ついにiPadはコンピュータになった

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2018年11月07日 12時00分

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新型iPad Proの発表では、世の中の92%のノートPCよりも高速である点が紹介されました。iPad Proはこの市場に切り込むための製品になったという、象徴的な一幕と言えます

久々のニューヨークでの発表会は非常に盛り上がった
でも筆者はくたくた

 先週はサンフランシスコからニューヨークに飛び、ブルックリンのオペラ劇場で開催されたAppleのイベントを取材してきました。

 秋のニューヨークはサンフランシスコよりも朝晩冷え込みますが、晴天に見舞われ、水蒸気がよりたくさんあって表情豊かな秋空を楽しむ事ができました。

 中継でも伝わったかもしれませんが、イベントはとても盛り上がっていましたね。クパティーノのApple Parkで開催されたiPhone発表イベントよりも、聴衆は大盛り上がりでした。

 ニューヨークでのAppleのイベントは2012年1月以来、6年10ヵ月ぶり。久々だったこともあり、Appleのニューヨークのスタッフも興奮気味だったのではないでしょうか。

 帰りの飛行機ではイベントレポートや製品のレビューなどでバタバタとしていて、1週間の記憶があまりありません。予測はしていましたが、ちょっとタイトなスケジュールだったと振り返っているところです。

 さて本連載では以前、コンピュータとiPadの関係について、Appleが制作したコマーシャルへの反応を交えてご紹介してきました(「iPad ProのCMの「コンピュータって何?」に腹を立てる人たち」)。

 今回はその話題の続きです。

新型iPad Proはとにかく魅力的
100個以上の磁石が組み込まれているという

 iPad Proは、2015年の登場以来初めてのモデルチェンジとなりました。5.9mmとこれまでのiPad Proと比べると、若干薄くなりましたが、iPhone 5で登場したような角張った側面となり、見た目はより重厚感が増しています。

角張ったデザインになったことで印象が随分変わりました

 Appleはそれをウリにするとは思えませんが、縦に構えたときにUSB-Cポートがある下側面、もしくはボタン類がない左側面なら、テーブルの上に自立するようになりました。いや、あんまり意味はないし、ちょっとの揺れで倒れるので忘れてください。

 そんな新型iPad Proは、目には見えませんが、かなり磁石を組み込んでいるようです。背面には102個の磁石が配置され、新しくなったSmart Keyboard Folioを溝などなくピタッと位置合わせしてくれます。何気なく装着できるのですが、ずれない、というのはなかなかすごいことです。

 またApple Pencilにも2個の磁石が入り、右側面にピタッとくっつけて持ち運べるようになりました。しかもこちらも位置合わせが正確になされ、ワイヤレス充電を最大効率でしてくれます。

側面に磁石でくっつく新Apple Pencil

 さらにUSB-Cポートには、Macで使っている充電器やUSB-Cハブをそのまま流用することができ、メモリカードリーダもHDMI出力アダプタも別途用意する必要がありません。

 アクセサリを絡めた使い勝手については、欠点を解消してくれた、そんな仕上がりになっています。

iPadはコンピュータで、競合はノートPC

 そんな新製品のレビューは別の記事に譲るとして、iPad Proを発表する前のプレゼンテーションにはあらためて注目しておく必要がありました。

 ティム・クックCEOはステージで、タブレットとしてではなく、コンピュータとして、iPadが販売台数トップである、と紹介したからです。

各PCメーカーのノートPC販売台数と比べて、iPadが上回るというデータをアピール

 iPadは年間4420万台が販売されていますが、これを世界のノート型PCの販売台数と比較すると、最も多い数字になると言います。

 ノートPCのトップはHPで3690万台、次いでLenovoの3210万台、Dellの2350万台という順です。わざわざ300万台のMicrosoftをグラフに入れた点には意図を感じます。確かに販売台数は少ないですが、Microsoftは自社で開発するWindowsの発展に合わせて、2-in-1やデタッチャブルという新しいPC像を提案してきたトレンドセッターだからです。

 またFace IDの紹介でも「コンピュータにおいて、これまでで最も安全な顔認証」と紹介しました。またA12X Bionicプロセッサについても、過去のモデルよりマルチコアで99%高速化されたと発表し、「すべてのポータブルPCの92%より高速」とアピールしました。

 iPadは沈みゆくタブレット市場を後にして、すでにノートPC市場に参入したことを、強調していたのです。

だんだん違和感は減ってきた?

 iPad ProはMacやPCと同じポートを備え、MacよりもむしろWindowsではおなじみとなったタッチ操作やペンをサポートしています。

 Macと比べるから違和感があるわけで、WindowsのポータブルPCと比べれば、確かにパソコン的な存在と言えなくもありません。もっとも、2010年のiPad登場で、PC市場がタブレットの要素を十分に取り込んだ結果と言えるかもしれませんが。

 AppleはかたくなにMacのディスプレイをタッチ対応にしないという判断を維持してきましたが、それはiPadでPC市場を攻略する目を潰さないためだったと思うようになってきました。

 MacとWindowsは競合するのが当たり前で、結果はWindowsの圧勝という形で見えています。つまりiPadでPC市場に切り込むには、それまでにない価値感で望まなければなりません。そのため、iPadをMacと同一視されないユニークさが必要だったのでしょう。

 2019年に向けて、iPadにはAdobe Photoshopが提供されます。Adobeのクリエイティブアプリは、Microsoft Officeとともに、PC向けのソフトウェアとして非常に重要な「やること」を提供してくれます。これがiPadに入ってくることは、明らかにiPadの見方を変化させる充分な動機付けになり得るのです。

フル機能のPhotoshopの登場もまたiPadのコンピュータ化に向けて大きなインパクトとなることは確実です

 せっかく新製品が登場したばかりなのに、「真価は来年発揮される」なんていうエンディングは、なんとも歯切れが悪いですよね。

 少なくとも今までiPad Proを使ってきた人は、コンピュータとも思わず、iPadでのモバイル作業を引き続き、より快適にこなせるようになった点は間違いありません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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