「縦長ディスプレー」と「2眼カメラ」のXperiaを出さないワケは? Xperia XZ1開発者に直撃

文●平澤寿康 編集●ゆうこば

2017年09月06日 15時10分

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左からXZ1、XZ1 Compact

 ソニーモバイルがIFA 2017に合わせて発表した、最新フラグシップスマートフォン「Xperia XZ1」および「Xperia XZ1 Compact」。それら2製品について、IFA 2017会場で詳しく話を聞いてきたので、その様子をお届けする。

 話を聞いたのは、ソニーモバイルコミュニケーションズ UX商品企画部門 UX商品企画2部 統括部長の安達晃彦氏だ。

16対9のディスプレーはXperiaの魅力を引き出すための最良の形

ソニーモバイルコミュニケーションズ UX商品企画部門 UX商品企画2部 統括部長の安達晃彦氏

──IFA開幕前日のソニーの発表会で、Xperia XZ Premiumが好調、という話がありましたが、それはどのように好調なのでしょうか。

 数字的にも我々の期待値を上回る売れ行きという点は、ビジネスとしてありがたい部分です。それに加えて、我々の意図通りのターゲットユーザーから、意図以上に評価いただいた、という点が大きいと思っています。

 ターゲットセグメントは、画質や音質にこだわりを持っているガジェット好きの方など、ソニーのユニークさを感じている人たちでした。そして、そういった人たちから、構造的な熱の対策や、画質チューニングのマニュアル設定などの、ユーザーさんに気づかれにくい部分について、クチコミなどで反響をいただいていますし、満足度も非常に高いものとなっています。

──発表会では、そのXZ Premiumを受け継ぐ新しいフラグシップスマートフォンとして、Xperia XZ1とXperia XZ1 Compactが発表されました。

 最初のきっかけであるXZ Premiumが、想定以上に受け入れられましたので、いい流れができていると思います。そして、そのXZ Premiumの商品としての完成度の高さを、結果として次の商品につなげられているとことが、XZ1とXZ1 Compactのいいところかなと思っています。

Xperia XZ1。XZ Premiumの流れを汲みつつ、さらに進化させた機能やデザインを実現

──では、そのXZ1とXZ1 Compactで、とくにこだわった部分はどこでしょうか。

 まずは、デザインの進化という部分が大きいと思っています。XperiaではXZから半円形状の「ループサーフェスデザイン」を採用しています。

 XZ Premiumではガラスを使っていた表現を、金属素材に落とし込むことができたのがXZ1です。薄さは7.4mmと、Androidの標準的なサイズを考えると頑張れたと思っていますし、ラウンド形状を含めて持ち心地は上がっています。

 一方、XZ1 Compactについては、同じようにハイスペックを、改めてフラグシップセグメントのコンパクトサイズに、というものですが、このサイズを実現するにはかなり苦労がありました。

 とくに、アンテナを含めたネットワークスピードの維持です。対応ネットワークカテゴリはXZ1のLTE Cat 16に比べてXZ1 CompactはTE Cat 15と若干のビハインドはありますが、十分なキャパシティーを持っています。そういった中で高級感ということで、天面と底面に金属素材を使ってアンテナとして活かしつつ、高級さを表現しました。

 また、X Compactよりも高級感のある表現をしたいということで、ボディーは樹脂への塗装ではありますが、グラスファイバーを練り込んだ「グラスファイバー強化プラスチック」を採用した構造的な部分と、塗装によることでできるビビッドな色が、デザイン上の進化として、仕上がりとしてよくなっていると思っています。その上で、最上位のSnapdragon 835やMotion Eyeカメラなどを入れ込んでいます。

Xperia XZ1 Compactでは、「グラスファイバー強化プラスチック」を採用した構造的な部分と、塗装によることでできるビビッドな色で仕上がりを高めている

──ただ、競合製品でベゼルレスデザインが増えている中、上下のベゼルが太かったりと、どちらかというと1世代前のデザインを引きずっているという印象も受けます。

 今年春ぐらいから、ベゼルレス、液晶のワイド化と言ってもいいかもしれませんが、他社さんの動向も含めて注意深く見ています。

 ただ今回は、薄型デザインの実現と、他社さんにはないカメラの大型センサーをしっかり搭載すること、横にして持った時に前面でしっかりとした音質のステレオサウンドを再生するといった、我々が実現させたい体験を商品に落とし込むためには16対9のディスプレイが最善だったと考えています。

