AndroidでのEUとグーグルの対決 制裁で検索シェアに動きは起きるのか?

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2018年11月04日 12時00分

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 欧州で提供されるAndroidが、他の地域とは違うものになるかもしれない。

 7月、Androidへの検索アプリなどの抱き合わせに対して、EUから50億ドルという罰金とともに、競争法違反の烙印を押されたグーグルだが、10月16日に是正策を発表した。同時に上訴したことも明らかにしている。

ベルギー・ブリュッセルのEU本部

Google検索をモバイルでもプッシュする必要があった

 歴史は繰り返すというが、デスクトップOSで起きたことと同じことが、モバイルOSでも起きている。前者は2009年にWindowsとInternet Explorerで、そして今回のAndroidとGoogle検索だ。

 EUの執行機関である欧州委員会(EC)は2015年4月、Googleに対する正式な調査を開始。2016年になって「異議告知書」を送り、EU競争法(独占禁止法)の訴訟がスタートした。

 これは「AndroidデバイスにGoogle Searchをインストールさせてデフォルトかつ唯一の検索サービスにしている」「競合する検索エンジンとブラウザーを市場に入れなくしている」として、「検索の独占的立場をモバイルデバイスでも維持する戦略をとっている」とするECの暫定的な見解に基づくものだ。

 そして7月のクロ判定時は、以下の3つの方法を違法とした。

・Google SearchとGoogle Chromeをプリインストールするようにメーカーに要求している
・Google Searchを独占的にプリインストールした一部の大手メーカーと通信事業者に対して、報酬金を支払っている
・新しいAndroidのオープンソースバージョン(フォーク)開発を制限している

 これにより、欧州経済領域(EEA)の消費者は、OS、ブラウザー、検索エンジンのそれぞれにおいて、選択肢が狭くなっているというのが結論だ。

約5600億円以上の罰金を課すという判断が示されたプレスリリース

 もちろん、Google検索/Chromeがプリインストールされていても、他の検索エンジンやブラウザーを使うことはできる。だが、ECは競合する検索アプリのダウンロードは1%にも満たず、Chrome以外のブラウザーを入手するユーザーも10%程度としており、Googleのビジネス慣行を批判した。

 これらを踏まえて、ECはGoogleに対して43億4286万ユーロ(約5600億円)の罰金を課した。罰金の金額としては過去最高だが、ECによると2011年以降に欧州市場において、GoogleがAndroid上での検索関連で売り上げた収入をベースに割り出した金額という。だが(もっと)驚くことに、2017年のAlphabet(Googleの親会社)の財務報告に基づくと、同社にとってこの金額はたった16日分の売上高に過ぎないのだ。

Google製アプリにライセンス料を導入
Androidを無料にするために必要と主張

 7月のECの判定から90日以内に是正措置を取らなければ罰金だ。期限ギリギリでGoogleが出した是正策が“課金”である。Googleは次の3つの点を変更することをECに告げたという。

【1】メーカー各社と結ぶ合意を変更し、Googleアプリを配布したいメーカーも互換性のない(=フォーク)スマートフォンやタブレットを欧州経済領域向けに開発できる。

【2】メーカーはGoogle Searchアプリ、またはChromeとは別に、Googleのモバイルアプリ群をライセンスできる。

【3】Google SearchアプリとChromeを別途ライセンスする。

 2つ目の項目について、もう少し詳しく説明すると、「Google SearchとChromeを他のGoogle製アプリとセットで、メーカーにプリインストールしてもらうことで得られた収入(検索広告)を、Androidの開発にあてることで、Androidを無料で提供できていた」のだから、その抱き合わせはNGなのだというのなら、Google製の各アプリだけをプリインストールできる、新たな有料ライセンスを導入するとしている。やはり欧州経済領域で出荷されるスマートフォンとタブレットが対象だ。そして、Androidそのものは継続して無料かつオープンソースで提供するのだという。

 Googleは有料ライセンスの詳細について明かしていないが、「ドキュメントを入手した」というThe Vergeによると、ライセンス料金は、国と端末の画面のPPI(画素密度)により異なるという。

 その国とは、3つのティアに分かれており、英国/オランダ/ドイツ/スウェーデン/ノルウェー(ノルウェーはEUではないが、欧州経済領域には入っている)の5ヵ国が含まれるティアでは、Googleのモバイルアプリスイートのライセンス料金は、500ppi以上の場合は40ドル(1台あたり)、400~500ppiでは20ドル(同)、400ppi以下は10ドル(同)とのこと。The Vergeによると、国のティアによっては、ライセンス料金は1台あたり2.5ドルまで下がるようだ。

 これだけではない。Chromeを事前インストールしない/ホーム画面のドックに表示させないメーカーは、Google検索の売り上げのシェアがされないなどの細かな条件もある模様(https://www.theverge.com/2018/10/19/17999366/google-eu-android-licensing-terms)。

欧州圏では米国や日本と比べてもAndroidのシェアが高い。写真はスペインのショップでトップ10がすべてAndroidスマホだった

これによってモバイル検索市場に競争は起きるのだろうか?

 IDCの調査によると、Androidのシェアは85%、iOSは15.1%。ECが調査を開始した当時Androidのシェアは81%だった。

 約10年前に、EUからInternet Explorerのバンドルでクロ判定を受けたMicrosoftは、欧州市場向けのWindowsで、初期起動時にブラウザーを選べる「選択画面」を表示することで決着をつけた。

 そしてこれは、おそらく市場に大きな影響を与えたとは言えなかった(その後にIEのシェアが下がり、Firefox、さらにChromeが台頭したのはこれによる効果ではなかったはずだ)。ちなみに、このときMicrosoftに科された罰金は合計14億6000万ユーロだった。

 今回の是正案により、何が変わるのかはわからない。支払ったライセンス料が消費者の価格に反映されるのか、メーカーは何らかのディスカウントが得られるようなことがあるのかどうか。何と言っても、これが検索市場に変化をもたらすことは有り得るのだろうか?


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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