なぜ「Surface Go」は安くなければいけなかったのか

文●石川温

2018年07月17日 16時00分

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 日本マイクロソフトは7月11日、2in1パソコンSurfaceシリーズの新製品「Surface Go」を発表した。かなり期待が高かったようだが、発表を見て、「思ったより高い」と落胆の声を上げる人が少なからずいたようだ。

 先行して発表されていた米国での価格は399ドル、日本円にすると4万4935円といったところだ。4万円を切るのが理想だが悪くはない。

 しかし日本では一般向けが税抜き6万4800円からとなっている。これはOffice Home&Business 2016が含まれているのが原因のようだ。法人向けは5万2800円から、教育機関向けだと4万7800円からとなる。いずれもOffice非搭載だ。

 教育機関向けの値つけなら、かなり魅力的といえる。このあたりの戦略はやはり地域性によるところが大きそうだ。

■アップルとグーグルへの対抗策

 米国の場合、教育市場におけるデバイスのシェア争いが熾烈を極めており、特に強いのがグーグルのChromebookだ。

 200ドル程度から購入できるため、とにかく学校にとって導入しやすいところが魅力とされている。クラウドベースで安全性も高い。

 実際、ここ最近は筆者もChromebookを愛用しているが、原稿執筆やメール処理、SNSやウェブ閲覧、写真の加工程度であれば、Chromebookだけでこなせてしまう。この2ヵ月程度、仕事はすべてChromebookでしているほどだ。

 Chromebookはしっかりとしたキーボードがついているため、文書も安定して入力できる。日本でChromebookを導入している学校では「タブレットもいいが、Chromebookはキーボードがあることが魅力的だ。特にTOEICの試験はキーボードを使うため、普段からキーボードに慣れる必要がある」というのだ。

 「安くて意外に使える」こともあり、米国ではChromebookが教育市場でシェアを伸ばしている。とにかく安さが魅力となれば、ライバルも価格で勝負せざるをえない。そこでアップルも、iPad Proでしか対応しなかったはずのペン、Apple PencilをiPadに対応させた普及価格帯モデルを3月に投入した。329ドルという値つけでChromebook勢に対抗してきたわけだ。

 マイクロソフトとしてもChromebookやiPadに対抗するには300ドル台の値つけは避けられないとばかりに399ドルという絶妙な価格設定になったのだろう。

■日本では「Office」が絶対的な存在

 一方、日本ではChromebookがまったく普及していないこともあり、教育現場も激安デバイスを求めている雰囲気はない。「iPadが欲しいけど高いから、値ごろ感のあるAndroidタブレットを選ぶ」ところもあれば、「営業が強く、安心感があるからWindowsデバイスを選ぶ」ところも多いだろう。

 そうなると、日本の教育現場を考えたときの競争相手はiPadになるため、Surface GoにおいてはOfficeをはずしての4万7800円という、iPadになんとか対抗できる値つけにしたかったのではないか。

 一方、一般向けにおいては、日本市場でやはり「Office」が絶対的な存在であることは間違いない。Officeを使いたいがためにパソコンを買うという人も多い。

 いまだにMacを敬遠している人に話を聞くと「Wordとかが使えないから」と言われることもあるくらいだ。実際にはもちろんMacでもなんら問題なくOfficeが使えるのだが、そうしたことを知らない人があまりに多いと思われる。とにかく「Officeを使うならWindows」という認識なのだ。

 パソコンに詳しくない人向けに、家電量販店の店頭でOfficeを標準搭載したSurface Goを売るのは当然のことだろう。しかし、これだけ期待されたのだから、日本マイクロソフトにはぜひともOffice非搭載で価格も魅力的なSurface Goをオンライン限定でも出してもらいたものだ。

 個人的にも、サブスクリプション版の「Office 365 Solo」ユーザーなだけに、年内といわれるLTEモデル発売の際には期待したいところだ。

■日本でも価格競争が起きる?

 アップルもマイクロソフトも、10型クラスのタブレットはかなり教育市場を意識した戦略に舵を切っている。

 一方で気になるのはグーグルの戦略だ。

 グーグルはChromebookで教育市場で成功を収めたが、最近タブレットでの動きが見られない。Androidタブレットを手がけるメーカーはいくつかあるが、撤退したところもあり、Androidとしてはタブレットをあきらめている印象がある。

 実際のところどうなのか。

 先日Google I/Oの取材で、グーグルでハードウェア関連を統括するRick Osterloh氏が「タブレットはどうするの?」と聞かれていたが、その際には「うちはChromebookで勝負していくよ」と答えていた。

 グーグルとしてはAndroidタブレットではなく、主軸は完全にChromebookと位置づけているようだ。

 ここ最近、Google HomeだけでなくGoogle Wi-Fiなどグーグルのハードウェア製品が相次いで日本に上陸し、家電量販店の売り場も広がりつつある。

 日本でもChromebookが本格的に展開されれば、米国のような「タブレットvs.Chromebook」の価格競争が起きることも、ひょっとするとありえそうだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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