ビデオへのコンプレックスは、すぐに捨てた方が良い

文●ASCII.jp編集部

2017年04月12日 17時00分

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初めてのスマホジンバル撮影に臨んだブリオニーズ・リージョナルパーク。バークレーから車で30分弱のところにあります

 サンフランシスコ・ベイエリアはまだまだ安定した天気になりません。

 先週末はヒョウが混じるような激しい雨の降り方で、バークレーから少し北のエリアは週末なのに停電に見舞われた場所もありました。そして今週も、残念ながら週の中頃からは雨の予報です。

 こちらは水不足だったので、雨が降ることは非常にありがたいのですが、カリフォルニア州の東端を構成するシエラネバダ山脈の雪も例年になく多く積もっており、次の冬に平年通り雨が降るなら、おそらく水不足は解消してしまうことになるでしょう。

 晴れれば20度以上、雨が降ったり曇ったりすると12~13度、というわりと振れ幅の大きな春の陽気ではありますが、晴れの日はとにかく外に出て太陽を浴びながらの散歩やハイキングにぴったりの季節となりました。

 個人的にも美しいバークレーの散歩の風景をビデオに収めて皆さんに伝えたいと思うようになりました。しかしながら、ビデオというのは筆者にとっては、写真以上に「越えられない一線」のような気がしてなりません。

 高校生に話を聞くと、YouTuberの人気もあって、ビデオ撮影にとても興味があるようです。あるいはSnapchatやInstagramですでにビデオを公開していたり、TwitterやFacebookでビデオをライブ配信している人もいました。

 少なくとも、筆者ほどビデオに対する特別な意識はないように見えます。

カメラとスマホの境界線

 筆者は2004年にNikonのデジタル一眼レフカメラを購入しましたが、それ以前は、父のお下がりのオリンパスの一眼レフカメラ、カシオQV30やソニーCyber-shot DSC-F1、富士フイルムFinePix 40iといったカメラを持っていました。書き出してみると、わりと色々試していたんですね。

 一方、ケータイはずっとドコモだったので、J-PHONE(当時)やauを使っていた人たちに比べて、カメラ付きのモデルの登場が遅く、長らく写真はデジカメという残念な時代が続いていました。

 しかし、カメラを持ち歩く人を爆発的に増やし、ほぼ全員という状態にまで引き上げたのはカメラ付きケータイの功績とも言えるわけです。この「全員が持つようになった」という変化は、画質云々以上に大きな変化です。

 スマホ化されてからはケータイ時代を引き継ぎつつ、デジカメ並みの画素数と画質を誇るハードウェア的進化がありましたが、同時に、エフェクトなどの撮影機能をアプリで自由に追加できるソフトウェア的進化が加えられ、完全に新しいカテゴリを確立しました。

 現在、iPhone 7は1200万画素。ビデオも4Kで撮影できるようになりました。2015年発売のiPhone 6sから4Kをサポートしていましたが、当時から今も使っているミラーレス一眼、富士フイルムX-T10の録画機能はフルHD止まりであることから、スマートフォンの方がビデオ性能に関しては上、ということになります。

 それでも、レンズのバリエーションや画像処理エンジンのキレイさから、やっぱりX-T10で撮影するビデオの方が、iPhoneよりも味わいがあるように感じるのですが、iPhone 7では強力な光学手ぶれ補正も効くことから、両手で固定して撮影する場合、iPhone 7の方が安定したビデオを撮影することができるようになりました。

 昔からカメラを使っていると「それでもやっぱり」という後ろ髪を引かれる部分もあります。しかしスマホのカメラの進化と発展をポジティブに受け止めなければ、いつでも映像がクリップでき、その場で編集したり共有できるという、画質や性能とは異なる体験を逃してしまうことにもなります。

ビデオはやっぱり難しい

 小見出しの話の前に、写真って難しいですよね。「よい写真」というものの定義もなかなか難しくて、光や色、構図、瞬間の迫力、自分が伝えたいことなど、要素がとてもたくさんあって、そのすべてに満足がいく写真を数少ないシャッターチャンスで実現することはなかなかままなりません。

DJI OSMO Mobile。スマートフォンを装着すると、安定したビデオ撮影を行えます

 スマートフォン、特にiPhoneのカメラの場合、基本的には被写体にカメラを向けてシャッターボタンを押すだけになっていて、シャッターを向ける向きと押す瞬間以外を、iPhoneが勝手にやってくれる仕組みです。もっとも、最新のiOSではマニュアル操作も可能になっていますが。

