2019Q1に50%増でスマホ出荷台数増やしていたファーウェイ、今後はどうなる?

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2019年06月12日 10時00分

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 ファーウェイ対米国政府が予想を超えた展開になっている。米政府が5月にファーウェイに対して輸出管理規制を発動し、モバイル業界にはショックが走った。ファーウェイにとっては当然打撃ではあるが、米国をはじめファーウェイ以外の企業への影響の方が大きいようにも見える。

ファーウェイへの輸出規制の衝撃から間もなく1ヵ月。この問題は今後どう進むのだろうか

部品、ソフト、業界団体、販売チャネルが米国の輸出規制に対応

 あらためて1台のスマートフォンに、たくさんの企業が関与していることを感じさせる。トランプ政権がファーウェイを輸出管理規制に基づくエンティティリストに登録したことを受け、クアルコム、インテル、Broadcom、ザイリンクス、コーニングなどが次々と取引停止を明らかにした。

 これらはスマートフォンのハードウェア部品だが、ソフトウェア側も最初に報じられたグーグルに加え、最新の話題ではFacebookがアプリのプリインストールを停止することを発表した。Google Playからのダウンロードできるが、FacebookはFacebookだけを提供しているのではない。Instagram、WhatsAppといった人気モバイルアプリもFacebook傘下にあるのだ。

 流通側では、Amazon、Walmart、Microsoftなどもファーウェイ製品の取り扱いを控えることに。

 特に衝撃が大きいのはArmだろう。Armはチップデザインをライセンスするが、ファーウェイのHiSilicon事業が製造するチップ「Kirin」もライセンスを受けている。

 このほか、Wi-Fi Alliance、SD Association、Bluetooth SIGなどの標準化団体も一時はファーウェイ締め出しに加わっていた。

ファーウェイの開発スピードが加速するという懸念

 Financial Timeによると、今回のエンティティリスト入りによる影響を受ける米国のサプライヤーは1200社と、ファーウェイ側は見積もっているという。部品やサービスをファーウェイに供給する米国企業に対してファーウェイが支払った金額は2018年、110億ドルに達するとのこと(https://www.ft.com/content/a432d778-822f-11e9-9935-ad75bb96c849)。

 つまり自国政府の措置により売上が減る米国企業が1200社存在することになる。米国企業以外もファーウェイにカメラモジュールを供給するソニーや、Armの親会社ソフトバンクなど日本企業もファーウェイのスマートフォンの成長が鈍化すると影響が出るはずだ。

 だが、この損得勘定は短期的だ。それよりももっと大きな懸念が、業界の勢力図だ。

 ファーウェイが自社でできる能力は驚くほど広がっている。たとえばチップではHiSilicon事業部を持ち、米国が優位としている半導体に忍び寄る(それでもArmからのライセンス問題は残っているが。なお、台湾TSMCは供給停止を公表していない)。

 同じ考え方はソフトウェアにも当てはめることができる。まだ形になっていないが、ファーウェイが独自OSを開発しているというウワサは以前からあり、今回の問題を受けてグーグルは懸念を表明。ファーウェイのOS”HongMeng”の憶測が急浮上している。

 グーグル側の懸念は同社が管理できないというセキュリティー上の不安だが、ファーウェイ版のAndroidベースのOSはグーグルのアプリを搭載しない点も問題だ。Androidは全体では8~9割のシェアを持つが、現在のモバイルの業界勢力図が完全に塗り替えることができるのがファーウェイだ。実際、アプリ開発者に対し、ファーウェイのアプリストアに提出するよう呼びかけているようだ。

 そして、“奮闘”精神を大事にすることからわかるように、ファーウェイという会社はそのような逆境を逆手に取って成長することを美徳としている。グーグルの懸念も無理はない。

ファーウェイ問題によって生まれる
”インターネットの鉄のカーテン”

 もう一つ、今回の制裁により顕著になったのが技術分断を裏付ける動きだろう。中国政府とロシア政府は5Gで提携した。ファーウェイはロシアの通信事業者、MTS向け5Gネットワークの構築を進めることになっている。同時期に中国政府が5Gの商用ライセンスを認可したのも印象的で、CNNは「インターネットの鉄のカーテン」と呼んだが、的確な表現だと感じる(https://edition.cnn.com/2019/06/07/business/huawei-russia-china-splinternet-intl/index.html)。

 さて、ファーウェイのスマートフォンのシェアに与える影響はいかほどか? このような動きを見越してかパーツの在庫はあったようだが、2019年後半のスマートフォン出荷台数がそれまでの予想より20~30%下回ると予想しているとのこと(https://asia.nikkei.com/Spotlight/Huawei-crackdown/Huawei-cuts-orders-to-key-suppliers-after-US-blacklisting)。

 ファーウェイバッシングに荒れた第1四半期だが、IDCは同社はモバイル業界において「明確なナンバー2」であり(https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS45042319)、シェア上位では唯一、前年同期比で出荷台数を増やしたと報告している。

 出荷台数は前年同期比で50.3%増加で、これは上位5メーカーのうち最多。シェアは19%となり、Samsungとの差をさらに縮めた。現在Samsungは23.1%のシェアで、出荷台数は8.1%マイナス。ファーウェイにしてみればいよいよ背中が見えてきたところで、2020年末にも追いつく戦略だった。

 ファーウェイ問題、そして米中貿易戦争はどう決着するのだろうか?


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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