最高級キーボード「HHKB」が良すぎるのでオススメしたい

文●柳谷智宣

2017年07月16日 16時00分

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 高級キーボードといえばPFUの「Happy Hacking Keyboard(HHKB)」。とはいえ、名前は聞いたことはあるが、量販店で見て触ってみると「こんなの使い方わからない!」と購入まで至らないことが多いようだ。筆者も知人に勧めると「使いにくい」というリアクションが返ってくることがあり、驚愕する。

 筆者は、ライターとして20年間キーボードを打ち続けているが、最高に「使いやすい」から使っているのである。今回はHHKBを触ったことのないPCユーザーのために、HHKBにデビューする技を紹介しよう。

日々たくさん入力する人であれば、元が取れるし快適になる「HHKB」。写真は発売されたばかりの「HKKB Professional BT」のホワイトモデル

6ラインナップと英語/日本語
刻印あり/無刻印を整理する

 「HHKB」は「Happy Hacking Keyboard」の略。初代モデルが20年以上前に発売されたこだわりのキーボードで、以来、様々なモデルが登場している。キーボード特集などがあれば、高級キーボードの代名詞として取り上げられることが多く、目にしたことがある人は多いだろう。しかし、興味を持つものの、量販店の実機を触り、「これは無理」と購入まで至らない人も多いのではないだろうか。

 確かに、あまりキーボードを使わない人にオススメする製品ではない。まずキー配列が独特なので、慣れるまでに少し時間がかかってしまう。そして、価格が2万9700円(税込)とキーボードとしては少々お高めなところもネックになる。しかし、文章やプログラムをたくさん書く人なら、一度は試してほしい製品なのだ。なぜなら、作業効率が格段にアップし、さらに手首の負担まで抑えられるからである。時間と健康というプライスレスな効果を得られるので、この価格も十分にペイできるだろう。

 HHKBは現在、6つのラインナップを揃えている。さらにその中に配列違いや刻印違いがいくつもあり、混乱するかもしれないので整理しよう。まずは、キーの仕様で静電容量無接点式とメンブレンスイッチの2種類がある。メンブレン式を採用しているのは有線の廉価モデル「HKKB Keyboard Lite2」(5400円)と「HKKB Lite2 for Mac」(5800円)の2ラインナップ(ともに税抜)。

 ワイヤレスなら「HKKB Professional BT」の一択。価格は2万7500円(税抜)。有線でいいなら、英語配列が「HKKB Professional2」、日本語配列が「HKKB Professional JP」でどちらも2万3000円(税抜)と少し安い。加えて、高速タイピング性能を追求した「HKKB Professional Type-S」もラインナップ。筆者が長年使っている主力モデルで、価格は2万7500円(税抜)となる。

 わかりにくいが、「HKKB Professional BT」と「HKKB Professional Type-S」のそれぞれにも英語配列と日本語配列モデルが用意されている。そして、それぞれの英語モデルには、キートップに刻印のない無刻印モデルが用意されている。ただし、無刻印モデルはドヤ顔する以外に効果はない。そもそも、HHKBは日本語配列でさえかな刻印のない上級者向けだし(もちろん、かな入力自体は可能)、墨色(ブラック)モデルは印字がとても見にくい。HHKBデビューなら普通に刻印ありをオススメする。ただ、オフィスなどでのドヤ感はハンパないので上級者ならアリ。

 ちなみに、「HKKB Professional Type-S」のワイヤレス版はないし予定もない。個人的には待望しているモデルだが。

有線の廉価モデル「HKKB Keyboard Lite2」。白色のMac版もある
唯一のワイヤレスモデル「HKKB Professional BT」
高速入力モデル「HKKB Professional Type-S」
定番の英語配列「HKKB Professional2」
定番の日本語配列「HKKB Professional JP」
無刻印モデルだと、HHKBに慣れたユーザーでも戸惑うことがある
墨色のキートップはそもそもが見にくい
白色の日本語配列キーにもかなの印字はない

HHKBのウリはそのコンパクトさと
しっとりとしたタイピング感

 HKKBの最大の特徴は、その凝縮されたコンパクトボディーだ。「HKKB Professional BT」であれば、W294×D120×H40mm、重量は530~540gほど。このコンパクトボディーの恩恵は、もちろん机の上で占領するスペースが小さいこともそうなのだが、手首を動かす範囲が小さいということでもある。キー配列を見ればわかるが、一般的なキーボードにあるファンクションキーがない。これはFnキーと併用して数字キーを打つことで入力できる。一手間多いと感じるかもしれないが、慣れるとホームポジションのままスピーディーにファンクションキーを入力できるのでラクだ。

