ソフトバンクが出資したコワーキングスペース、WeWorkでの1年間

文●ASCII.jp編集部

2017年05月03日 10時00分

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WeWork Berkeleyでの先週の金曜日。あろうことかノートパソコンやiPadの充電器を忘れて、こんな無様な仕事スタイルになってしまいました。USB Type-C様々……

 5月になってしまいました。新生活を迎えた方は、この1ヵ月間、いかがお過ごしでしょうか。フリーランスで記事を書かせていただいている筆者は、仕事を始めた1年目と、米国に引っ越してきた6年目以外は、さほど新生活らしいイベントはなかったのですが、少し細かく振り返れば、新しい仕事場を採用して1年と1ヵ月目が過ぎました。

 筆者は東京にいるときから、自宅で仕事をしていました。自宅には24インチの古いApple Studio Displayを設置し、メインマシンのMacBook Proを接続して仕事をしていました。米国に来てからは、外部ディスプレイなしで使っていましたが。

 米国暮らし5年目になったところで、筆者が住むバークレーの駅前に、WeWorkというコワーキングスペースができました。そこで昨年から、そのWeWorkのメンバーになり、フリーランスになって初めて、自宅以外の「仕事場」というものを手に入れました。

アメリカへの投資に熱心なソフトバンクが
3億ドルを出した「WeWork」とは

 ソフトバンクはトランプ政権になってから、米国への積極投資を打ち出しています。同社は米国第4位の携帯電話会社Sprintを傘下に収めており、第3位のT-Mobile USとの合併を目論んでいる企業としても知られています。

 加えて、英国では現在のスマホやタブレットのプロセッサ設計に欠かせない企業であるARMを手中に収め、アジアだけでなく、シリコンバレーでもウォールストリートでも、重要な企業となっています。そんなソフトバンクが、2017年3月、WeWorkに3億ドルを出資しました(https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-03-21/softbank-invests-300-million-in-wework)。

 ソフトバンクがこのコワーキングスペースに付けた評価額は約2兆円。コワーキングスペースは貸オフィスと和訳することもできることから、不動産業に分類すべき事業です。

 たとえばバークレー駅前の「WeWork Berkeley」も、当初ビルの1階部分のロビーを含む3フロアほどで始まりましたが、今では7フロアすべてをWeWorkで占有するようになりました。しかも、サンフランシスコ市内にはすでに6ヵ所あり、シリコンバレーの都市サンノゼにも進出しました。

WeWork Berkeleyの会議スペースには、ホワイトボードと薄型ディスプレイが備わっており、アプリから予約して利用できます

作り方もプラットフォーム化しているコワーキングスペース

 テクノロジー企業さながらの急拡大と評価額については、実際に参加して内部を見るとわかってきます。それは「プラットフォーム化」というキーワードでまとめることができます。

 まずはオフィス作り。いくつかのWeWorkのオフィスを訪ねましたが、モダンでおしゃれに統一されている中で、それぞれ個性を出しているインテリアのデザインが印象的です。

 家具は内製で、バークレーの場合はリクレイムドウッド“風”の加工が施された木材や、ヒッピーを思わせるカラフルなファブリックがあしらわれています。他のオフィスに行ってみると、もっとガラスを強調したり、黒の引き締まったスタジオ的な印象が強い場所もあります。

 「Instagram映えしない仕事場なんて……」というコンセプトを聞けば、なるほど、どこを切り取ってもオシャレに映る、という納得感があります。

 これに対して、オフィス自体は非常に効率を重視したスペース作りが行なわれています。各オフィスで若干の設備の違いはありますが、初めて訪れた場所でも何も説明を受けなくてもすぐに勝手がわかって使える点で、基本的な構成が共通化されていることに気づきます。

カフェでの料金やWi-Fiの快適度と比較すれば
冷静に考えて、安い料金

 このような工夫の結果は、価格に現れています。

 バークレーの駅前で、小さなスタジオタイプの物件を借りて個人事務所を開設するなら、家賃は月1500ドル、さらにビジネス対応の高速インターネットに80ドル、光熱費60ドルの計1640ドルが毎月かかかるでしょう。これに家具や調度品などを揃え、使うかどうかわからないカラーレーザープリンタなどを用意すれば、さらに費用は膨らんでいきます。