 写真でも難しさを感じるのに、それがビデオになるとどうでしょう。今度は時間軸という新たな要素が加わってきます。厳密には写真にも、シャッタースピードという時間の要素はあるのですが。

 ビデオの録画ボタンを押してからもう一度録画ボタンを押して止めるまでを見栄えのする形で収めるのも難しければ、いくつかのクリップを繋いで編集するのも難しいわけです。

 そして、時間軸は別の意味でもビデオにつきものです。たとえば5分のビデオを作ろうとして、5分の撮影だけで終わる人はほとんどいないでしょう。台本をきっちり作って、1発OKになるように収録するなら話は別ですが、編集となると撮影にも編集にも、絶対5分の5倍は時間がかかるはずです。

 難しい難しいでは単にコンプレックスを感じているだけに聞こえますし、どんな目的で、どんな映像を撮りたいのか、という部分もはっきりさせた方が良いでしょう。テクニックの前に、自分の好きな映像を見つけることが重要、というわけです。

 ちなみに、iPhone 7と、ビデオ映像を安定させるスタビライザー(ジンバル)、DJI OSMO Mobileを使って、かなり急な坂もあったハイキングをビデオにまとめました。ジンバルを使った撮影は初めてだったのですが、どうしてもパンの動きが単調で退屈ですね。

SnapchatにInstagram Stories

 こうして筆者が動画に対して悩んでいる間に、時代はどんどん進んでいきます。Twitterが買収したVineは、6秒という短い動画をシェアする仕組みで一世を風靡し、そして消えました。また、すでにビデオを日常会話として扱うアプリはたくさんあります。

 Snapchatでは、デコレーションできるビデオをシェアする仕組みを取り入れましたし、Instagramも追随して24時間だけ公開する写真・ビデオを織り交ぜてデコれるようにしました。

 これらの新しいビデオの価値観を見ていると、ビデオをどう撮影して、どう編集して、という悩んでいる暇はありません。とにかく撮影してすぐシェア。その最たるものが、FacebookやTwitter(Periscope)でのライブビデオ配信です。

 一度スマホからのライブ配信を体験してみると、少し納得する部分もあります。SnapchatやInstagramは、どちらかというと、ライブ配信に近い感覚なのです。

 デコレーションという編集は加えますが、とにかく目の前のものをすぐにシェアすることに価値がある、というわけです。後で見られるかどうかは関係ありません。どうせ24時間で消えてしまうんですから。

Apple Clipsはちょうど中間的な存在

 Appleは先週、「Clips」というビデオアプリを公開しました。Clipsを使って見ると、ちょうど普通のビデオ撮影とライブ配信の中間のような使用感でした。

Apple Clipsの録画画面。とにかく録画ボタンを押している間だけ、カメラの映像や録画してあったビデオが記録される仕組みです。ライブ感ある撮影&編集が可能です

 Clipsの使い方は単純明快で、カメラだろうが、スマホに保存されている写真やビデオであろうが、とにかく録画ボタンを押している間、カメラの映像や撮影してあったビデオの映像が記録されます。

 その間に喋ればアフレコできるし、声を字幕にしてくれます。とにかく、録画ボタンを押している間だけが記録され、編集できるという仕組み。失敗したらやり直せばいいだけ。

 つまり、1分のビデオはほぼ1分で仕上がる、というわけです。厳密には書き出す時間が必要ですが、撮影と編集は限りなく1分に近い時間で終わるのです。

 これにはなるほどなと唸りました。もちろん、しっかり三脚を立てて撮影するビデオとは違いますが、1分のビデオを1本作るのか、1分のビデオが同じ時間で5本できるのかでは、コミュニケーションを目的とした場合大きな違いになりますよね。

 Apple Clipsは、Snapchatやライブ配信といったインスタントなビデオ時代に乗り遅れつつある筆者を含む人たちにとって、その感覚をぐぐっと引き寄せてくれるような存在に思えてきます。

 下の動画は、Clipsダウンロード初日に作ってみたサンプルです。

 iPhoneをお使いのみなさんも、Clipsでのビデオ撮影、試してみてください。きっと目から鱗が落ちると思います。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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