節目を迎えた“Adobe Photoshop”の未来をデボラ・ウイットマン氏に聞く (1/4)

文●千葉英寿

2007年05月18日 18時00分

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アドビ システムズ(株)は今月8日に、クリエイティブ関連のスイート製品(統合製品)である“Adobe Creative Suite 3”ファミリーを発表した。クリエイティブ関連のソフトウェアベンダー最大手である同社が、『Adobe Photoshop CS3 Extended Edition』をはじめ、10を超えるアプリケーションを同時リリースするという、かつてない規模で一斉に製品をアップグレードしたわけだ。これはアプリケーションの世界でも類を見ない規模といえる。そして、グラフィックス/フォト/ウェブ/映像など各分野のクリエイティブユーザーに対してだけでなく、同社製品を活用しているハイアマチュアやコンシューマー、非クリエイティブ系のユーザーにとっても多大な影響を及ぼすことは想像に難くない。

Adobe Creative Suite 3ファミリーには、グラフィックスデザイン向けのスイートである『Adobe Creative Suite 3 Design Premium/Standard』、ウェブ制作向けのスイート『Adobe Creative Suite 3 Web Premium/Standard』、そして映像制作向けの『Adobe Creative Suite 3 Production Premium』。さらにこれらすべての製品を網羅した『Adobe Creative Suite 3 Master Collection』という7製品がある。

Adobe Photoshop CS3 Extendedのパッケージ

『Adobe Photoshop CS3 Extended』のパッケージ

Adobe Photoshop CS3のパッケージ

『Adobe Photoshop CS3』のパッケージ

このように分野ごとに製品構成を組み替えることで、複雑化しているクリエイティブのワークスタイルに柔軟に対応し、より多くのクリエイターにひとつでも多くの製品を使用してもらおうという狙いがあると思われる。そうした製品群の中にあって、アドビ全体を象徴するアプリケーションであり、クリエイティブワークの根幹を成す唯一無二の存在である“Adobe Photoshop”は、今回、これまでで最も大きな変貌を遂げており、“節目”でもあることからも、大きな意味を持つバージョンアップとなっている(節目の理由とPhotoshopカルトクイズについては最終ページを参照)。

3D CG、動画、画像解析と
3つの特化した機能を持つ“Extended”

新たに登場したAdobe Photoshopは、異なる2つの製品構成になっている。ひとつはこれまでのグラフィックユーザーに対してより高度な画像編集のソリューションを提供する『Adobe Photoshop CS3』、そしてもうひとつが3D CGや動画、建築や医療といった、これまでAdobe Photoshopだけではカバーしきれなかった分野に対しても新機軸のソリューションを提供する『Adobe Photoshop CS3 Extended』(以下、CS3 Extended)だ。これまでAdobe Photoshopは、“ファミリー”として入門者向けの“Elements”、フォトグラファー向けの“Lightroom”など、いくつか製品が存在しているものの、この“CS3 Extended”は、Adobe Photoshopそのものを2つに切り分けてしまう、これまでとは性格の異なる製品になる。

Adobe Photoshopを担当する米アドビ システムズ社のデジタルイメージング&ウェブオーサリング部門のプロダクトマネージメント担当バイスプレジデントのデボラ・ウイットマン(Deborah Whitman)氏は語る。

デボラ・ウイットマン氏

米アドビ システムズ社のデジタルイメージング&ウェブオーサリング部門のプロダクトマネージメント担当バイスプレジデントのデボラ・ウイットマン氏

「CS3 Extendedを出すことになったのは、最もハイエンドなユーザーのみなさんからのニーズがあったことがきっかけになっています。世界中のPhotoshopユーザーの20~25%は、いまあるものに加えて、さらに“風呂敷”(作業領域)を広げたいと思っています。しかしながら、風呂敷を広げることで製品がより複雑になることも十分考えられ、それらは残りの多くのお客様にとって、必要となるものばかりではありません。そのため、私たちはハイエンドのマルチメディアを行っているクリエイターやアニメーター、モーション・グラフィックスやビデオをやっている方々と多くの時間を費やして、かなりいろいろな話をさせていただきました。さらに科学者や建築家などにもお聞きし、広くテクニカルな分野でデジタル・イメージングをやっている方々からのニーズを吸い上げてみたところ、さまざまな分野において共通する部分が多いことがわかりました。そして、その傾向は一般のお客様よりも強いことが分かりました」

このように特に専門的な分野からの期待が寄せられている“CS3 Extended”だが、そのターゲットとする分野と機能は深く関わり合っており、“CS3 Extended”の特徴は3つのエリアにフォーカスされているとウィットマン氏は語る。

「ひとつは“3Dイメージング”。これは3D画像を取り込んで、編集できるものです。もうひとつは“ペインティング”。自分が描き加えた画像(エレメント)が、時間の経過とともに動いていくもので、動画を再生するとコマがひとつひとつ動くのにともなって、加えたエレメントも一緒に動くようにできます。そして、もうひとつが“画像解析”。いわゆるイメージアナリシスができるようになりました」

中でも画像解析の機能は、画像の中で特定のオブジェクトを数えたり、長さを測定することができるもので、より興味深い活用が考えられそうだ。

「この画像解析というフィーチャー(特徴的な機能)は、例えば科学者やエンジニア、研究者の方たちにとって非常に重要なものになるのですが、同じフィーチャーがビデオ制作を行っている方々にとっても重要だということが分かっています。例えば、ビデオ・プロフェッショナルが映画を撮っていて、登場人物が建物から落下するシーンを合成で制作するといった場合、出てくる俳優の身長が6フィートとして、背景の建物のサイズとの相関関係が3Dでリアルに測れるので、よりリアリティのあるシーンが制作できるわけです」(ウィットマン氏)

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