香港ミニチュア展であの「スマホ天国」を見た

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年10月12日 10時00分

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 香港と言えばSIMフリースマートフォンが自由に販売され、プリペイドSIMも身分証明書不要でひとりで何十枚も買えてしまう「スマホ天国」。モバイラーならぜひいちどは訪問してほしい街です。

 そんな香港の街の風景をぎゅっと濃縮してモデル化したミニチュア作品がずらりと展示される「香港ミニチュア展」が9月29日から10月9日まで東京駅前のKITTEで開催されました。

 制作した香港人のミニチュアアーティストたちはどのように香港の姿をモデル化したのでしょう? スマホ天国は忠実に再現されているのでしょうか? 香港在住の筆者がそんなミニチュアたちを見てきました。

あのスマホビルのミニチュアもある
携帯電話のなかったあのころを思い出す

 香港ミニチュア展には大きいものから小さいものまで、合計48のミニチュアが展示されました。縮尺も鉄道模型サイズ(NゲージやHOゲージ)に留まらず、大きめのものもいくつか見られました。

 大きさがいろいろなだけではなく、再現した時代もまちまち。英国領時代の古き良き時代から、返還後の最新2階建てバスが走る新しい光景まで、さまざまな年代の香港が再現されていたのです。

模型とは思えぬリアル感。「スマホビル」先達廣場付近もこんな光景

 まずは、香港と言えば誰もが思い浮かべることのできる、2階建てのトラム。香港島を東西に走るトラムは、いまでも現役の交通機関です。このトラムも地下鉄がまだ開通していない1960年代から70年代には増え続ける乗客をさばくため、後ろに平屋のトレーラーを連結した2両運転をしていました。

 その後、車やバスが増え、道路が混雑しだすとこのトレーラーは廃止になります。しかし、先頭の2階建てトラムはいまもほぼ同じ姿で香港の街中を走っているのです。ちなみに、車両番号120号車は現存するもっとも古い車両。香港で見かけたらぜひ乗りたいもの。

昔のトラムは2両編成で走っていた。1両となったいまも雰囲気は変わらない

 このジオラマの当時は、まだ携帯電話というものは存在しませんでした。ジオラマに登場する人たちの手にも携帯電話らしきものはありません。香港はアジアでも比較的早い時期に携帯電話の普及が始まりましたが、世界初の商用携帯電話の登場は1983年。このジオラマから10年以上後のことになります。

この時代、携帯電話はなかったのだ

 こちらのミニチュアは80年代の香港の街のどこにでもあった一般商店を再現したもの。机の上には黒電話があります。さすがに、80年代はまだ携帯電話は高値で誰もが持つものではなかったのでしょう。

 1983年に香港テレコムが携帯電話サービスを始めていますが、いまとなっては端末代金や料金は不明。おそらくかなり高いものだったと思われます。

1980年代の商店。このころも通話手段は固定電話

既視感のある近代的な町並みも用意
各種広告にはスマホ好きがクスッとくる演出も

 さて、次は年数を進めて、ここ10年くらいの香港の姿。近代的な2階建てバスが走りながらも、古いビルもまだまだたくさん残っています。道に飛び出した看板やビルの2階以上をおおい尽くす広告はいまの香港と変わらぬ光景です。

 よく見ると吉野家っぽい看板も見えますが「Yosyosya」と、本物っぽい名前の店になっています。ほかの看板の名前も香港によく来る人なら「あ、あれだ」とわかるものばかり。

いまでも普通に見かける香港の街中の一シーン

 その中の看板のひとつをアップにしてみると、ありましたよスマートフォンの広告が。サムスン(Samsung)をもじって「SAMSONG S7」とあります。時代設定はさておき、これを見て「ああ、最近の街並みなんだなあ」と香港の人なら誰もが思うことでしょう。

 なお、この端末はサムスンではなく、韓国で発売されたパンテックの「SKY Izar (IM-A630K)」ですね。本体下部が7色に光る、女性向けのオシャレなスマートフォンでした。ということは時代設定は端末発売の2010年ごろでしょうか?

