数年前に勢いがあった第3のOSの今…… Firefox OSの失敗の要因とは

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2017年03月15日 17時00分

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 Mobile World Congressが終わった。2017年のMWCは予想以上に端末もネットワークも盛り上がり、AIやチャットボットなどのサービスもトレンドを印象づけた。だが、プレイヤーは入れ替わっている。Oppoなどの力をつけたベンダーが大きなブースを構える中、勢いがなくなったのが第3のOSだ。

2013年のMWCでのFirefox OSブース。注目度は非常に高かった

第3のOS、その始まりは2013年のMWCだった

 2013年、スマートフォンはiOSかAndroidという流れに固まった後で、偶然だろうか、Firefox OS、Jolla(OSは「Sailfish」)、Ubuntu、Tizenといった新しいOSが、Android対抗の狼煙を上げた。それぞれアプローチは違えど、「モバイルOSにAndroid以外の選択肢を」というのがメッセージだったように思う。

 2014年、2015年までそれぞれそれなりに”ノイズ”を出した。

 スタートダッシュが早かったのはFirefox OSだ。2012年のMWCで「Galaxy S2」上で動かす様子を見せたあと(当時は「Boot 2 Gecko(B2G)」というオリジナルの名称だった)、2013年のMWCではTelefonicaなどオペレーター、Qualcomm、ZTEなど23社のトップがずらりと並んで、コミットを見せた。この場で、ZTEは「ZTE Fire」を発表。同端末は同年7月にスペインなどの店頭に並んだ。

2012年に見せられたGalaxy S2にインストールされたFirefox OSの前身

 JollaはNokiaで「MeeGo」の開発に携わっていた人たちが中心のプロジェクトだ。Sailfish OSというOSのライセンスビジネスを目指し、それを見せるために初代機「Jolla」は自社で製造した。ハイエンドのスペックを持ったJollaは2013年末にリリースされた。

 TizenはMeeGoの終了後に生まれたオープンソースのモバイルプラットフォームプロジェクトで、SamsungとIntelが中心となっている。Samsungの存在が見えるためか端末ベンダーの関心は得られず、Samsungもスマートウォッチなどスマートフォンではないものに使っている。

 一番スローだったのがUbuntu(Canonical)だ。延期があったものの最終的に2015年夏にBQより端末が販売された。

Firefox OSの失敗を内部者が分析

 参画するベンダーや事業者の勢いはあれど、成果は出ず。次第に勢いを失っていった。

 着火点も早かったが、引き際も早かったのがFirefox OSだ。2015年末にスマートフォン向けの提供をやめ、IoTにフォーカスをシフトさせた。だが、Mozillaは2017年2月にIoTプロジェクトにも終止符を打つ。プロジェクトに関わっていた約50人がレイオフとなったようだ。

 かつてMozillaにとっての発表の場だったMWC。その余韻が残る3月初め、Mozillaの開発者が「The Story of Firefox OS」というブログ記事を公開した(https://medium.com/@bfrancis/the-story-of-firefox-os-cb5bf796e8fb)。Boot to GeckoからConnected Deviceプロジェクトまで何が起こったのかを詳細に綴ったものだ。

 ブログを書いたMozillaのBen Francis氏は、デザイン・エンジニアリング・製品・提携の4つでミスがあったと分析している。たとえば製品では「オープンだけでは売り込めないとわかった後に」エントリークラスに狙い(25ドルのリファレンス端末もリリースされた)を定めたことを上げている(KDDIはギーク狙いの「Fx0」を出したが、これすらも成功とは言えなかった)。

auから発売された「Fx0」

 提携については、「キャリアとOEMを大切にしすぎて、エンドユーザーのニーズと(自分たちの)最初のミッションを優先にできなかった」という。

 製品の価格帯については、一理あるだろう。Firefox OSはスマートフォンが普及していない途上国向けに、安くスマートフォンを供給したいというキャリアのニーズもあり、ハイエンドを作ることができるOEMを狙う代わりに、安価なスマートフォンを何台も作ってしまった(それを一番信じていたであろうLi Gong氏は結局Mozillaを辞めたが、その際に台北オフィスにいたスタッフも連れて行ってしまったという)。

 携帯電話のマーケティングは、フラッグシップのハイエンドを作ってブランドを確立することが重要だ。ハイエンドを買えない人はミッドレンジ、ローエンドを買うが、あくまでも「GalaxyのSamsung」と思って買っているのだ。自分たちにお金が落ちる仕組みをFirefox OSを通じて作れないか、というキャリアに引っ張られたのは大きかったかもしれない。

 タイミングも悪かった。Mozillaは主力の「Firefox」ブラウザでのシェア争いで苦戦(ここでもGoogleと戦っていた)、Firefoxのバイスプレジデントを務めFirefox OSの初期を盛り上げたJohnathan Nightingale氏が去った。

 Firefox OSを支援していたBrendan Eich氏(JavaScriptのオリジナル開発者)はMozillaのCEOに就任したものの10日もしないうちに同性婚に反対していた過去に反感をかって、退任に追い込まれた。そしてB2Gを開発した”Firefox OSの父”Andreas Gal氏、Mozillaの設立メンバーでもあるMike Shaver氏など、主要な人物が抜けていった。

 携帯電話向けのOSとは、単にソフトウェアを開発すれば良いというものではない。Mozillaにとってはこれまでにないスキル(交渉や協業)や業界知識が必要だったはずだ。

 このほか、Francis氏はアプリストアなどAndroidを真似た(「市場に早く出そうと焦ったため」)ことが間違いとしているが、オリジナリティーがあるものにしていたところで成功したかどうかはわからない。

 Jolla、UbuntuはAndroidに外観が似ていないが、かといって消費者が飛びついているわけではない。そのJollaのCEO、Sami PienimakiはFirefox OSの撤退について「(ともに現状を変えようと戦ってきたことから)残念」としながらも、「ウェブ技術でスマートフォンOSを作るというのはちょっと無理があった」とコメントした。

 Firefox OSを搭載したスマートフォンは20機種以上が登場、30以上の国で発売された。MozillaはFirefox OSスマートフォンの出荷台数を正確に把握できなかったようだが、Francis氏は「500万台」と予想している。

PCのWindowsになったAndroid、シェアは8割超

 Mozillaのほか、Ubuntuもスマートフォン分野での方針を転換している。Jollaは「2017年中に黒字化」というものの、主要メンバーがいなくなった後に、やっと体制ができつつあるところだ。

 一方でAndroidのシェアは81.7%(2016年第4四半期、Gartner調べ)、前年から1ポイントアップしている(AndroidとiOSの2極状態に変化をもたらすことができるとすれば、それこそMicrosoftぐらいではないかと思う)。

 今年のMWCのキーワードの一つが”ノスタルジー”だろう。iPhone登場から10年、携帯電話の歴史をiPhoneの前と後に分けるなら、iPhone前の時代を形作ったNokiaブランドが復帰した。一方でNokiaがドン底に落ちた時に王座を獲ったSamsungは「Galaxy」とだけ記した白いブース(かつてSamsungはNokiaと同じブルーのブースだったが)で、向かいのHuaweiを睨んでいた。

 AndroidはPCのWindowsと同じ地位についたが、業界は少しずつ変化している。Mozillaはモバイル向けのOSから完全に撤退したが、将来は誰にもわからない。将来別の形でMWCに登場することがあるのかもしれない。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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