2017年最後のコラムでは、年末商戦の時期でもあることからモバイル決済の動向を見てみたい。Apple Payの登場から3年、モバイル端末を用いた決済は海外では普及しているのだろうか?
Apple Payローンチから3年が経った
携帯電話をタッチして支払い――日本ではおサイフケータイが昔からあったが、世界的な動向としては2014年秋のApple Pay発表が本格スタートと言って良いだろう。
その後も、Google WalletあらためAndroid Pay、Samsung Payなどが登場。2016年はXiaomiのMi Pay、Huawei Payが中国などでローンチ、2017年に入ってもLG Payと新規参入が続いている。たとえばLGは、2018年1月のCESでLG Pay機能を搭載するという「LG K10」を発表するとも言われている。これにより普及価格帯のミッドレンジにも広げると見られている。現時点では対応機種は「LG G6」「LG G6 Plus」に限定されているが、機種の広がりとともに利用できる国も拡大すると見られる。
各社の”XXX Pay”がたくさん揃った感があるが、基本は同じだ。対応するクレジットカード/デビットカードや銀行のカードを事前に登録し、対応するリーダーのある店頭で決済時に端末をかざして支払うというものだ。
米国ではVerifoneなど、各サービスのロゴが入った専用のリーダーを見かけるが、店舗での利用が増えているという実感はあまりない。
利用の実態はどうなのか? 世界のモバイル決済動向に明るいジャーナリストの鈴木淳也氏は、「Apple Payの利用状況に関する明確なデータはない。ユーザー数から判断して米国での利用が一番多いのは間違いないが、おそらく店舗決済のトランザクション全体の1割もないのが現状」と話す。AppleのApple Pay担当バイスプレジデントのJennifer Bailey氏は10月の業界イベントで、米国のNFC決済の9割を占めていると述べていることも教えてくれた。
Uber、Lyftなどモバイル上で利用するサービスで使われるケースも多いようだ。米国ではWells Fargoなどの銀行のATMでApple Payに対応するところも出てきており、単純に”スマートフォンをかざして決済”だけが方法ではなくなった。鈴木氏も「アプリやウェブサイトなどのオンライン決済での利用の方が伸びる余地があるかも」とコメントした。
欧州ではクレジットカードを
端末にかざして決済をよく見かけた
欧州でも主要国でApple Payを始めとした”XXX Pay“が利用できるが、ここに来て増えていると感じるのが、カードをかざすタイプの決済だ。銀行が発行するVisa、Master、Maetroといったブランドのカードに、非接触型ICチップが搭載されていることが多い。
米国のような大型端末ではないが、以前はカードを挿入してPIN入力だったのが、カードを端末にかざして決済するケースを見かけた。たまたま、この方法でコーヒー代を払ってくれたスペインの知人は、Apple Payは知っているが登録が面倒であり、こちらの方が手軽とのこと。
調査会社のGfKのレポート「2017 FutureBuy」によると、米国の消費者のうち過去6ヵ月に店内でモバイル決済を使用したという人は25%。スマートフォンとクレジットカードの所有率を考えるとあまり高いとは言えない。GfKでは、利用できる店舗が少ないこと(年商2000万ドル以上で56%、それ以下の商店では25%にとどまる)、認知が進んでいないこと、安全性への懸念などを普及が進まない要因に挙げている。
インフラは問題の1つだが、先述の鈴木氏によると、欧州では2019年までにすべての決済ターミナルにおけるNFC対応を目指しているとのこと。インフラの整備が整いつつある中で、「すでに普及しているクレジットカードやデビットカードの利用がメインで進んでいる」と分析した。