アメリカによるファーウェイ叩きは欧州・日本にも影響が及ぶか?

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2018年11月30日 09時00分

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 米政府によるファーウェイ叩きが続いている。国内でのファーウェイ製通信機器の締め出しに加えて、欧州、そして日本に対してもファーウェイのネガキャンを展開しているという報道が出ている。米国に続いてオーストラリアもファーウェイ製機器を禁止する方向に動いており、英政府も警告を出している。今回の争点はドイツだ。

ロンドンでのイベントに登壇した輪番会長のKen Hu氏

欧州とは蜜月状態が続いていたファーウェイ

 米中貿易戦争とも言われるトランプ政権の中国敵視、重要なフォーカスとなっているのが通信分野だ。ここではすでにZTEが一時は破産寸前にまで追い込まれるなど、大きな影響が及んでいる。

 さて、“西側”諸国の中でも、欧州はファーウェイを受け入れてきたと言える。スマホもそうだし、基地局に代表される通信機器もだ。実際にファーウェイは数々の欧州向けイベントを各地で展開している。中国、アフリカ、ロシアなどの新興国から浸透していった同社の通信ネットワーク事業にとって、欧州は重要な市場。先進国であるため、最新事例を作ることができる。

 それに何と言っても欧州は、EricssonとNokiaという古参ベンダーのお膝元であり、そうした場所で顧客の信頼を勝ち取ったというのはファーウェイの自信にもつながってきたはずだ。

 ファーウェイは顧客の獲得とともに、多数の幹部も欧州で雇い入れている。もともと顧客だったというケースもあれば、競合に勤めていたというケースもある。また各地でラボの開設などの投資もしており、失業率対策に悩む欧州各国にとってはありがたい存在となっている。

 そんな背景もあってか、2015年にミュンヘン、2016年にパリで開催されたイベント「Huawei European Innovation Day」では、ともに政府関係者も出席していた。ミュンヘンのときに話をしたオランダの記者は、「この規模で新規雇用してくれる企業は、欧州にはもうないよ」とボヤいていた。

 ミュンヘンのイベントでは、地元のDeutsche Telekom(ドイツテレコム)がファーウェイの技術を採用してパブリッククラウドを構築することが発表された。T-Mobileともさまざまな協業関係にあり(5Gの大型契約はNokiaに持っていかれたが)、Mobile World Congressのファーウェイブースでは、主要な欧州の通信事業者との取り組みを大きくアピールしている。

 その欧州にも、米政府の影響が及びつつあるようだ。大きく報じられているのはドイツ。政治家と通信企業のトップに働きかけた結果、ファーウェイとZTEの通信機器を閉め出す法案を検討中とReutersなどが報じている(https://www.reuters.com/article/us-germany-china-5g-exclusive/german-officials-sound-china-alarm-as-5g-auctions-loom-idUSKCN1NI1WC)。

 Reutersは「深刻な懸念がある。自分ならオーストラリアと同じ決断をする」という幹部の声、「ある1つの国のベンダーを全面的に阻害するのは、間違ったアプローチだ」という議員の声と両方の意見を紹介している。ドイツは2019年前半に5G向け周波数の入札が始まる予定だが、法案はこの入札にも影響を与えかねない。

では、日本政府はどうするのだろうか

 米国のネガキャンの内容は、ファーウェイやZTEなどの中国製通信機器は中国政府による盗聴を可能にするという国家保安上の懸念だ。中国では2017年に「インターネット安全法」を成立しており、中国政府が自国製品に、盗聴を可能にするバックドアを仕込むよう要求する可能性があるのではと疑われている。

 「ドイツ」「米国」「盗聴」という単語が続くと、数年前のオバマ政権時にNSA(米国家安全保障局)がドイツのメルケル首相の電話を盗聴していたという事件を思い出すのだが、トランプ政権は今回は「中国政府」による盗聴の可能性があると触れ回っている。

 詳細に報じたWall Street Journalによると(https://www.wsj.com/articles/washington-asks-allies-to-drop-huawei-1542965105)、米政府がファーウェイ製品ボイコットへの同調を強く要求しているのは、ドイツだけではない。

 イタリアと日本――つまり米軍が拠点をもつ国々もだという。米軍は衛星通信を始め、専用の通信回線を持っているが、商用のネットワークも利用している。記事によると、日本政府関係者は「米国とさまざまな情報を共有している」としながらも詳細は避けたという。また、8月にファーウェイに対する制限について調査しているところと語っていたとも記している。

 ファーウェイは日本のキャリアとも5Gで実証実験などを展開している。たとえばNTTドコモとは39GHz帯を使った中継実験を、ソフトバンクとも4.5GHz帯での実証実験を行なっている。

 欧州ではすでに英国政府が、5Gネットワーク構築にあたってのベンダー選定に注意するように呼びかけている。なお、ファーウェイの代表は業界向けメディアのLight Reading(https://www.lightreading.com/)に対して、自分たちの事業への懸念は聞かれないとコメントしている。

 また、”ファイブ・アイズ”とも呼ばれる、英語圏の5ヵ国で情報共有の協定を結んでいる国のうちの1つであるカナダ政府は、自国内でチェックを強めており、問題があれば検出可能であるということを理由に、ファーウェイのみを除外する必要はないとの見解を示している。

中国国外ですでに1万台の5G基地局を出荷したファーウェイ

 そうした動きがあっても、ファーウェイの勢いは止められない。ちょうど11月にロンドンで開催されたファーウェイのイベント「Global Mobile Broad Band Forum」で、同社で輪番会長を務めるKen Hu氏は、中国以外の国における5Gネットワーク基地局の出荷台数が1万台に達したことを報告したそうだ。

 主として欧州、中東、韓国などのオペレーターが中心で、66ヵ国154の通信事業者がファーウェイの技術を(一部)使って実証実験を進めているという。

 また、ファーウェイは英国で「Huawei Cyber Security Evaluation Centre」として、ファーウェイ製品のセキュリティーチェックができる取り組みを展開しているが、年内にもドイツにも同じような施設を開設する予定だ。

 なお、IHS MarkitのIMS(IP Multimedia Subsystem)機器ベンダー調査によると、ファーウェイのシェアは22%、これはNokia(13%)、Ericsson(11%)を押さえてトップとなっている。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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