サムスンの業績に暗雲……スマホ不況と政治の影響をどう克服するのか

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2019年07月13日 12時00分

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 世界的なスマートフォン不況、それに追い打ちをかけて米中の貿易戦争の影響が出始めているのだろうか? サムスンが7月初めに発表した2019年第2四半期の業績の暫定値は苦しい内情をうかがわせるものとなった。スマートフォン側では次のトレンドを切り開く折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」の予定も気になるところだ。

営業利益が56%減 最大の要因は半導体の供給過剰と値下がり

 サムスンが7月5日に発表した第2四半期(2019年4~6月期)のガイダンスによると、合計の売上高は56兆ウォン(約5兆1500億円)、営業利益は6兆5000億ウォン(約6000億円)とのこと。前年同期は売上高が58兆4800億ウォン、営業利益が14兆8700億ウォンだったので、それぞれ約4%、約56%のマイナスとなる。

 サムスンは半導体とディスプレーパネルを含むデバイスソリューション部門、IT&モバイルコミュニケーション部門、コンシューマーエレクトロニクス部門を持つが、ガイダンスでは内訳は明らかにしていない。

 だが、苦しい業績の大きな要因が半導体だとする見方が多い。ファーウェイをはじめとした中国企業への半導体輸出が影響を受けており、供給過多の状況を招いている。これが価格の低下に繋がっており、inSpectrum Techによると32GBのDRAMサーバーモジュールの価格は、前四半期と比較して19.3%も下がっているとのこと。DRAMの価格低下はさらに今四半期、最大で15%の下げも予想されているとのことだ(Bloombergが報道)。今後は半導体材料の輸出規制強化も影響が加わるかも知れない。

 なお、Bloombergが「ある顧客」による1回限りの支払いとして最大8億ドル相当の売り上げがあるという予想を出している(https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-07-04/samsung-beats-estimates-as-its-chips-prove-resilient-to-downturn)。「ある顧客」がどこかは明記していないものの、ここで考えられるのがライバルのアップルだ。サムスンはアップルに有機ELパネルを供給しているが、iPhoneの売り上げが振るわない結果、発注量が約束の数に到達せず、違約金が発生しているという憶測が生まれている。

スマホのシェアは3四半期ぶりに20%台に復活
サムスンのスマートフォンの動向はどうなのか

 そのサムスンだが、実は第1四半期(1~3月期)の業績は悪くなかった。同期にスマートフォンの売り上げが前年を上回るという好業績を発表しているが、その最大の要因は「Galaxy S10」だ。10万円近くする高収益の価格帯に入る機種がよく売れたことが数字につながったようだ。実際にシェアも上向き傾向で、Counterportによるデータでは(https://www.counterpointresearch.com/global-smartphone-share/)、2018年Q3からQ4と10%台にまで下がったシェアが、久々に回復している。

 2019年Q1決算時にサムスンは次の四半期について慎重な見方を示しながらも、今年後半には「Galaxy A」や「Galaxy Note」などのシリーズの新機種が売り上げに貢献するとの見方を示している。

 なお、スマートフォンにおいては、トランプ大統領が進めるファーウェイ叩きの恩恵を受けるようにも見えるが、持ちつ持たれつのスマートフォンの複雑なサプライチェーンにより、ライバルのアップルもファーウェイもデバイスの供給では重要な顧客なのだ。そのファーウェイのスマートフォンのシェアだが、先のCounterpointのデータでは2018年Q1から11%、15%、14%、15%と徐々にシェアを増やしており、2019年Q1は17%、サムスンとの差を4ポイントにまで縮めている。

 そのファーウェイが米中貿易戦争を”教訓“に、デバイスやOSの強化を進めることは、エコシステムのバランスをさらに偏らせることになるかもしれない。

見えなくなった「Galaxy Fold」の将来

 気になるのが2月に発表した折りたたみ型スマートフォン「Galaxy Fold」だ。当初は4月末に一部の国で発売を予定していたが、端末がレビュアーの手に渡るや、ヒンジ部などを中心に破損や不具合が報告されたことから発売を延期した。

 同社にしてみれば3年前の悪夢を避けたかったのだろう――爆発の危険から発売停止になった「Galaxy Note 7」だ。その点では、勇気のある決断とも言えるがトレンドとなりそうな折りたたみのローンチをしくじったというダメージは避けられない。

 Samsungの折りたたみ型端末は2018年秋に開発が明らかになっていたが、シャオミもティーザーを流していた。そしてファーウェイも開発中というウワサが流れており、ローンチを急いだ(焦った)という可能性は否めない。サムスンのデバイス部門トップは一部メディアに対して、準備が完全ではなかった旨を認めているとThe Independentは報じている(https://www.independent.co.uk/life-style/gadgets-and-tech/features/samsung-galaxy-fold-foldable-phone-release-date-when-explained-a8980056.html)。

 テストをはじめとしたプロセスを進めていることは間違いないが、いまだに発売の予定は明かされていない。なお、ファーウェイも「HUAWEI Mate X」を発表後に発売を延期している。

 なお、Q1発表時では、2019年後半は「最新のGalaxy Note、それに5Gと折りたたみ式スマートフォンなどの革新的な製品によりリードを強化する」と記している。サムスンは8月初旬に、米ニューヨークで発表会を予定しており、タブレットとGalaxy Noteの最新機種(Galaxy Note10)が登場すると予想されている。

 サムスンは携帯電話からスマートフォンの転換期の波にうまく乗り、Nokiaをしのぎ最大手に。以来、約7年王座に君臨している。ソフトウェアとサービス側の強化は引き続き課題だが、トップの座を守ってきたことは間違いない。スマートフォン低迷期と政治的な影響をどう乗り越えるのか、気になるところだ。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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