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【夏スマホ総力特集】なぜスマホCPUは「Snapdragon」のシェアが高いのか!? スマートフォン向けCPU最新事情

文●島 徹

2013年06月12日 11時50分

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 スマートフォンを選ぶ際の選択基準はいろいろあるが、PCやデジタル機器にこだわりのある読者ならCPU(Central Processing Unit)の性能は気になるところだろう。

 だが、夏モデルのAndroidスマートフォンは大半のメーカーがQualcomm製のクアッドコアCPU「Snapdragon 600(APQ8064T)」を採用。AndroidタブレットにはNVIDIA製やIntel製のCPUを採用したモデルもあり、選択肢が豊富なのとは対照的な状況だ。

 なぜ、スマートフォンとタブレットでCPUの採用状況にこれほどの違いがあるのか? そこには、スマートフォン向けCPUの採用が単純な処理性能だけでは決まらないという事情がある。ここでは、スマートフォンやタブレットで採用されるモバイル機器向けCPUの現状と、今後の見通しについて解説する。

なぜスマホCPUは「Snapdragon」のシェアが高いのか 

ワンチップに多くの機能を搭載する
スマートフォン向けCPU


   各社シェアの話の前に、まずはスマートフォンやタブレットに採用されているCPUの中身について見てみよう。

 スマートフォンに関するWebサイトや雑誌記事では、スペック表のCPU欄に「Qualcomm製 APQ8064T(1.7GHz クアッドコア )」などと表記されている。

 CPUのスペック値について簡単に解説すると、最大クロック数を示す「1.7GHz」は数値が高いほどCPUの1コアあたりの最大処理能力が高くなる。一方、「クアッドコア(4コア)」や「デュアルコア(2コア)」はCPUの処理回路「コア」の数を示している。

 複数のコアを搭載したマルチコアCPUは、複雑な処理を複数のコアに分散することで、1コアと比べて低いクロック数で処理できる。動作中のクロック数は、低いほうが低消費電力化の点で有利だ。もちろん、最大クロック数で動かした場合の処理性能は、1コアと比べてコア数のぶんだけ高くなる。このため、今では多くの端末がマルチコアCPUを採用している。

なぜスマホCPUは「Snapdragon」のシェアが高いのか 

▲実際にスマートフォンやタブレットを分解してみると、Androidの場合はQualcommやNVIDIA製、iPhoneの場合はAppleのチップが搭載されている。上は「iPhone4」を分解したもので、大きくA4とプリントされたCPUが見える。

1チップとベースバンド

  スマートフォンやタブレット向けCPUの場合、1チップにCPU以外の機能が数多く搭載されている。ゲームなどの描画処理を実行するGPU(Graphics Processing Unit)や、HD動画などの映像処理回路、ディスプレイやカメラを搭載するためのインターフェースなどがそうだ。そして、それらのスマートフォンを構成するさまざまな機能を1チップにまとめることで、スマートフォン全体の小型化と省電力化に貢献しているというわけだ。

 また、通話や3G、LTEなどのモバイルデータ通信を利用するスマートフォン向けCPUの場合は、通話や通信を処理する“ベースバンド”もチップに搭載されている。もし搭載されていない場合でも、組み合わせて搭載するための“ベースバンドチップ”が用意されている。そして現状、その通話や3G、LTEでのモバイルデータ通信を処理する”ベースバンド”こそが、スマートフォン向けのCPUのシェアを大きく左右する要素なのだ。

なぜスマホCPUは「Snapdragon」のシェアが高いのか 

▲「Snapdragon 800」の概念図。このような複数の機能を1つにまとめたチップをSoC(System-on-a-chip)と呼ぶ。

LTE対応で2012年はクアルコムの一人勝ち

“ベースバンド”とは、通話やLTE、3Gでのモバイルデータ通信を処理する携帯電話の心臓部にあたる。たとえば携帯電話事業者が「LTE- Advanced」など新しい通信方式のサービスを始める場合は、スマートフォン側にも新しい通信方式に対応した“ベースバンド”が必要になるのだ。

 この“ベースバンド”について、高い技術と数多くの特許を持っているのがQualcommだ。QualcommはもともとCDMA方式の通信を実用化した企業で通信事業者との関係も深く、以前からW-CDMAやCDMA2000に対応した多くの携帯電話(フィーチャーフォン)にCPUとそれに組み合わせたベースバンドチップを供給していた。そして、それはスマートフォン向けのCPU「Snapdragon」においても同様。特にスマートフォンの登場と合わせて新しく始まった高速通信規格LTEサービス対応の“ベースバンド”をいち早く開発し、高性能なCPUと合わせて、そのトータルなパフォーマンスを多くの端末メーカーが評価。LTEに対応した多くのAndroidスマートフォンが採用するようになり、各国でLTEサービスの開始が相次いだ2011年から2012年にかけては、LTE対応ベースバンドを搭載したCPU「Snapdragon S4(MSM8960)」に需要が集中してしまい、供給不足に陥ることもあったほどだ。

なぜスマホCPUは「Snapdragon」のシェアが高いのか 

▲世界初3G、LTE両対応のQualcomm製ベースバンドチップ「MDM9200」。日本ではドコモのLTE開始に合わせて発売されたデータ通信端末「L-02C」や、初のLTEスマートフォン「Galaxy S II LTE SC-03D」などに搭載されている。
 

富士通製「ARROWS」シリーズもついに…

 一方、それまで3G対応のスマートフォン向けCPUで高いシェアを確保していたTexas Instrumentsの「OMAP」シリーズは、LTE対応ベースバンドを供給できないことからシェアを落としている。

 日本では、LTE開始当初にNTTドコモや国内端末メーカーが共同でベースバンドチップ「さくらチップ」を、その流れをくんで設立された「アクセスネットワークテクノロジ社」が「COSMOS(ANT30)」を開発。また、ルネサステクノロジもLTE対応ベースバンドチップや CPUを開発している。そして、これらのベースバンドチップは、「OMAP4430」や「Tegra 3」といった当時の最新CPUと組み合わせる形で、ドコモ向け富士通製「ARROWS」シリーズのスマートフォン&タブレットに搭載されてきた。

 だが、この2013年夏モデルを発売するタイミングでは、CPU性能でQualcomnの「Snapdragon 600(APQ8064T)」に対抗できる最新CPUが市場に存在せず、ドコモ向け富士通製の夏モデルのハイエンド機種「ARROWS NX F-06E」でも「Snapdragon 600(APQ8064T)」と、Qualcomn社製ベースバンドチップ「MDM9215M」の組み合わせを採用。その結果、日本では2013年の夏モデルすべてAndroidスマートフォンが、Qualcomn社製の「Snapdragon」を搭載することとなった。まさに一人勝ちという状態である。

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