 この手首の移動が、塵も積もって腱鞘炎になる。筆者は大昔、大きめのメカニカルキーボードで、カチャカチャッターン! といけいけで原稿を書いていたら腱鞘炎になり、とても苦労した。

 本原稿ではワイヤレスである「HKKB Professional BT」のホワイトモデルが登場するが、これは2017年7月14日に発売されたばかりの新色。いち早くお借りすることができたので、早速使い込んでいる。キートップの視認性は段違いだ。

英語版のキーボード配列(下)と日本語版のキーボード配列(上)
キーボードの裏の足を起こすことで、角度を3段階で調整できる
とてもコンパクトなボディーでほとんど手首を動かさずにタイピングできる。打鍵感も良好だ

 タイピング感は、しっとりとした打ち心地で、軽快に入力できる。押下圧は45gで、キーストロークは4mm。もちろん、キーピッチはフルサイズの19.05mmだ。打ち込んだときの剛性感もガッシリしており、高速入力が可能だ。

 ちなみに、「HKKB Professional Type-S」はキーストロークが3.8mmとなり、タイプが異なる。こちらは、同じく押下圧45gなのだが、通常モデルより重く感じる。そして明らかにタイプ音が静かになっている。

 このタイピング時のしっとり感は、静電容量無接点式ならでは。キーを押し込んで電極が触れることで判別する方式と異なり、バネを押し下げることで電荷の容量変化を検知する方式なので、3000万回以上の耐久性を持っている。筆者も何千万回と「HKKB Professional Type-S」のキーを叩いたが、入力しづらくなったキーどころか、キートップの印字が薄れたキーさえない。驚異的な耐久性といえる。この頑丈さは、キーボードを買い換える必要がないので、コストパフォーマンスが良いともいえる。

 連続して勝手に文字が連打されるチャタリングも起きない、と謳っている。確かに「HKKB Professional Type-S」では起きていないが、ワイヤレスモデルの「HKKB Professional BT」では遭遇したことがある。とはいえ、マレなのでそれほど気にする必要はないだろう。

ファンクションキーはFnキーと数字キーを同時押しして入力する
筆者の主力キーボードの「HKKB Professional Type-S」。何年も使っているのに、キー印字の薄れさえない

背面のDIPスイッチで使い勝手をカスタマイズできる

 HHKBは、背面のDIPスイッチで動作を切り替えられる。たとえば、「HKKB Professional BT」の日本語版であれば、6種類のDIPスイッチが用意されている。

 工場出荷時はすべてオフになっているが、ピン先などでオンにすると設定されているモードになる。ちなみに、DIPスイッチの切り替えは必ず電源をオフにした状態で行なう必要がある。

 Mac/iOSでももちろん利用できるが、その場合はスイッチ1をオンにする。スイッチ2をオンにすると「Control」キーが「英数」キーになり、左の「Fn」キーが「Ctrl」キーになる。左下にCtrlキーが欲しい人は利用しよう。

 スイッチ3をオンにすると「BS」キーが「Del」キーになる。スイッチ4をオンにするとカーソルキーが別のキーになる。そもそも、英語版にはカーソルキーはなく、Fnキーと「@」「;」「:」「・」キーを押すことでカーソルを移動する。その入力に慣れているなら、「↑」を「Shift」、「↓」を「◇」、「←」を「Del」、「→」を「右のCtrl」キーとして利用できるようになる。スイッチ5は、左の「◇」と「Alt」キーを入れ替えられる。

 スイッチ6では「Wake Up Enable」をオンにできる。「Wake Up Enable」にすると、キー入力が30分間なくても省電力モードに移行しなくなる。その分電池消費が激しくなるので、通常はオフのままでいいだろう。USB接続で給電するのであれば、自動的に「Wake Up Enable」になる。

背面のスイッチを切り替える

3日で慣れるが店頭で触ったくらいでは違和感が残る

 日本語入力をする際の「半角/全角」は「HHKB」キー、「Windows」は「◇」キーなど、5種類のデザインキーに割り振られている。これもすぐに覚えられる。「Home」や「End」「PrintScreen」といったキーも、Fnキーと合わせて利用する。繰り返しになるが、Fnキーを押す手間はあるが、ホームポジションから手を動かさずに入力できるのはとても楽。

