スマートホームで賢くなるべきは何か?

文●ASCII.jp編集部

2017年03月09日 20時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Philips Hueのスターターキット。ハブとフルカラーのLED電球3つがセットになり、149.95ドルです。我が家では、これにあと2つの電球を買い足しましたが、フルカラーではなく、色温度が変えられるだけの廉価版にしました

 筆者は2005年に仕事を始めた当初、メインのカテゴリをケータイとMacに設定していました。これはある種の賭けだったと思っています。

 そもそも高校時代から、「ケータイを持つ自分」について考えるようになり、大学時代は「ケータイに生かされる自分」を意識するようになりました。

 デジタルネイティブというよりは、「モバイルネイティブ」という言葉がしっくりくる時代が来るだろうという見立てから、メインのテーマにケータイ、モバイルを据えた次第です。

 もう一つのMacというテーマは、2001年に自作マシンまで組んでいた自分がiPodをきっかけに「スイッチ」(Appleが展開したPCからMacへの移行を促すキャンペーン)して、コミュニティまで含めてMacが好きになったことがきっかけでした。若干好きなことを仕事にする事への抵抗感もありましたが。

 仕事を始めて2年後が立たないうちに、ケータイとMacから、iPhoneという新しいカテゴリが生まれました。その瞬間、期待と不安がよぎりました。自分が選んだ2つのカテゴリが融合したのです。それは興奮するというものです。

 他方の不安は、「幅が狭まるのではないか」ということ。結果的には、スマートフォンとアプリ、そしてSNSを主体としたモバイルインターネット活用によって、モバイルがメインストリームへと駆け上がりました。その結果、生活のさまざまなものへとスマートフォンが関係していく現在が生まれています。

 自分の世代のメディアであるケータイをテーマに据えたことは、今とても役に立っています。自分が日本で、高校生から経験してきたこと、そして仕事を始めて取材してきた、リアルタイムで起きたことが、米国で10年後に起きている。そんな既視感を覚える毎日です。

肌身離さない革命

 ケータイとMac以外に検討したテーマは、家電、クルマ、そして教育でした。結果的にはそのいずれも、ケータイとMacというオリジナルのテーマから派生したスマートフォンに関係してきました。つまりスマートホームであり、コネクテッドカーであり、コード教育、というわけです。

 スマートフォンが強いのは「肌身離さない存在」ということ。

 思い立ったときに、すぐに行動し、やりたいことや問題を解決できることです。例えばこの原稿のアイディアは土曜日に後述のネットにつながる電球、Philips Hueを設定しながら思いつき、iPhoneの音声認識を使って、Evernoteにアウトラインを作りました。

 問題解決がポケットにあり、場合によっては位置情報や暦などを活用して、ユーザーが意識しないうちに問題を解決してくれることすら在ります。人に寄り添うメディアこそ、ケータイ世代が頼っているメディアというわけです。ポケットの中の世界、手の平の世界を掌握する感覚が世代観なのでしょう。

スマートホームがつらい理由

 スマートホームは簡単に言えば、手の平で掌握する世界に「自宅」を追加するということです。しかし、日本でも米国でも、さほどスマートホームの分野を積極的に取り入れるトレンドが盛り上がっていないように思います。

 実際に米国でも、スマートホーム関連の製品を店舗で選ぼうとすると、せいぜいセキュリティカメラ、センサー、限られた種類のドアロック、そしてWi-Fi接続のコンセントと電球程度です。しかも規格が乱立しており、「結局どの規格で行けばいいのか」を判断するには尚早でした。

 結局、と言ったら悪いですが、日本でも購入して利用できるスマート電球「Philips Hue」くらいしか、今のところは選びようがないのです。業界の熱とのギャップはとても大きい、というのが現状です。

 加えて、ケータイ世代の筆者からすると、自宅くらい「手の平で管理しなくて良い世界」であって欲しい、という気持ちもあります。それぐらい、iPhoneで管理していることは、膨大です。仕事、スケジュール、コミュニケーション、金融、ニュース、エンターテインメント……。

 もちろんまだまだ増えるでしょうが、ちょっと待って……と。

 日本は特に、現状のスマートホームは不要だと思います。米国に暮らし始めて6年目に入りましたが、こちらは問題だらけなので、少しでもスマート化した方が良いと感じていますが。

 筆者が住む2000年代に建てられた住宅ですら、アナログなダイヤル式のサーモスタットで室温を管理していますし、洗濯はコインランドリーです。日本のように、エアコンが人のいる方向に温風を吹きかけてくれたり、洗濯物の汚れを感知しながら適度に洗って乾燥まで済ませてくれる世界ではないのです。

