacのPremiereに取り込むため、i.LINK(FireWire)ケーブルでVX1000をつないで、テープに記録したビデオを再生しなければなりません。もし60分ビデオを撮ったら、60分かけて取り込まなければならなかったのです。

 そして編集もまた過酷です。ちょっといじっただけでもレンダリングを待たなければならず、編集してレンダリングして、また編集してという繰り返しのために、学校に泊まり込まなければなりませんでした。懐かしい記憶が蘇ってきますが、確かにVX1000でビデオを撮りたいと思えるほどにその仕上がりからして違っていたのを覚えています。

ソニーとAppleの基本戦略も透けて見えてくる面白さ

 ソニーから選出された製品はテレビとビデオカメラ、ウォークマンとPSPという2つのグループに分けられます。前者は途方もなく高額だった製品を、より多くの人々が手に取れる価格に下げるインパクトを与えたこと。後者はそうした大きくて固定されているモノが当たり前だったものを、持ち出せるようにしたことです。

 そう分類しながら、選出されたApple製品を見てみると、基本的にはテクノロジーのポータブル性を次々に達成している製品が入っています。iPhone/Apple Watch/AirPodsの3製品選出はソニーに次いで2位ですが、ソニーと異なり、いずれも持ち出せる製品の再定義が続きます。

 iPhoneはモバイル、Apple Watchはウェアラブル、AirPodsはヒアラブル。携帯電話としてはモトローラやノキアの製品が入っているし、腕時計なら(最近もチプカシと呼ばれて人気の)カシオF-91Wという防水デジタル時計が入っています。Appleはこれらを高度化しながらデザインを与え大衆化する戦略にこだわって、ここまで成功してきた様子が見えてきます。

 だとすれば、今後も、「○○able」を探しながら、新しい製品ラインが増えていくことになるのではないでしょうか。しかし当面はiPhoneにぶら下がるデバイス、ということになるはずです。 面白いのは、主たるデバイスもまた、Appleが変化させている点です。

 Appleは当初Macを旗艦としてiPodやデジタルカメラなどをぶら下げる「デジタルハブ構想」を打ち立てました。その後iPhoneが普及すると、この構想の旗艦をMacからiPhoneへと置き換え、クラウドを絡めながら現在のエコシステムを強力に作り出しました。

 このパラダイムシフトも踏襲するなら、あるいは旗艦がApple Watch、AirPodsなどへと時代とともに映っていくかも知れませんが、それはさすがに読み過ぎ、といったところでしょうか。

5G時代のエレクトロニクス

 昨今、5Gというキーワードがメディアにも頻繁に取り上げられ、超高速化するインフラとパートナーシップを組んで、新しいサービスを展開しようとする動きも活発です。また、FacebookがKDDIと組んで、5GにおけるARアプリケーションの普及促進を進めようとしています。

 そうした中で、次のキラーアプリは何か、みんなが探し回っている状況です。ただし、あまり焦ることもないと思います。むしろ、既存のプレイヤーやデバイスを前提にするのではなく、一度頭をまっさらにして考えてみた方が良いという意味です。

 よく引き合いに出されるのが4GとInstagramやUber。第4世代通信が始まったとき、InstagramやUberがここまで人々のメディア動態を変え、移動形態を変えるとは思っていなかったはずです。

 次世代通信のプロモーションビデオを見ると、ホログラムに浮かび上がるビデオを見ながら自動運転車で移動、みたいななんとなくの未来像だけ見せられていた記憶があります。実際、そうした世界はやってきていませんし、5Gでも再び理想として掲げられつつあります。

 確かにビジュアル化はわかりやすいし、「きっとこうなる」と思わせてくれる数少ない材料かもしれません。しかしどの4G開始前のビデオにも、Instagramのアプリは登場していなかったのです。つまり、5Gについても、まだまだこれからということ。

 その一方で、世界中の人々が、次なるFacebook、Instagram、Uberを狙おうと開発と投資をすすめていることも事実です。それでも、まだ遅くないと筆者は思っています。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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