 もちろん初めて使う場合は、いちいち手が止まるかもしれない。そのため量販店の店頭で数分間触ったくらいでは、本当の良さが伝わらないかもしれない。店頭で触る場合はキータッチとタイプ音、そして手首の可動範囲に注意してチェックしてほしい。これが全部合格なのであれば、入力時の違和感は3日で慣れる。慣れるというよりは、心地よくなり離れられなくなる。

 HHKB唯一のマイナスポイントがこれ。HHKBを業務で使うと効率は格段に向上するのだが、逆にHHKB以外のキーボードを使うと格段に効率が落ちてしまうのだ。先日、大阪出張の際、ホテルでがっつり原稿を書く必要があり、迷ったのだがHHKBを持って行った。荷物を持っているときは後悔しかけたのだが、作業を始めると持ってきてよかったと実感。HHKBでなければ、締め切りに間に合わなかったかもしれない。

Windows PCとMacではデザインキーの動作が異なる
2017年6月の大阪出張時の作業風景。新Surface ProにHHKB BT、MX MASTER 2Sの最強コンビだ

下敷きで意外とタイプ音とタイプ感が変わる

 HHKBはコンパクトで軽いため、タイプ音やタイプ感はデスクへの衝撃と反射も含んでいる。そのため、下にタオルを敷くだけでずいぶん感触が変わる。静かな方が好きな人にはお勧めだ。しかし、超絶スタイリッシュなHHKBを使っているのに、タオルって!という人には、公式オプションの「HHKB吸振マット」がある。価格は2500円(税別)で、バード電子製。有線用と無線用は形が異なるので注意が必要だ。

 マイクロセルポリマーのシートで裏に粘着テープが付いており、HHKBの裏に貼り付ける。シリアル番号が見えなくなるので、あらかじめ撮影して保存しておくといい。マットは3mm厚で、装着すると格段に静かになり、打ち込んだときの感触も柔らかくなる。キーボードも滑りにくくなり、一石三鳥だ。

「HHKB吸振マット(BT用)」。価格は2500円
裏面に貼り付けたところ。これだけでずいぶん手応えが変わる

 筆者は特にタオルなどのキーボードカバーなどをしておらず、その代わりに1年に1回キーを全部外して掃除している。キートップは新品に戻るのだが、ボディーの黄ばみは落ちにくく、年季が入ってきている感じ。とはいえ、超絶スタイリッシュなHHKBを使っているのに、タオルって! という人には、公式オプションの「キーボードルーフ Pro RF-HHPRO」がある。価格は4000円(税抜)で、キーボードを使っていない時のほこりや誤操作を防いでくれる。こちらもバード電子製だ。アクリル板とHHKBが直接触れることによる傷を気にするユーザーのために、極細のウレタンクッションを付属しているこだわりぶり。

「キーボードルーフ Pro RF-HHPRO」。価格は4000円
当たり前だが、ぴったりフィット。HHKBのロゴがかっこいい

 以上が、HHKBの紹介となる。主に「HKKB Professional BT」について述べたが、他の静電容量無接点式モデルもほぼ同じだ。どれをとっても最上級の使い心地を得られること請け合い。

 そもそも入力する文章量が少なかったり、いろいろなキーボードを使い分けなければならない人には向いていないHHKBだが、たくさんタイピングする人にはぜひオススメしたい逸品。抜群の耐久性を誇るので、買い換える必要がほとんどなく、コストパフォーマンスもいい。頑張って業務に使えば、3日もかからずに以前と同じ操作で入力できるはず。1ヵ月も過ぎれば、以前の入力速度を超え、キーボードを叩くという意識も消え、創作に集中できるようになるだろう。


筆者紹介─柳谷智宣

著者近影 柳谷智宣

1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。パソコンやIT関連の媒体で、特集や連載、単行本を多数手がける。PC歴は四半世紀を超え、デビューはX1C(シャープ)から。メインPCは自作、スマホはiPhone+Xperia、ノートはSurface Pro3とMacbook Air。著書に「銀座のバーがウイスキーを70円で売れるワケ」(日経BP社)、「Twitter Perfect GuideBook」(ソーテック社)、「Dropbox WORKING」(翔泳社)、「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)など。筋金入りのバーホッパーで夜ごとバーをハシゴしている。好きが高じて、「原価BAR」を共同経営。現在、五反田・赤坂見附・銀座で営業中。


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