 もしWeWork Berkeleyで1人用の個室を借りるなら、600ドルで済みます。そこには前述のあらゆるものに加えて、ホワイトボードと大型ディスプレイを備えた会議室、広々としたキッチンとラウンジ、飲み放題のコーヒーと生ビールまでついてきます。

WeWork Berkeley5Fのラウンジ。各フロアのキッチンにはコーヒーとミルク、そして生ビールサーバーが設置されています。フロアごとに銘柄が違っていて、はしごしながら飲み歩くメンバーも……

 設備の条件は同じで、個室が要らないということであれば、350ドルのホットデスク(空いている机を自由に使える)と、450ドルの固定デスクというプランもあります。

 たとえば、350ドルのホットデスクの場合、カフェで仕事をする人なら飛びつくべき価格です。20日の稼動でコーヒーを1日に4杯飲むとすると、それだけですでに1日16ドル、20日で320ドルになってしまいます。もし金曜の午後にビールを飲みながら仕事をするなら、8ドルが4日間で32ドル、この時点で350ドルを超えてしまいます。

 その上、米国らしい理由かもしれませんが、カフェで仕事中のノートパソコンを置いてトイレに立つことは、どうぞ盗んでくださいと言っているようなものです。身近な人に「ちょっと見てて」と告げなければなりません。

 また、大抵のカフェではWi-Fiがありますが、大してお客さんがいなくても、遅いこと氷河の如し。仕事にならないことの方が多いのです。

 価格だけでも安い上に各種条件まで含めれば、米国の都市の中でフリーランスとして働く場合、「破格」であることにすぐに気づくのです。

世界規模のSNSが備わったコワーキングスペース

 WeWorkの「破格」さは、フリーランスでは得にくい福利厚生面にも表れます。たとえば、米国では非常に高い健康保険も、WeWorkを通じて良い条件での加入が可能です。

 仕事に使うMS OfficeやAmazon Web Serviceなどにも割引が受けられるほか、求人サイトや会計ソフトなど、さまざまなソフトウェアやウェブサービスで、優遇された料金で利用できるのです。さらに、これは先日実際に利用したのですが、出張する場合でもホテルやレンタカーなどの割引サービスも使うことができます。

 さらに、世界中のWeWorkメンバーがつながるコミュニティも存在しています。

 このコミュニティでは、業種ごとにコミュニケーションを取ることができるほか、仕事の依頼も飛び交っています。たとえば、ロンドンのメンバーが、世界中のメンバーに対して、ソーシャルメディアキャンペーンの設計ができる人を募集し、それにサンフランシスコのメンバーが応えたり、ニューヨークのデザイナーがアプリ開発者を探したり。

 他にも、会計士、弁護士、ライター、フォトグラファーなど、さまざまな業種のフリーランスもしくは小規模企業が、お互いに仕事を融通し合う関係性が作られていたのです。

 これはWeWorkに参加するメリットをさらに大きくしています。仕事場を求めてメンバーになった場所から、仕事が得られるのです。こんなに効率的なことはないでしょう。

日本での展開もきっと考えているはず……
課題は家賃よりも日本での働き方?

 WeWorkのソフトバンクによる投資で、先進国でほぼ唯一の空白地帯である日本でのWeWork展開の道筋も見えてきました。確かに東京は不動産価格が高いと言われていますが、それよりも3倍近いサンフランシスコで成立しているのです。

 東京で踏み出さない理由はそこではなく、働き方のほうでしょう。企業や個人がネットワークの中で働くスタイルが日本で成立するのか。あるいはWeWorkがそうしたトレンドを後押しできるのかという点が、成否のポイントになるのではないかと思います。

 そこには、中小企業やフリーランス同士だけではなく、日本の上場規模の企業が、うまく個人や中小企業とつきあえるか、という点にかかっているのではないでしょうか。

 たとえばの話をするならば、ソフトバンクさんが広告代理店を通さずに、直接WeWorkメンバーのフリーのデザイナーに仕事を発注できるかどうかが試金石と言えますね。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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