国が携帯業界に入れたメス 結局は裏目に

文●石川温

2018年11月20日 09時00分

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 政府の規制改革推進会議が中古スマホの流通を促す答申書をまとめたと、一部報道機関が明らかにした。答申書は安倍晋三首相に手渡される。

 最近、菅官房長官は携帯電話料金の4割値下げを求めている。値下げの手段の1つとして、端末代金と通信料金を分離した「分離プラン」を導入させる方針だ。

 分離プランを導入した上で、端末を安価に入手できるように、中古端末市場を活性化させたいというねらいが政府にはある。

●政府が「中古スマホ」に目をつけた

 現状、キャリアが下取りした端末の多くが海外市場に転売されていると言われている。そのため国内市場における中古端末の流通量が少なく、中古端末が高止まりしているのではないかという懸念がある。

 また政府や総務省などは、「メーカーがキャリアに対して下取りした端末を国内に流通しないように指導しているのではないか」と疑っているようだ。

 メーカーとしてみれば、日本国内に中古端末が流通しなければ、それだけ新品が売れる。キャリアにとってみても新品に買い換えてくれたほうが、さらに囲い込みできるというわけで、メリットがあるというわけだ。

 今回、政府としては下取りや中古端末市場の問題点を洗い出し、必要であれば、公正取引委員会などから是正を求める方針のようだ。

 ただ、実際にキャリアや仲介業者に話を聞くと、最近はそうした「国内市場に流通しないように海外に転売している」という事情はなく、単純に「海外に転売したほうが高く買ってくれる」という事情があるようだ。

●中古スマホ 海外の方が高く売れる

 仲介業者によれば、

 「キャリアが下取りしたiPhoneは仲介業者を経由するが、その際、海外に転売した方が高く売れるし、大量に買い取ってくれる。

 海外市場であれば、そのまま売るだけでなく、分解してパーツごとに切り売りできる。バッテリーを交換して、製品寿命を伸ばして売ることも可能だ。

 しかし日本国内で転売しようとしても、中古業者は少量しか買ってくれない。結果、下取りしたiPhoneは海外に転売される量が多いのだ」

 という。

 海外には、巨大な中古端末市場が存在する。

 特に日本市場は2年前に発売された機種など、比較的新しいモデルが下取りされるため、海外の業者も大金をはたいて、日本市場で流通していたスマホを買い取る傾向があるようだ。

 日本でキャリアが下取りしたり、業者が買い取ったスマホは、最新機種が多く、状態がいいものがそろっているという。そのため「日本に旅行しにきたお土産として、中古スマホを買っていく観光客も多い」(中古端末業者)というほどだ。

●政府規制が市場縮小につながる矛盾

 政府や総務省が中古スマホ市場の盛り上げに躍起になっている一方で、こんな冷ややかな見方をする業界関係者もいる。

 「総務省がキャッシュバックを規制したことで、新品のスマホが売れなくなった。ユーザーが新機種に乗り換えないということは、つまり今使っているスマホを下取りに出さないわけで、結果として中古スマホ市場の流通量が減ることになる。新品が売れなければ、中古端末が出てこないわけで、政府のやっていることは矛盾だらけだ」(業界関係者)

 菅官房長官が「4割値下げしろ」と圧力をかける中、各キャリアでは分離プランが本格化する。

 分離プランは、通信料金が下がるかもしれないが、一方で、端末の割引がなくなり、端末を購入する際の負担感は増すことになる。つまり、いままで以上に端末は売れなくなるわけで、さらに中古スマホ市場が縮小する恐れも出てきた。

 政府や総務省がメスを入れているあらゆる手段が結局は裏目に出ることに、彼らが気がつくのはいつだろうか。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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