手軽で快適なOculus Goとこれを使う必然性探し

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2018年05月11日 12時00分

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米国で199ドルから、日本でも2万円台で発売されたスタンドアローンVRゴーグル、Oculus Go

 Facebookは5月1、2日に、カリフォルニア州サンノゼで開発者イベント「F8 2018」を開催しました。同社はデータ流用によるプライバシー問題にともない、マーク・ザッカーバーグCEOが米議会に呼ばれるなど、まさに“渦中”での開発者会議でした。

 冒頭の基調講演ではFacebookに対する昨今の報道をコラージュした映像を流して、この問題に向き合っている姿勢をアピール。開発者に対して、これまでと同じように、より良くするために開発し続ける姿勢をアピールしました。

 グループ機能の刷新で友人のライブビデオを一緒に楽しむ機能にザッカーバーグ氏の証言の映像を使ったり、人々をつなげるための新たな機能として紹介したのがデート機能だったりと、明るい話題の方が多い印象でした。

 さて、日本でも手に入れた方が多いOculus Go。2万円台で購入できるスタンドアローンのヘッドセットは、FacebookのVRの取り組みの中でも重要なマイルストーンになります。

 Oculus Goは、Gear VRのようにスマホをセットしなくてもいいし、PCとケーブルをつなぐ必要もありません。さっと装着すればすぐにVRコンテンツが楽しめる手軽さと、スマホVR以上の画質が楽しめる点で、VRがぐっと身近になるんじゃないかと期待しています。

Gear VRに対する優位性は明白

 筆者は過去にもスマホVRとして、サムスンのGalaxy S6とこれとセットで利用するゴーグル、Gear VRの組み合わせで試しています。普段使っているスマートフォン用のアクセサリーを追加するだけでVRを楽しむことができ、しかも段ボール型のヘッドセットと違ってきちんと頭に装着できる点は気に入りました。

電源を入れて実際に被るだけで、すぐにVRの世界を楽しめる手軽さは特筆すべきだ

 しかし、「普段使っているスマートフォン」でVRを実現するという点が、良くもあり悪くもありという感想です。やはり普段のコミュニケーションにも利用しているデバイスであるため、着脱が頻繁になり、これが面倒になってきます。またバッテリー消費のことを考えると、どうしても出先でゴーグルをかける可能性は消えます。

 これに対してOculus Goは、スマートフォンからセットアップ作業をしますが、ネットワークさえ拾えばあとはスマートフォンの能力やバッテリーに頼らず、2時間程度はVRの世界を楽しむ事ができます。もちろん充電しながら利用することもできます。

 ゴーグルへのスマホの着脱は必要なく、直接頭に装着して電源を入れればいいので、圧倒的にハードルが下がりました。しかも、ヘッドストラップのホルダー部分に細工がしてあり、本体のスピーカーの音を左右の耳元まで届けてくれるため、イヤホンを装着する必要もありません。

バンドのフレームの中がくりぬかれており、こめかみと耳の間あたりに届くスリットから音が聞こえる仕組み。イヤホンを使わなくても、耳元でステレオサウンドが楽しめる仕掛けだ

 ちなみにこのゴーグルは、首の向きを反映したVR、いわゆる3DoF(Degrees of Freedom)となっています。簡単に言えば座った状態での体の動きにはすべて対応できるというわけです。しかしケーブルを接続する必要がないOculus Goをかけると、つい欲が出ます。より体の動きを反映する6DoF、すなわち上下・前後・左右の動きへの対応してくれればと思ってしまうのです。

さて、Oculus Goで何をしよう

 さて、手軽で高画質なOculus GoでVR環境を手に入れることができました。じゃあ、何をしようというのが今回の本題です。

 すでにGear VRでモバイル向けのVR環境を整えてきたFacebookは、Oculus Goのリリースによって、1000以上のアプリやコンテンツが試せると紹介しました。

 たとえば、ニュース系のコンテンツでは、現場の様子を360度の写真やビデオで楽しむことができる仕組みを提供してくれます。あるいは観光や自然に関するコンテンツも、世界中を巡るようで、Wikipediaを日常的に読んでいるような人にとっては、それだけで相当楽しむ事ができるのではないでしょうか。

 またシミュレーション系では「Jurassic World: Blue」というコンテンツが紹介されています。シュミレーションとは違うかもしれませんが、「MelodyVR」はロックのライブやクラシックのコンサートなどのパフォーマンスを会場で聴くような体験を楽しむことができます。そのほかにも、ローラーコースターやシューティング系のゲームなど、ゲームの中に没入するような体験を視覚と音声で楽しめるでしょう。

 と、ここまで読んできて、どうにも「新しさがない」と感じられる方がほとんどではないでしょうか。書いている本人がそう思っているので無理もありません。

現状最高の体験は寝転がりながらのビデオ鑑賞!?

 Oculus Goにはブラウザが用意されているため、YouTubeなどのVR対応ビデオや、ブラウザでアクセスするコンテンツも楽しめます。

 先ほどのニュース映像とともに、夜寝るときにウェブを閲覧している人にとっては、Oculus Goは寝転びネットサーフィンにはもってこいのデバイスです。夜仰向けに寝転んでスマホを見ていてウトウトすると、顔面にスマホが落ちてきて意外な痛さに悶える経験がある方はOculus Goはおすすめです。

 同じ道理で、Netflixなどのビデオをゴーグルで楽しむ体験はおすすめです。Netflixのアプリではバーチャルなリビングルームの大きなテレビで、ビデオを楽しむという作りになっていますが、「Void Theater」という左上のボタンを押すことで、好きな場所にスクリーンを配置できます。この機能を使えば、天井にスクリーンを配置し、仰向けでのビデオ再生に対応してくれます。

 コンテンツ自体はVRではありませんが、VRゴーグルの活用としては、寝転び映像視聴はおすすめです。なんだかこう、ハリのない話で恐縮ではありますが。

FacebookがVRに取り組む理由となる1つの可能性

 筆者が感じている、あるいは期待しているFacebookがVRに取り組んでいる動機の1つに、「家族や友達との体験やコンテンツの共有に対して、可能性がある」という前提を持っているように感じています。

 Facebookアプリでは、すでに写真やビデオの360度対応を果たしており、ニュースフィードにたまに流れてくる写真ではスマホの向きを変えてその場にいたような感覚であたりを見渡すことができます。

 Facebookは平面の写真やビデオから仮想的に部屋を再構築して思い出の写真を楽しむ機能を、今回のF8 2018で紹介しています。VRカメラがない時代の様子をVR化する技術を作った理由は、これからの未来はほとんどの体験をVRで記録すると考えているからではないでしょうか。

 確かにコンテンツはさまざまな楽しみがあります。しかしFacebookの本丸はどこまでいっても「意味のある家族や友人との関係性」であり、そうした思い出や記録を楽しむツールとして、VRがあるという未来を描いているのでしょう。

 今はまだ「VRが最良のFacebook体験」にはなっていませんが、Facebookは近いうちに、そうしたシフトへと舵を切っていく。そうした中で、スマホアプリやパソコンのブラウザよりも「VRゴーグルが良い」とより多くの人に気づかせる瞬間を発見するのではないでしょうか。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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