サムスン(Samsung)ならぬ「SAMSON」の広告。端末は実はパンテック

 よく見るとバス停にも同じ広告が並んでいます。こちらはさすがにサイズが小さいためかメーカー名は入っていませんが、チラ見してもスマートフォンとわかりますね。香港ではいまでも、バス停にスマートフォンの広告がよく掲示されています。

スマートフォンの広告はバス停にも並ぶ

ケータイ・アンテナマニアには物足りない?
ジオラマの創作意欲がわいてくるかも

 ちょっと残念なのは、道行く人の手には携帯電話がにぎられていないこと。さすがに、縮尺が小さいのでひとりひとりの手に端末を持たせるのは難しかったのでしょう。

 屋根を見ても、携帯電話基地局のアンテナはなくTVアンテナがあるのみ。香港の街中を歩きながら上を見上げると、あちこちに携帯電話のアンテナが見られます。ちょっと前なら「900MHzだ」みたいなアンテナマニアの楽しみもあったのです。そんな風景もぜひ再現して欲しいものです。

建物の屋上に見えるのはTVアンテナ。携帯電話基地局のアンテナも欲しい

 ミニチュア展には街の風景だけではなく、レストランや宝石店など商店の展示もありました。こちらはいまも街中にある新聞スタンド。香港では雑誌はコンビニのほか、この手の新聞スタンドで買うのが一般的です。

 朝に新聞を買うとティッシュをひとつ付けてくれる店がほとんど。このミニチュアでも右側を見ると新聞の上にティッシュが置かれています。

香港の新聞スタンドはいまも同じ。雑誌も売っている

 さて、置いてある雑誌を見てみると、このミニチュアは本物の雑誌を小さくして置いているようですね。近寄って見てみると、香港のPC系雑誌「PCM」と「e-zone」の2誌が並んでいます。e-zoneの表紙には「小米(シャオミ)」の文字も。こうして本物の縮小版が並んでいるとリアル感が高まります。

香港の2大PC週刊誌もしっかり再現

 リアルなミニチュアと言えば、1970年代を再現したこちらのおもちゃ屋が有名です。作者の方がコレクションした多数のミニチュアをそのまま店頭に並べているのです。

 香港は昔から日本のおもちゃの輸入が盛んで、日本のキャラクターもかなり昔から人気があります。おもちゃ屋の店頭を見ても「ウルトラマン」「仮面ライダー」「ロボコン」などが並びます。

自作ではなく作者がコレクションしたというミニチュアフィギュアの数々

 その中には、エポックが1984年に発売した「スーパーカセットビジョン」のミニチュアも。指先程の大きさですが、箱も本体も再現性が高く、これだけでもかなりの価値がありそう。そういえば日本でも以前「ケータイフィギュア」が発売されたことがありますが、携帯電話やスマートフォンのミニチュアを並べた店をつくってみたいものです。

エポックの名機スーパーカセットビジョン
箱もかなりリアルだ

 ミニチュア展には残念ながら携帯電話ショップやSIM屋台はありませんでした。もしかすると香港の誰かが作成しているかもしれませんが、今回は日本での展示。SIMが並んだ屋台を見ても日本の人は「これ何を売っているの?」と、理解してくれないでしょう。

香港によくある貴金属店。こんな具合に携帯ショップのミニチュアをつくりたいもの

 このミニチュア展は過去にも日本で開催されて好評だったとのこと。昭和時代の日本に通じる部分もありますし、いまもエネルギッシュな香港の歴史を垣間見ることもできます。

 筆者もいつかは香港の携帯ビル「先達廣場」付近や、SIM屋台とジャンク端末屋台が並ぶ街中のミニチュアをつくってみたいものです。

一番人気は広東料理の宴(うたげ)のミニチュア。香港人は夕食時にお酒を飲まない人もかなり多い。ジュースが置いてあるのはリアルだ

山根康宏さんのオフィシャルサイト

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