 また、XZ Premiumの流れをしっかり受け継ぐという点では、今回(2017年)のタイミングでは、こういったデザインテーマでまとめています。

 業界の動向はしっかり見ていますし、デバイス進化のトレンドの中で、画面のワイド化をどういったタイミングで、どういった形で、そして、そこで我々の独自性をどうやって出していくか、というところが今後に向けてのポイントになると思います。

実現したいことを製品に落とし込むには、ベゼル幅が広くなっても16:9が最善だった

──側面のアンテナセパレート用の樹脂ラインもかなり残念な印象がありますが、これはどうしようもなかったのでしょうか。

 意外と、あまり言われないんですけどね(笑) それとは別に、いろいろと言われました(XZの)背面のラインは絶対にやりたくなかったんです。

 今回のXZ1では、押し出し一体成型のアルミ素材ということで、アンテナ性能を高性能化しなければならないという中で苦渋の決断だったといってもいいでしょう。

──塗装で隠すこともできたと思いますが。

 そうなると難しいのが、塗装でできる表現は金属でできる表現なのか、という所なんです。XZ1は、金属でしか出せない表現をアルマイト処理で出そうとしてやっています。じゃあ塗装してしまうと、塗装でできてしまうよねということになってしまうので、痛しかゆしなんです。

 マスキング塗装で隠すということもできなくはないんですが、塗装ははげてしまうんですよね。そうすると全部塗装するのかとなると違うことになるので、こういうことになっています。

 プロトタイプから比べると、線を細くして目立たないようにはしているんですけどね。100%満足しているわけではないですが、メタルボディーでXZ Premiumとほぼ同じアンテナ強度を実現していますので、かなりがんばったと思います。

アンテナセパレート用の樹脂ラインは、100%満足はしていないが、がんばったという

Motion Eyeカメラのこだわりと時代をリードする「3D Creator」

──今回、XZ1の裏面カメラ「Motion Eyeカメラ」がやや出っ張っています。この点が気になるユーザーもいると思いますが。

 XZ1 Compactは十分な厚みがあるので、ほぼフラットですが、XZ1はボディーを薄くすることで、カメラが出てしまったというのが正直なところです。

 Motion Eyeカメラ自体が十分な光学性能を得るための高さと、ボディーの薄さとのギャップが、残念ながら出てきているというところです。

XZ1ではボディーを薄くしたためにMotion Eyeカメラが出っ張っている

──合わせて、カメラ部分の直径がXZ1とXZ1 Compactでは大きさが違うように見えますが、これにも何か意図があるのでしょうか。

 XZ1 CompactでXZ1のカメラの直径にしてしまうと、大きすぎます。逆に、XZ1でXZ1 Compactの直径にすると、貧弱な感じに見えてしまいます。

 ですので、カメラのデザインとしてのハーモナイズを取るために、製品によってリングのサイズを調整しています。今回に関しては、XZ1が基本で、XZ1 Compactはやや小さくした感じです。そしてXZ1では、こういったデザインにすることで、カメラの強さを表現していると捉えていただいていいと思います。

XZ1とXZ1 Compactでカメラリングの直径が違うのは意図して製品によって調整した結果

──最近、競合製品では2眼カメラの採用がトレンドとなっていますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

 今年に関しては、Motion Eyeカメラをしっかり熟成させるというのがミッションでした。将来的には、複数のカメラを使ったときにどういったユニークな特徴を出せるのか、というところを引き続き検討しているという段階です。

 2眼カメラ自体を否定しているわけではないですが、2眼だから何かがすぐにできるというわけでもないと思っていますので。

──では、2眼カメラでどういったソニーらしさを示せるか、追求しているところという感じでしょうか。

 はい、そのように考えていただいてかまいません。

──今回のXZ1、XZ1 Compactで特徴的な機能が、Motion Eyeカメラを使った「3D Creator」だと思いますが、これはどういった意図で搭載されることになったのでしょうか。

