Amazonプライムが街に出る クチコミで星4つ以上の製品を売るリアル店舗

文●松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

2018年11月15日 09時00分

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Amazonによる新しいリアル店舗「Amazon 4-Star」。Amazon上のユーザーレビューで★4つ以上の人気製品を集めたというのがコンセプトです

 バークレーは昨年から数週間遅れで、再び激しい大気汚染に見舞われています。昨年は北に50kmほどのエリアで山火事が発生し、その煙が流れてきましたが、今年はさらに6倍以上離れたエリアで発生し、急速に拡大している山火事「#CampFire」の煙が流れ込んできました。

 今回の山火事の特徴は規模の大きさとその拡大のスピードで、逃げ遅れて亡くなった方もすでに42人にのぼり、5万2000人が避難しています。一気に周辺地域に広がった煙も、その勢いを物語っています。

バークレーの朝日。山火事の煙が流れ込んでおり、太陽の光が遮られながら届く、不気味な光景が再びもどってきました

 Apple Watchには今年配信されたされたwatchOS 5から、「空気質」という気象状況のインデックスが追加されました。Apple Watch Series 4のInfograph、Infographモジュール向けに、文字盤で常に空気質を確認できるコンプリケーションも用意されています。

 普段は40〜50で良好だった空気質は、先週末180に達し、この原稿を書いている時点でも158。Apple Watchではこれを「中程度の汚染」といっていますが、外に出れば焚き火の匂いが常にしており、5分の買い物でセーターが煙臭くなる、という昨年と同じ状況です。

Apple Watchに新たに追加された気象情報「空気質」。普段50に満たない程度の水準ですが、一挙に数字が上がり、汚染が進んでいることがわかります。日本の天気アプリでは、この情報は提供されていないようです

 今回の山火事は強風で切れた電線がきっかけになったとの証言もありますが、それでも強風と高温でこれだけ燃え広がるポテンシャルがあること自体に驚かされます。大規模な山火事にならないまでも、グラスファイヤーと言われる小規模な火災も無数にあり、高速道路を走っていても丘1つ丸焦げのような景色は珍しくありません。

 正直なところ、カリフォルニア州や米国政府が行える、効果的かつ具体的な防止策は考えにくく、1つ1つ、命を優先しながら対処していくしかない状況といえます。

クチコミで4つ星以上の製品しか扱いません

 バークレーが煙に巻かれる週末より以前に、街で一番のショッピングエリア、4thストリートに出かけました。Apple GiveBackというリサイクルプログラムによって600ドルほどのApple Storeのクレジットを獲得したので、これを使おうと出かけたのです。

 Apple Storeの中での600ドル近辺の買い物となると、ドローンやGoPro、ジンバルなどのカメラやビデオ関連に加えて、HomePodとセキュリティカメラなどのスマートホーム関連機器、そしてもちろんApple Watchも選ぶことができます。

 個人的に興味があったのはドローンですが、日本に持って帰っても自由に飛ばせる場所は少ないでしょうし、実はバークレーも、自由に飛ばせないエリアに含まれていました。3マイル(約5km)圏内にヘリポートを備えた小児科病院があるからです。

 そこでGoProを試してみたいと思ったのですが、バークレーのApple Storeでは品切れ。結局何とも交換せずにApple Storeを後にすることにしました。

 Apple Storeを出て歩いていると、見慣れないAmazonの店舗ができていることに気づきました。「Amazon 4-Star」という名前の店舗。コンセプトはオンラインのレビューで4つ星以上の商品を販売することでした。

 Amazonレビューは、不正な投稿などの問題点も絶えませんが、やはり商品を検討する際に確認する材料になっていますよね。星の数だけでなく実際に購入した人が書いたレビューは、良し悪しを判断したり、それ以上に自分のニーズを叶えてくれるかどうかを確認する点で重要です。

 だったら、そのレビューを背景として、高評価の商品だけをそれるセレクトショップを運営しよう。これがAmazon 4-Starというわけです。

小売の再構築の結果生まれた「Amazon 4-Star」
店舗単位での採算を最重視していない点もモヤモヤ

 このAmazon 4-Starは、2018年9月にニューヨークで1号店がオープンし、コロラド州ロングツリー、カリフォルニア州バークレーを含めて米国で3店舗が運営されています。

 店舗に行くと、書籍、おもちゃ、キッチン用品、電子商品、スマートホームといったカテゴリの商品が所狭しと並んでいます。もちろん、どの商品も4つ星以上を獲得している人気と評価が高い商品ばかり。

店内には好評価の商品がこれでもかと並んでいます

 確かにAmazonのショッピング体験は、オンラインで簡単に商品を比較できることでしたが、それを実店舗に集めてみると、やっぱり実際に見たり手に取れるショッピングって良いものなんだな、と再確認させられます。

 同時に、これまでAmazonがさまざまな小売店をオンラインショッピングによって駆逐してきた経緯もあり、複雑な気持ちもまた高まります。ショッピング体験をオンラインベースで再構築し、オンラインを前提とした実店舗の姿を示したからです。

 膨大なデータに基づいた商品のセレクトは、お世辞抜きで楽しい品揃えが出来上がります。売れ筋だから発見は少ないかと思いきや、そうでもないのです。普段は自分が必要なものしか調べませんから、それ以外の売れ筋が目の前で一覧されている状況自体が初めてだったのです。

 そして、さらに既存の小売店にとって脅威である点は、Amazonは必ずしも、この店舗での採算性を最大化する必要もないという点です。

 商品の存在を知り、価格を見て、あとでオンラインで買っても良いわけですし、ショールーム的な扱いをしておいてもいいのでしょう。返品などのサービスを受け付ける拠点としての役割も担います。

話題の商品をいち早く店頭に並べる
物流における最終的な課題はやっぱりそこ

 値札は電子ペーパーを用いたタグで、きちんとAmazon上の星の数やレビュー数まで表示されています。そして価格は2つ表示されている商品が多く、下の段は20〜30%引きとお得な価格に。これはプライム会員向けに、Amazon上の価格とマッチして販売されているためです。

 その結果、プライム会員であれば、Apple StoreやTargetなどの他の店舗で購入するよりも、Amazon 4-Starでの買い物の方が、大幅にお得になる可能性が高まります。届くのを待ちたくないと思ったら、ここに行けばすぐにお得な価格で手に入るのです。

 プライム会員のメリットは、すでにWhole Foods Marketでも提供されてきました。会員向けの割引セールに加えて、一般向けのセール商品は、さらに追加で10%引かれます。もう、オンラインショッピングで引きこもっている場合じゃなくなってきました。

 現段階では、Whole Foods MarketもAmazon 4-Starも揃っている都市は、ニューヨーク、ロングツリー、バークレーの3都市しかありません。これが全米の都市へと拡大していくと、小売業界にとって、プライム会員制度はますます脅威となっていくでしょう。

 しかし、筆者のお目当てだったGoPro Hero7 BlackはAmazon 4-Starにはありませんでした。Hero5、Hero6、廉価版のHero7はあったのですが、最上位モデルはそもそも取り扱いがありませんでした。最新の、人気が急上昇中の、商品を反応良く扱うというわけではないようです。

 もちろんAmazonのオンラインでは購入できますし、GoProのオンラインショップではメモリカードも付属しています。決め打ちで欲しい商品がある顧客の獲得は、Amazon 4-Starの課題かもしれません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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