新MacBook Air「ちょうどよい」と感じた理由

文●松村太郎 @taromatsumura

2018年11月06日 20時00分

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 アップルは10月30日(現地時間)に米国ニューヨーク・ブルックリンで開催したスペシャルイベントで、8年ぶりとなるMacBook Airのフルモデルチェンジを敢行しました。

 アップルにとってMacは必ずしも販売台数がめざましく伸びているわけではありません。しかしiMac ProやMacBook Proといったデスクトップ・モバイル双方のハイエンドモデルの刷新は効果的で、1台あたりの平均販売価格は1400ドル前後で推移してきました。

 アップルは2016年ごろから「Mac軽視」の批判を浴びてきました。声の中心は高いパフォーマンスを求めるクリエイティブプロやエンジニアから上がっていましたが、そこへの対処は近年効果的だった、といえます。

 いよいよ、より多くの人がMacの最新のフォームファクターのメリットを受ける番。こうして登場したのがMacBook Airでした。ふれてみると「ちょうどよい」という感想を随所で持つことになりました。

●ディスプレーを拡大したMacBook

 新型のMacBook Airは、誤解を恐れず言えば、ディスプレーを拡大したMacBook、そのものです。プロセッサは、低消費電力にバランスを振った1.6GHzで動作する第8世代Intel Core i5が設定され、ワイヤレスインターネット12時間のバッテリーライフを実現しています。

 グラフィックスも、Intel UHD Graphics 617以外のオプションは用意されていません。ただし、それでも5Kディスプレー、もしくは4Kディスプレー2台を接続できるだけの性能があるため、MacBook Airのターゲットで足りないという人は少ないのではないでしょうか。

 Intelチップの基本性能向上から、プロセッサの選択肢をなくして1つに絞ったとしても、多くの人にちょうどよいレベルの処理性能を実現できるというアップルの見立てがあったと考えることができます。

 一方、「最も人気のあったポータブル型Mac」とアップルが説明する同シリーズのフルモデルチェンジまで、8年もの歳月を要した理由はどこにあったのでしょうか。アップルは良い機能とデザインを探求してきたと話しますが、特にMacBookからの学びが多かったようです。

 MacBookは2015年に登場したRetinaディスプレーを搭載する超小型サブノートMacです。超低消費電力のプロセッサ、MacBook Airから引き継いだ刃物のように先が細くなるボディデザイン、そして新たな積層型の設計で搭載量を最大化したバッテリー、超薄型バタフライキーボード、1つだけ搭載したUSB-C端子と、とにかく1kgを切るMacとしての追求をしてきました。

 MacBook Proも2016年にモデルチェンジ。Retinaディスプレー、バタフライキーボード、Thunderbolt 3端子などを備えた新世代デザインへと移行しました。13インチモデルはデュアルコアからクアッドコア化され、不足していた処理性能も克服しました。

 MacBookは1299ドルから(日本では14万2800円から)、MacBook Proは1799ドルから(同じく19万8800円から)という価格がつけられています。

 これらの製品を経て登場したMacBook Airは、MacBookのような薄型・小型化を進めたデザインとRetinaディスプレー、MacBook ProのようにシンプルかつパワフルなThunderbolt 3端子と、高いセキュリティ性能を誇るTouch IDとT2チップを搭載しながら、1199ドルから、という価格を設定しました(日本では13万4800円から)。

 もしもいまMacBook Airを使っているユーザーであれば、ほかにはない、というべきちょうど良い、進化した選択肢といえます。

 ただし、ちょっとでもポータブル性を追求したいなら、MacBookを選ぶべきですし、処理性能に少しでもこだわりたいなら、MacBook Proを検討すべきです。より多くの人にとってちょうど良い選択肢でありながら、なんらかの目的性が生まれれば、MacBook Air以外の選択が有力となる、そんなラインアップをアップルはそろえました。

●iPad Proと組み合わせても良さそう

 1199ドルの製品であっても、8GBのメモリを備え、macOS Mojaveとアプリの組み合わせで処理するほとんどの作業、すなわちウェブブラウジング、テキスト編集、写真編集、短いフルHDビデオ編集に、なんら不足はありませんでした。

 バッテリーは1日も持続しますし、1.25kgという重量もこれまでのMacBook Airより100g軽くなりました。メインマシンとして常に持ち歩くような活用方法を考えるとちょうどよいMacという評価がぴったりと言えます。ストレージも最大1.5TB、メモリも16GBまで搭載できるこのMacを、5年単位で使う人も少なくないでしょう。

 ただし、iPad Proと比較すると、意外な結果になります。

 999ドル(日本では11万1800円)で販売される新型iPad Pro 12.9インチは、iPhone XSよりもCPU、GPUともにコア数が増えており、MacBook Airの処理性能の3倍は下らないでしょう。

 たしかにiPad ProとMacBook Airは異なる性格を持つ製品ですが、アップル自身がiPadをタブレットのカテゴリからノート型PCのカテゴリへと持ち込むプレゼンテーションをしたばかり。そして、新型iPad Proの性能は92%のポータブルPCより高速だと言いますが、MacBookもMacBook Airも、この92%に含まれていることになります。

 一方、Macならではの機能を挙げれば、macOSを用いたファイル操作やプログラミングを伴う作業、ブラウザを通じた企業システムへのアクセス、Windowsでの起動など、iPadには担えないポイントも多々あります。ただ、そうしたMacでしかできない作業の多くが、MacBook Airのパフォーマンスで十分事足りるのも事実。

 たとえば、メディア視聴やクリエイティブアプリをiPad Proにまかせ、MacBook AirとiPad Proを連携させて使うと、シンプルで柔軟性があり、かつコストパフォーマンスに優れたワークフローを組み立てることもできるのではないでしょうか。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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