 3D Creatorのコアとなっている技術やソフトウェアは、スウェーデンの開発拠点でつくっています。

 以前より3Dのスキャンができるという話はあったのですが、ユーザーが簡単に利用できるものとしてご提供できるのがこのタイミングになった、というのがひとつです。

 また、ARやVRなど、仮想現実に対してどういった表現をするのかという部分で、なかなか具体的な話がなかったところで、この3Dキャプチャーは相性が良さそうということで、今回ご提供することで、ARやVRの取り組みに対して提案したいと考えました。

3D Creatorは、提供できるタイミングが今になったのと、ARやVRとの相性が良さそうと考えて提供することに

 今後は、さまざまなコラボレーションも考えられますし、3Dキャプチャリングというところで業界内で少しでもリードして、Xperiaの特徴としてお届けできれば、ひとつのアドバンテージになるとも思います。

 そして、楽しい感じを出したいというのもあります。単純に3Dでキャプチャーするだけではなくて、それをどう活かすか、お客さんにどう楽しくお届けするか、が重要です。

 技術的には、ソフトウェア、アプリケーションでの技術です。カメラセンサーさえあればできることですので、多面的に展開できる技術となっています。

 ですので、XZ Premiumにもご提供する予定です。ただ、高度な演算が必要となる関係と、光学的な部分もあって、まずは対応機種を限定してクオリティーを担保させていただいて、来年以降の商品にどうやって活用していくか、考えていきたいと思います。

XZ1を手に説明する安達氏

業界最速で提供するAndroid 8.0 Oreoと背面に戻ってきたNFC

──今回、OSとしてAndroid 8.0を業界最速で採用されていますが、これについては、これまでのソニーとグーグルによるさまざまな場面での提携や共同開発が影響しているのでしょうか。

 ソニー全体としてのグーグルさんとの関わりが、より密になっているのはその通りだと思います。ただ、Androidをプラットフォームとして採用しているXperiaでは、モバイルとしてのAndroid OSへの深い関わりがあります。

 象徴的なのが、Android 8.0から「LDAC」が標準搭載になっていますが、我々ソニーが開発したソフトウェアがAndroidに貢献したりとか、やりとりが密になっていくことで、OSのアップデートによる差分が少なく開発できるような体制が整っています。

 だからこそ、ソフトウェアとしての開発スピードや、OSへの追従性が上がってきている、という部分がベースだと思っています。もちろん、ソニー全体の関わりも重要だと思いますが、グーグルのモバイルチームとの関わりが良好であるというところが大きいと思います。

グーグルとの関わりが密になっていることや、アップデートに迅速に対応できる体制が整っていることで、いち早くAndroid 8.0の採用を実現

──NFCが本体裏に戻っていますが、これはユーザーから使いづらいという声を受けてのものでしょうか。

 そういったこともなくはないです。こういったユーザビリティーの部分は、慣れでどうにかなる部分ではあります。XZ/XZsでは、結果としてNFCの一番感度のいいところが前面だったということでした。

 ただ、フィーチャーフォンの頃から、背面をかざすということが染みついているというユーザーさんが一般的なので、XZ1とXZ1 Compactでは、背面に置くことで本来必要のない注意喚起を回避できることになります。

NFCが背面に戻ったのは、ユーザーの声も少なからず影響しているようだ

──今回も、2月のMWCから約半年で、新たなフラグシップモデルが投入されることになりましたが、今後もまた半年サイクルでフラグシップモデルの投入が続くのでしょうか。

 業界の革新のスピードが意外とゆるんでいないな、というのがあります。我々としてご提供したい新しい機能や体験、競合さんと業界を盛り上げていく基礎体力の向上といったものは、1年に限って新モデルをご提供するのではなくて、よりよいXperiaを適宜ご提供するべきだと思います。

 その結果として、半年サイクルになっているように見える商品が出てくることはあり得ると思います。

 ソニーの独自テクノロジー、ディスプレーの画質やカメラの画質、音質などをしっかり磨き上げていくというところや、3D Creatorに代表される、楽しみを付加させた機能など、AV的な進化に加えてXperiaならではの楽しさみたいなものを、いかに付加させていくかというところを、今後も追い求めていきたいと思います。

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