山根博士の海外モバイル通信

1万円5G機も出てくるか? 新たなコスパスマホ「Galaxy Fシリーズ」が海外で登場

文●山根康宏 編集●ASCII

2020年11月02日 10時00分

サムスンの新シリーズスマホ「Galaxy F41」

 サムスン電子のスマートフォン、Galaxyシリーズは日本でも「Galaxy A51 5G」などが発売されるなど、フラッグシップの「Galaxy Sシリーズ」、ペンが使える「Galaxy Noteシリーズ」とは別のラインである「Galaxy Aシリーズ」が各国で製品数を増やしています。Galaxy Aシリーズは2桁の数字のうち、10の位の数字が大きいほど上位機種。そして1桁の数字は「0」が2019年モデル、「1」が2020年モデルとわかりやすいナンバリングになっています。

Galaxy Aシリーズは製品名がわかりやすい

 この2つのラインに加え、インドなど新興国では「Galaxy Mシリーズ」も展開されています。価格を抑えたエントリーモデルで、シャオミの「Redmiシリーズ」など中国メーカーの低価格機に対抗するモデルです。2020年モデルとしては「Galaxy M01」「Galaxy M11」「Galaxy M21」「Galaxy M31」「Galaxy M51」がラインナップされています(Galaxy M31は派生モデルがあります)。

インドで売れてるGalaxy Mシリーズ

 そして10月からは新たに「Galaxy Fシリーズ」が登場しました。これも新興国向けで、最初に登場したモデルは「Galaxy F41」です。Galaxy Mシリーズにはない「41」という型番を付けているあたりは、あえてかぶらないようにすることで消費者にわかりやすさをアピールしようとしているのかもしれません。

 Galaxy F41の主なスペックは6.4型(2340x1080ドット)ディスプレー、SoCがExynos 9611、メモリー6GB、内蔵ストレージ64GBまたは128GB、6400万画素+800万画素+500万画素の3眼カメラ、フロント3200万画素カメラ、5000mAhバッテリー、価格はキャンペーン割引で64GBモデルが15499ルピー(約2万2000円)、128GBモデルが16499ルピー(約2万3000円)です。

Galaxy F41のカメラ構成

 ほぼ同じ時期に発売された「Galaxy M31 Prime Edition」と比べると、ディスプレー、チップセット、フロントカメラ、バッテリーは同等、メモリーは6GB、ストレージ128GB、カメラは500万画素マクロが増えてクワッド構成となっています。価格は16499ルピー。同じメモリ構成のGalaxy F41と同価格です。

Galaxy M31 Prime Editionのカメラ構成

 同じ価格なら消費者はGalaxy F41よりカメラの多いGalaxy M31 Prime Editionを選ぶでしょう。Galaxy F41はECサイト「Flipkart」で販売することで販路を変え、新たなユーザーを開拓しようとするモデルでもあるのです。またGalaxy F41には64GBモデルもあり、Galaxy M31 Prime Editionより若干安め。価格に敏感な層の目を向けさせようという意図もあるようです。

 だったらGalaxy Mシリーズでカメラ3つの安いモデルを出せばいいのかもしれません。実際、「Galaxy M21」はGalaxy M31 Prime Editionを4800万画素+800万画素+500万画素カメラ、フロントカメラを2000万画素にしたモデルです。

 しかし、あえてGalaxy F41を投入したのは、製品ラインナップを多様化させて消費者の関心を向けさせるためでしょう。インドのスマートフォン市場はここ数年シャオミがシェアトップを走っています。Canalysの調査では2020年第3四半期(7-9月)の順位はシャオミ、サムスン、Vivo、Realme、OPPOの順です。

インドのスマホシェアの推移(Canalys)

 シャオミで売れているのは低価格な「Redmiシリーズ」。新製品が出ればすぐ完売してしまうほどの人気です。Redmiシリーズは「Redmi」「Redmi Note」という2つのラインナップを持っています。またシャオミは別途「Poco」も展開してています。

インドで売れているRedmiシリーズ

 サムスンを追いかけるVivoの中低価格帯モデルは「Z」「Y」「U」、Realmeは「3/5/6/7」という数字型番モデルに加えてエントリーの「C」、さらに5月からは新シリーズ「nazro」も投入。価格が安くとも次々と新製品を投入し、市場を沸かせています。

Realmeの新シリーズ「nazro」

 サムスンもGalaxy Aシリーズの下位モデル、Galaxy Mシリーズで新興国をカバーしていましたが、中国各社の新製品、新シリーズラッシュに対抗するには新しいラインナップが必要というわけです。「Galaxy Fシリーズって何だろう?」と消費者の興味を惹くことができればそれだけでも効果はあり、家電量販店のGalaxyコーナーに客足を向かわせることができます。

 先進国から見れば、変わり映えのしないモデルを出しているようにしか思えないかもしれません。しかしはるか昔、ノキアの携帯電話がまだ世界を席巻していたころから、ノキアは格安ケータイの「1000シリーズ」を毎年数機種出して新興国の消費者を飽きさせないようにしていました。

 日本にGalaxy Fシリーズが入ってくることはないでしょうが、来年以降、東南アジアや中国で見慣れないGalaxyが出てきたと思ったらFシリーズだった、なんてことが増えるでしょうね。いずれ「Galaxy F92 5G」といった、5Gに対応して1万円台の格安スマートフォンが出てくる可能性も十分あります。そう考えるとGalaxy Fシリーズもいずれ先進国で販売される日が来ることもあるかもしれません。

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