なんでもできる新iPadOS、iPhoneから独立したiPadはMacを救うか

文●篠原修司 編集●飯島恵里子/ASCII

2019年06月06日 08時00分

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発表されたiPadOS

 ついにiPadがiPhoneから独立した。アップルの年次開発者会議「WWDC19」での発表を見て、多くの人がそう思ったのではないだろうか。

 アップルは日本時間6月4日午前2時より開催した基調講演にて、tvos 13、watchOS 6、iOS 13、iPadOS、Mac Pro、macOS Catalina、そしてSwiftUIなどの開発者向けツールを発表した。

 WWDC前にアップデートしたMacBook ProやiPod touch(第7世代)が発表され、「ないだろう」と思われていたハードウェアが登場したことには驚かされたが、やはり一番の注目はiPadOSだ。

iPhoneから独り立ちしたiPad

 iPadOSの登場は、iPadは今後、iPhoneとは別の道を歩むというアップルからのメッセージに思える。

 誤解を恐れずに言えば、iPadはこれまで大きなiPhoneにすぎなかった。

 もちろん複数のアプリが使えるSlide Over(スライドオーバー)やSplit View(スプリットビュー)、そしてApple Pencilなど、iPadでしかできないことはあった。しかし、それらはすべてiOSの延長線上でしかなかった。

 iPadはあくまでもiOS端末であり、画面が大きいからiPhoneよりも少しできることが多いだけだった。

 そんなiPadが、ついにiPadOSという独自のOSを持つ。iPadは、iPhoneという縛りから抜け出したのだ。

ノートアプリの複数起動

創作活動へのはじめの一歩に

 それでは、独立したiPadは今後どのような進化を遂げるのだろうか?

 基調講演の発表でまず目についたのは、同じアプリの複数起動やDockアイコンをタップしてのアプリの一覧表示だ。Macユーザーなら誰しも思ったことだろう――「これはもはやMacだ」と。

 iPadがMacのように使える。これまでシングルタスクの強制によってiPadを敬遠していたユーザーにとって、マルチタスクの解禁はiPadを魅力的なデバイスにしたことだろう。

 何よりもiPadOSは、創作活動へのハードルをウンと下げてくれる。何かを作るために、もうデスクトップパソコンやラップトップパソコンを用意する必要はないのだ。

ファイルの圧縮解凍やキーボードショートカット機能も

 iPadに接続したカメラから読み込んだ写真を編集アプリでレタッチしたり、USBドライブで受け取った書類を複数同時に開いて処理したり、描画遅延の改善されたApple Pencilで今までよりもストレスなしに絵を描いたりできる。

 iPadOSが登場したことで、iPadのみで幅広い創作活動ができるようになったのだ。

iPadがサブディスプレイ化する新機能SideCar

今度はMacがパートナー

 もちろんiPadだけで全てが快適にできるわけではない。よりクオリティを求めるユーザーは、MacBook ProやMac Proへステップアップしていくだろう。

 ただ、そうしたユーザーにとっても、iPadはムダにならない。なぜならSideCar(サイドカー)があるからだ。

 いままで使っていたiPadは、今度はサブディスプレイとして働いてくれる。もちろんMacを持ち歩けないときは、これまでどおり創作ツールとして使えるのだ。

 アップルの狙いとしては、いきなりMacBook Proを購入するのが難しいユーザーにはまずiPadから始めてもらい、その後にMacへ、ということだろう。そしてSideCarの存在は、逆にMacBook ProユーザーにiPadを購入してもらうきっかけにもなりそうだ。

 この相乗効果を期待して、iPadアプリを簡単にMacに移行できるようSwiftUIを用意したのではないかとさえ思える。

停滞するMacの販売台数、回復なるか

 iPadがMacとの繋がりを強くした背景には、Macの販売不振も影響していることだろう。アップルが販売台数の公表をやめたため正確な数字はわからなくなったが、Macの販売台数は停滞している。近年は新製品の投入が遅れていたのも、その原因のひとつだ。

 先月、新たなMacBook Proが投入され、今回の「WWDC19」でもMac Proが発表された。だが、これら単体のMacが新規ユーザーにとって魅力的な製品になり得るかとなると、難しいと言わざるを得ない。MacはWindowsと比較すると、どうしても高いからだ。

 こうしたMacの販売不振にテコ入れするためには、iPadOSによる独立は避けられない状況だったのかもしれない。

 iPadは縮小を続けるタブレット市場のなかでも、そのシェアを伸ばして1位の座に君臨し続けている。そのiPadがiPhoneではなくMacをパートナーにすることで、Macの販売につなげるのは正しい戦略に思える。

 アップルの目には、教育市場で伸びるChromebookとマイクロソフトが昨年発売したSurface Goが、iPadの強力なライバルとして映っているはずだ。

 iPadとMacの新しいコンビが彼らとどう戦っていくのか、そしてiPadOSはどのように進化していくのか。その行き先に注目だ。



筆者紹介:篠原修司

1983年生まれ。福岡県在住のフリーライター。IT、スマホ、ゲーム、ネットの話題やデマの検証を専門に記事を書いています。
Twitter:@digimaga
ブログ:デジタルマガジン

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