パズルの楽しさ、プログラミングの難しさ

 とはいえ、興味もあって、筆者のアパートのスマート化に着手しています。とりあえず、電気とコーヒーメーカーはスマート化しました。

 コーヒーメーカーのスマート化、といっても、14ドルほどの電源がスイッチ式のコーヒーメーカーと、Wi-Fi接続のコンセントを組み合わせただけ。Wi-Fi接続の製品もあるのでしょうが、合計30ドルで試せるなら、10倍の金額を払わなくても良いかなという程度の期待値です。

 Philips Hueのセットアップは簡単です。ハブを自宅にあるWi-Fiルーターと有線LANで接続すれば、あとは既存の電球をリプレイスし、スマートフォンのアプリからハブと各電球を認識させる、という手順です。

 重要なのは部屋の設定。どの電球がどの部屋にあるかを割り当てていくと、リビング、寝室、書斎といった部屋ごとに一斉に明るくすることができます。

 米国の住宅の多くは、天井などに備え付けの照明器具はありません。そのためランプスタンドなどを部屋の隅に配置しながら明かりを採ります。場所は自在と思いきや、コンセントの場所もあり、そこまで自由度があるわけではありません。

 すべて手動でスイッチをオン/オフしていた我が家では、どこにHueを設置するか、何を一斉コントロールできると便利か、ということを考えるようになりました。これは、生活空間やその空間でどんな過ごし方をしているかを見直す良い機会でした。

 Hueではアプリから「シーン」を設定することができます。標準では、くつろぐ、読書する、集中する、といったテーマで電球の明るさや色温度を調節できる仕組みですが、そのほかに「オーロラ」「ハワイの夕日」といった空の色をモチーフにしたテーマもプリセットされています。

 ただ、今までは調光すらせず、オン/オフしかできないランプスタンドを使っていたため、明るさを絞るとどうなるか、色温度を変えるとどうなるか、ということ自体が初体験でした。加えて、帰宅すると自動的に点灯する、日没と同時に点灯させる、といったオートメーションの設定もできます。

 オートメーションの設定まで入ってくると、家を手軽なプログラミングでアプリ化しているみたいな感覚すら在りました。

スマートホームとは? で賢くなるべきは

 一応、個人的にはとても楽しんで作業ができましたが、家族からは不思議がられていたかもしれません。部屋の真ん中で腕を組んでうーんと唸りながら、iPhoneを操作し、電気をつけたり消したりしているんですから。

 自分の生活空間をライティングから見直すというテーマは、「ていねいに暮らす」というちょっと前のトレンドとなったキーワードを実現するための、一つのツールだったかもしれません。

 普段何時に起きるか。筆者のアパートのリビングは東に窓があるため、午前中は朝から明るいのですが、米国では今週末から夏時間となるため、朝起きたらまた真っ暗。

 夜は電球を1%の明るさで光らせていて、「おはよう」とSiriに言えば逆に電気を消していたルーティンでしたが、夏時間が始まったら「おはよう」で電気をつけなければならないでしょう。

 また夜は夏至にかけて、21時まで明るい時間帯が続きます。でも21時の日没の時間帯に電気をこうこうと点けてしまうと、寝る時間が近いためマッチしません。そのため、日没したら100%の明るさにするというルーティン、は50%ぐらいに絞るべきでしょう。

 1度設定しても、暦次第でオートメーションを調節しなければならないわけです。また、明るくする以外の新たな目的、例えばくつろぐ、勉強する、防犯といった効果を取り入れるなら、ほかのルーティンが必要になるでしょう。

 そこで気づいたことは、スマートホームでスマートになるべきは「家よりも、住んでいる我々の側だった」という事実でした。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

mobileASCII.jp TOPページへ

mobile ASCII

Access Rankingアクセスランキング

アプリ週間ランキング

アプリランキングをもっと見る

for Biginnersスマホ入門

スマホからスマホへ機種変更する前に読む! 各種アプリ&サービスのデータ移行・引き継ぎ方法

「Xperia A」「GALAXY S4」へ機種変更したらチェック! ケータイとの違い&スマホの使い方をマスターしよう

「Xperia A」ほか夏スマホ購入前にチェック! スマホへの機種変更&乗り換えQ&A

スマホのトラブル解決ガイド2013

スマホ定番アプリ活用術!

連載:スルッとわかる! 高速通信規格「LTE」

おサイフケータイ乗換案内!

Linkリンク